イバラノツルヒコの華麗なる生活

ボンソワール、今夜も僕と素敵な話をしよう

正子さん

2005-07-12 21:15:45 | Weblog


今日は都心の古書店街まで出ることにした。レポート作成にもう少し本を買い足したほうがよさそうだったから。僕は古本屋を偏愛しているので、いくとまる1日がつぶれてしまう。

店も閉まり始めたので、そろそろ帰ろうと駅にもどりかけると、なんとそこに秀虎らしき人影をみつけた。しかもOL然とした女性と一緒に。思わず物陰から、ってなにも隠れなくてもいいんだけど、でも物陰からのぞくと、それは僕も会ったことのある正子さんだってことがわかった。

正子さんは秀虎のお姉さんだ。
それならと声をかけようとした僕に、正子さんのほうが先に気づいた。わあとかきゃあとかいいながら走りよってきて、「久しぶりね、元気?相変わらず弟が迷惑かけているんでしょう」と手を握らんばかりの勢いで話しかけてくる。思わずつられて「ええ本当に」と正直に言いそうになったけど、後ろから秀虎がものすごい目付きでプレッシャーをかけてくるし、こういうものは持ちつもたれつってこともあるので、「いやそんなことないですよ」と大人しくこたえておいた。

この人に会ったのは1年生のときの学園祭で、僕や阪田君や、当時秀虎とよくつるんでいた連中に、「不肖の弟をよろしく」といいながら食事をおごってくれたのだった。後になって、美人のお姉さんに愛されていいなあ、とここぞとばかりに秀虎をからかったときに、やつがなんともいえない顔で「俺より暴力的だぞあの女」と呟いていたんだけど。

さて、もう帰るなら車で送ってあげる、といわれて、ずいぶん大回りになるからいいですと固辞したんだけれど、結局乗せてもらうことになってしまった。正子さんのであるらしいミニバンに、秀虎の運転で。ミニバンの後ろには大きな箱がいくつも積まれていて、どうも家具とかそんな感じだ。二人の会話によると、会社帰りに注文していた家具を引き取って、部屋で組立作業という一連の仕事をするのに秀虎が運転手兼作業員として呼び出されたようだった。文句を言う秀虎に、タダでとは言ってないでしょ、と正子さんが言い返したりして、結局仲のいい兄弟なんだなと思っていた僕は、次の瞬間に見てしまった。
「大体25にもなってこういうのを弟にさせんなよな。その性格だから、お」という秀虎の言葉が終わらないうちに、それは見事な早業で、運転中の彼の向こう脛をヒールでしたたかに蹴りつけた正子さんを。

うわ痛っ、と見ている僕がいいそうになったけど、それきり二人の会話はとまってしまって、一瞬の静寂の後、正子さんの
「おなかすかない?ごはん食べてく?」という明るい声が、何事もなかったように車内に響いた。

なんだか、秀虎ってこうやって育ってきたんだなと思ったら、多少の迷惑には目をつぶってやってもいいやと思った僕だった。

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2 コメント

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おはようございます (メモル)
2005-07-13 05:46:29
私は密かに秀虎君のファンです。



美人で強いお姉さんがいるとは・・・!



正子さん、ステキです



こんな設定は、現実ではありえないと思ってました。



しかし、よく考えたら運転中にそれは危ないのでは?
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危ないです (ツルヒコ)
2005-07-13 09:37:38
>メモルさん



おはようございます。

さすがに早起きですね。



>運転中にそれは危ないのでは?

いや本当に危ないですよ。

一応信号待ちではありましたが

危ないことに変わりはないです。

…いろんな意味で。

でもなんだか日常茶飯事っぽくて

それもどうかと思います。
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