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中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

木曽路の渓流

2010-09-04 12:30:19 | 渓流&管理釣り場での釣り
■奈良井川■

 中山道に沿って北上し続けて木曽路の最奥部に向かうと、右手にそびえる中央アルプスの北端あたりに分水嶺がある。
 とは言っても、この辺りは複雑なので、平たく言えば国道19号が峠山を貫く新鳥居トンネルを越えた先にある奈良井川(ならいがわ)水系は犀川、信濃川等を経て日本海側に注いでおり、トンネル手前の木曽川は伊勢湾=太平洋側に注いでいる。
 従って同じ木曽路の北端部であっても、奈良井川はヤマメの生息域であり、木曽川はアマゴの生息域ということだ。昔のことはよく知らないが、漁協もその辺はわきまえているらしく、奈良井川にはヤマメを木曽川にはアマゴを放流し分けているそうだ。
 今回最初に訪れたのは、奈良井川だ。昨年少しだけ立ち寄って様子を伺った際に「一度本格的に攻めてみよう。」と思っていたのが実現した次第だ。


■贄川付近■

 まず最初に入ったのは贄川(にえかわ)という地区だ。
 実は、全然予備知識がなかったので、「何処に入ろうか?」と散々迷った末に、小さな沢が流れ込むところをピックアップし、カーナビを駆使して入経路を見付けた結果だ。ボクの皮算用では「沢沿いを降りれば何とか本流に出られるだろう。」ということと、「最低でも沢との合流点がポイントになる。」ということの2点があった。


■綺麗な川だが…■

 沢自体は釣りになりそうにもないので、奈良井川との合流部から初めて竿を出すことにした。
 開始直後、辺りは木々の陰の中で、まだ薄暗くて目印が確認し辛くて苦労する。3投目を流し終えてピックアップしようとしたところ、何と仕掛に魚が着いていた。しかし、ちゃんとアワセが出来ておらず、ハリハズレでバラしてしまう。
 続いて魚を狙うが、全くアタリがないので周囲の石をひっくり返しつつ、川虫を採取する。
 ここ奈良井川の水質はクリアで底石も綺麗だが、そこが問題でもあるようだ。何しろひっくり返そうが、足でゴソゴソやろうが、ほとんど川虫が獲れないのだ。底石の綺麗さはヒラタなどが食う底生藻類が少ないと言うことに繋がり、それを食するヤマメにも影響があるかも知れないと、不安要素にもなった。
 ようやく獲れたのはカワムカデとオニチョロが少しという結果で、クロカワムシは巣の跡すら発見できなかった。
 ボク的に言わせてもらうと、カワムカデとオニチョロでの釣果実績はほぼゼロ。同時にクロカワムシやキンパクを使って比較すると、アタリの数自体がかなり少ないことも経験済みなので、持参したミミズとブドウ虫があるものの、先行きが思いやられた。

                   
                            ●ようやく捕まえたオニチョロ●

 
■ポイント選定■

 入った区間は平瀬がメインで、時折変化があるものの、やや単調気味な区間であった。その事が魚の着き場を限定させることになって、絞り込みやすくはなるのだが、誰もが狙うであろうから、その分プレッシャーが高そうだったので、ゼロ竿に0.15号の通し仕掛を使って、慎重に攻めていった。
 そしてやがて誰でも判りそうなポイントに差し掛かった。

                   
                            ●典型的なポイントなのだが…●

 しかしながら、夏場特有の小型ばかりに悩まされる。

                   
                            ●1匹目は10cm足らず…●

 持参分と採取分のエサをローテーションさせても結果は同じなので、見切りを付けて更に上流へと向かう。


■キープサイズ1号■

 どうも、流れの緩いところは小型ばかりの様子なので、そういったところはサッサと流して、より強い流れの中にある変化を求めて移動を繰り返していった。そして「ここは…。」というポイントに差し掛かった。

                   
                   ●川がクランクし、流れが強く当たる部分に大石が見える●

 まず周囲を探るが、アタリは少なく、釣れても小型ばかりだ。そこで本命の石裏のヨレと本流に巻き込まれる部分を攻めてみた。エサはオニチョロを装着して投入すると、すぐにアタって、ようやく本日キープ第1号をゲットできた。

                   
                              ●約20cmのヤマメ●

■橋桁ポイント■

 同じポイントで続くアタリはなく、更に上流へと向かう。そして橋桁部分に流れがぶつかり、渦巻くポイントに到達した。

                   
                      ●ポントは橋桁左端の本流に巻き込まれる渦部●

 エサをローテーションさせつつ、渦の中をシツコく攻めている内に今度はミミズのエサに反応したアタリを捉えて、先程よりも一回り大きなサイズのヤマメをゲットした。

                   
                               ●23cmのヤマメ●

 しかし、続くアタリはなく、移動を余儀なくされてしまった。


■下流部へ■

 ここまでの時点でキープ数はたったの2匹だったが、それよりも何処を探しても川虫が少ないことに不安を感じていた。やはりエサの少ない区間は、魚も少ないようだ。
 ここで浮かんだ考えは
 「エサが少ないのは水温のせいかも?」というものであった。従って、下流に行けば幾分水温も高く、状況が変わるだろうとの考えで、思い切ってかなり離れた下流部へと向かうことにした。
 しかし、ここでも結果は同じで、アタリの無さに加え、拭うことの出来ないエサ不足感とが重なって、再びの大移動を決意した。


■トンネルを抜けて木曽川へ■

 逆に奈良井川の上流部も確認したが、めぼしいところには人が入っており、車を降りて尋ねても、釣っている様子は無い。そこで、一大決心をして鳥居トンネルを抜けた先にある木曽川上流部へと向かうことにした。便利なことに、この一帯では付近の漁協の入漁証がコンビニで購入できるので、こういう際には有り難い。

                   
                         ●奈良井川、木曽川両漁協の1日券●

■木曽川上流部■

 木曽川上流部に到着すると、鮎釣師が撤収するところであった。声を掛けてからその上流部に入らせてもらい、釣り上がっていった。
 奈良井川と違って石にはヒラタなどのエサになる藻も生えていた。試しに底石をひっくり返して手に取ってみると、小さくてハリにはさせないものの、クロカワムシも棲息しており、期待は充分だ。
 しかし、残された時間は2時間ほどしかなく、その意味では安心は出来ない。
 そして程なく、奈良井川では見掛けなかったタイプの、力強い流れが狭められて作り出す典型的な渓流魚ポイントへと差し掛かった。

                   
                        ●如何にも渓流魚が着きそうなポイント●


■今年初アマゴ■

 竿はゼロのままで、0.15号の糸を使っていたのだが、22、3cmあったであろう1匹目は、抜く際に切れてしまい、取り逃がす。そして続いた今年初対面のアマゴはド派手なチビアマゴであった。

                   
                         ●この派手さは養殖物の稚魚だろう●

■木曽のタナビラ■

 同じポイントを攻めている内に、それまでのアタリとは違う鋭さで目印が引き込まれていった。
 ハリスは0.15号のままなので、慎重にやり取りを繰り返す。竿のしなりを最大限に活用しつつ、相手との距離を詰めて行き、時間を掛けて無事に取り込んだのは、本日最大魚であるアマゴだった。

                   
                               ●25cmのアマゴ●

 木曽地方では、アマゴのことをタナビラと言う。これは諸説あるようだが、ボクは「太い刀=段平(ダンビラ)から来ているのでは?」と思っている。
 鋼色をベースに研いだ際に出来る文様が散らばっている様子は正しく日本刀のそれであり、朱点と呼ばれる赤い点は、差詰め付着した血痕であろうか?。今回ゲットしたこのアマゴの美しさは「タナビラ」にふさわしい姿であった。

 その後は、更に釣り上がり、20cm級のアマゴを追加したが、そこで時間切れである日没を迎えてこの日の釣りが終わった。


■川質の違い■

 この日は川質の違いに気付かされた1日であった。違いは、川虫などエサの豊富な木曽川に比べて、それの少ない奈良井川は小型の稚魚を含めて明らかに「魚影感が薄い」ということろにある。
 水中での渓流魚は食物連鎖では上位にあるが、底辺にある川虫類が少なければ頂点の割合も変わってくるのは当然の話である。
 よくよく考えてみると、同じ川であっても川虫の少ない区間の魚影は極端に少ない。これが川全体となると…。答えは寂しいものとなるだろう。
 奈良井川は決して人気のない河川ではないことだけは確かなので、一時的な現象か、ただ単に入った場所が悪かっただけの可能性もある。実際に奈良井川の、事前のルアーでの釣り情報では釣れているようではあった。しかし、これはエサが少なくてフィッシュ・イーターになるのが早いせいなのかも知れない。いずれにせよ素人のボクには判断できず、
 「もしかして、ボクの腕がヘボなだけ?」と言えなくもないが、砂の堆積量も少なく、川全体が綺麗で、ローケーションも良かっただけに残念な結果であった。
 反面、木曽川上流部は、エサ、魚影とも濃くてその面では申し分は無さそうなのだが、いかんせん周囲に民家や人工物が多くてあまりにも開け過ぎで、ロケーション的にヤル気を起こさせるような雰囲気が少ない点が引っかかった。
「アチラを立てればコチラが立たず。」性質の全く違う河川での釣りに、やや戸惑った1日であった。
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久婦須川 ’10 その2 ~後編

2010-07-24 12:30:35 | 渓流&管理釣り場での釣り
■状況の変化■

 ここから先は段々瀬の区間に入る。
 この日は前回よりも10cmほど減水していたのだが、何故か各区間で流速が早い気がしていた。素人考えであるかも知れないが、水が減れば勢いも落ちそうに思うのだが、区間によっては更に早く感じることもあって一概にそうとは言えないようだ。更には前回から3週の間に大水が出たことでもあったのか、川筋も微妙に変わり、前回のパターンが全くハマらなくて苦労をしていた。(まぁ、ソコが釣りの楽しみでもあるんだけど…。)
 食いの差が顕著に表れたのが、前回では良型を9匹もゲットした段々瀬だ。今回は攻めても攻めてもピクリとした反応すら無いのだ。
「魚は前日に抜かれたのか、それとも大きく移動して『もぬけの殻』になっているのだろうか?…。」と頭に???が浮かんでくる。

■複雑に流れるポイント■

 期待していた段々瀬では何も得られないまま、開けた区間にやってきた。ここでも前回調子の良かったゆったりと流れる場所の底石周りにある変化を狙ってみるが、アタリは皆無だった。次なる区間は早い流れが複雑に入り交じる、やや水深のあるポイントだ。

                 
                      ●複数の流れがぶつかり合うところを狙う●

 こういったポイントは、流れ、構造共に複雑だ。従って何人かの釣り人が狙っても、それぞれの攻め方に個性があるので、「攻め残す部分」がどこかに必ずあるはずなのだ。ただし、答えを出すまでには時間が掛かりそうだ。そこで、じっくりと腰を据えて一つ一つの変化を丹念に探ってゆくことにした。
 一回目の攻めは、流れの最後端にある、駆け上がり部分。ここは比較的攻めやすいので、誰もが狙って答えを出しやすい所なので、やはり居着く魚は残っていなかった。
 次に白泡の立つ流れの筋の手前と奥の両サイドを狙う。これも攻めやすいポイントなので、アタリはゼロ。続いて見え隠れする石の周り、流れと流れがぶつかり合うところを攻めてみたが答えが出なかった。
 残るは流芯部の底だ。流れの筋が始まる部分は、掘れて擂り鉢状になっていることが多く、その部分はやや流れが緩やかになっていて、大型魚が付いていることがあるるそうだ。問題はそこにどうやって入れ込むかだ。
 まず始めはオモリを重くして落とし込んでみる。しかし、軽すぎると弾き飛ばされ、逆にオモリが大きくなりすぎると、不自然な動きになって全く反応がない。そこで、オモリを2Bにして、流れの始まる部分の奥側に投入して仕掛を馴染ませてタイミングを計り、強制的にゆっくりと引き入れてやると、ウマく仕掛が入ってゆくようになった。
 その方法で探り始めた3箇所目で、目印の動きがピタッと止まったかと思った瞬間にズンッと沈み込んだ。
 合わせた瞬間に相手は下流に向かって矢のような走りを開始した。ボクもそれについて太もも辺りまで水に浸かりつつも走る走る!。
 それこそ「どこにそんなパワーがあるのか?」と思われるほどの見事な走りでボクがついて行くこと数回。ようやく衰え始めた相手を竿で誘導し、空気を吸わせて更に弱らせる。水面に現した姿はギリギリ尺はありそうなヤマメで、ボクの興奮は抑えられない。そしてネット・イン!。

                 
                       ●31cm、完全尺越えヤマメ第1号!●

 前回の「泣き尺」とは違う、完全尺越えに気を良くするが、それと共に「良いのが出そうな」いわゆる大場所では、粘ることも大切だと痛感した瞬間でもあった。

■最後の大場所■

やがて、最終到達点である大堰堤に差し掛かる。そして、ここでこれまでの6m竿から8m竿にチェンジすることで大場所への備えとした。

                 
                         ●これが脱渓点の大堰堤だ●

 手前側にもポイントはあるのだが、どこも不発のままジリジリと釣り上がり、最終エリアへと突入する。
 最終エリアには堰堤から落ち込む流れがまとまって、数本の筋となっている。

                 
                             ●一番強い流筋●

 まずはセオリー通りに、エリアの最下流に位置する、カケ上がり部分の手前側から攻めてゆき、徐々に本命部へと迫ったが、やはり誰もが攻めるポイントであるせいか、全く反応がない。
 そこで先程尺ヤマメを釣った際の戦法=重めの仕掛を流れの際で馴染ませた後にゆっくりと強制的に流芯へ引っ張り込む方法で一番強い流筋の底を探ってみた。
 海でも同じだが、水の流れは表層ほど速くなる。従ってウマく仕掛が底層の流れに乗れば表層の流れよりもゆっくりと移動してゆく。
「イイ感じで流れて行くな。」と思った瞬間に目印がピタッと止まり、同時に竿先を引ったくっていった。
 「ギューン」と長竿を大きく絞り込む様子から、すぐに「型が良い」と判断し、応戦の体勢をとる。
 当初、相手はカケ上がりの下流にある瀬の方向へと疾走したが、ボクの足場は走ってついて行くには無理がある。そこで竿を上流側に倒して水面と平行させ、思い切り絞り込んでやった。すると、行き場を失った相手は横方向へと向きを変えた途端に水面からジャンプをしてハリを外そうとする。
 危ない場面だったが、それを何とか凌ぐと、徐々に相手のパワーが落ち始めた。それを感じた瞬間、慌てず横からのプレッシャーを加えることで8の字状に泳がせて更に弱らせてゆく。
 何度かそれを繰り返し、完全に相手がグロッキーしたのを見計らって、玉網へと誘導し、無事に取り込んだ。
 「ヤッター!」サイズは尺を余裕で越えている。


                        ●尺越え2本目は33cm!●


 苦節?2年でようやく尺を越えたと思ったら連続2本ゲットで、更にはサイズアップまで成し遂げたのだ。当然、出来過ぎの結果に大満足で、この区間での釣りを終了したのであった。


■新たなポイントへ■

 気をよくしたついでに「どこまで魚が居るのか?」を調査してみようと、この川の渓流と呼べる区間では、ほとんど最下流部へと向かって竿を出してみることにした。
 釣り上がって程なくすると、流れ込みのある淵を発見する。

                 
                   ●諸条件が揃い、見るからに良さそうなポイントだ。●

 このポイントは久婦須川ではメジャーな区間ではないせいか、魚もストック量も結構あり、3匹のヤマメをゲットできた。
 更に釣り上がることも考えたが、調査としては充分で、次回の楽しみとして取っておくこととし、この日の釣りが終わった。

                 
                       ●最終局面でも好釣果に恵まれた。●



■適竿適所■

 シマノの渓流カタログには「適竿適所」というのが記されているが、正にその通りで、タックルは場所に応じて使い分ける方が、その場その場で最大限のパフォーマンスを発揮してくれる。そのことが確認できた今回の釣行だった。
 通常、渓流釣りの釣行では「折れた際の予備竿」として、別の竿を持ち込むことはあっても、タイプの違う竿を持ち込むことは少ないようだ。しかし、そういったタイプの違う竿を持ち込めば、スレた魚が狙えたり、届かないポイントが減ったりするのも事実なので、もし、機会があれば試してみることをお薦めする。
 たかだか荷物が増えたとしても1本あたり100~200g程度のことだ。そうすれば実際に、一日の釣りを終えた際に手にする魚の数は変わっていることだろう。
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久婦須川 ’10 その2 ~前編

2010-07-17 12:30:46 | 渓流&管理釣り場での釣り
■梅雨の末期になる前に■

 梅雨末期には雨脚が強まる日々が増える傾向になるので、増水しすぎて釣りが出来ない日が当然多くなる。梅雨が明けたら明けたで富山県の山間部名物ではメジロアブ(オロロ)の大量発生が待っているから厄介だ。
「何としてもそれまでにもう一度攻めておきたい。」という熱い思いと「久婦須川には年券しかないので、元を取らねば。」というセコイ思いに駆られて前回釣行と同じ久婦須川へと向かった。

 渓流釣りでは、一旦増水して落ち着き始めた頃が、魚の食いが良くてベスト・タイミングであるが、サンデー・アングラーのボクの場合は、そんな日を選んでの釣行は到底出来ず、あるがままを受け入れなくてはならない。
 前回の釣行時にはそのベスト・タイミングにぴったりとハマり、この釣りを始めて以来の爆釣を経験したが、今回は釣行前の数日間が梅雨の中休み状態になり、それを受けて富山県でも川の水量は日に日に減り続けて、魚は食い渋る傾向が予想されていた。
 更には前日の土曜日は天気が良く、来訪者も多かったはず。その人達が一通り釣った翌日を釣るわけだから、当然魚はスレているだろう。だから、今回はその対策もバッチリと練っての釣行だ。さて、結果はどう出るのだろうか?。

■ゼロ釣法■

 渓流釣りのスタイルに「ゼロ釣法」というのがある。これは、使用する糸の細さを含め、仕掛やタックル(道具)全体をライトかつ繊細=ゼロに近付けてスレた魚を釣り上げる方法だ。何でもマスターすれば人が通常の仕掛で釣った後でも釣果を絞り出せるというのだ。今回はそのタックルを持ち込んでの挑戦と相成った。
 ゼロ釣法用竿は1本持っているものの、それは川幅がそんなに広くない久婦須川に導入するには長すぎて使い辛い。そこで今回は渓流部で使いやすい全長が5.5-6.0mの竿を新たに導入した次第である。

                
                     ●渓流ウルトラゲーム55-60(シマノ)●

 と言っても、久婦須川のヤマメはパワーがあるので、流れのキツイ瀬や、こちらが魚の動きについて走れないポイントではゼロ竿は心許ない。そこで、通常の仕掛対応の竿と堰堤用の8m竿の2本を「忍者スタイル」で背中に背負い、「三刀流」の備えで万全の体制をとった。


■前回と同じ場所へ■

 久分須川流域に到着して入渓場所の選択に迷ったが、ゼロ釣法の習熟のためには勝手知ったる場所でないと通常仕掛との比較も出来ないし、急流箇所の多い区間に当たってしまうと、使えずに終わる可能性もあるので、前回と全く同じ入渓点から降りることにした。

 河原に降りてから様子をうかがってみるが、やや水量が少な目で、水面のエサをライズして拾うヤマメの姿は見られない。前回の釣行から3週間も経っており、その間も攻められ続けているであろうから、予想通りだが、タフ・コンディションの気配が漂っていた。
 そこで、最初の区間からゼロ釣法の仕掛を使用することとした。ただし、扱いになれていないのとパワーのある久婦須川のヤマメが相手なので、ハリス(水中糸)が0.15号という、ゼロ釣法ではやや太目の物をセットした。

■最初のヤマメ■

 しばらく釣り上がってみたが、一向にアタリが出ない。ボクの場合、最初のポイントでは持ち込んだ市販エサ(ミミズやブドウ虫)を使用するが、一通り流してみたが全く反応がないので早速川虫取りを始めてクロカワムシを採取する。そして、それをハリに刺した途端に反応が出始めた。
 最初の一匹が出たのは河原のアシ際がエグれてポケットのようになっている部分からだった。

                
                     ●アシ際から出た22cmほどのヤマメ●


■細ハリスの威力■

 次は前回に大きめサイズのイワナをバラした、幅の広い瀬からの落ち込みを攻めた。

                
                  ●水量の違いからか、前回とは様子が違っていた。●

 ここは速い流れに乗って遁走されると厄介なので、ハリスを0.2号にアップする。
 その仕掛を石の裏にある淀みに打ち込んだ際に目印が「スッ」と沈み込み、それに応じて反射的に合わせる。掛けた瞬間に良型特有の「ズドンッ!」という衝撃が伴ったので少々ビビったが、魚の動きに合わせて、こちらが川を下ることで何とかゲットに成功。魚はイワナでサイズはギリギリ尺を越えているようだ。

                
                            ●31cmのイワナ●

 しかし、その後は見た目に良さそうなところを散々攻めてみるが、ヤマメやイワナの反応がない。そこで思い切ってハリスを元の0.15号に落としてみる。
 コレが功を奏したのか、瀬のアワが消えかかる、やや水深のある部分から待望のヤマメのアタリが出た。そう大きくはないサイズだが、先程来、散々攻めていたポイントだけに、やはり「細ハリス優位」の感がフツフツと沸いてくる。以後は、0.15号のみを使用し、様子をみてゆくことにした。

                
                      ●細ハリスの答えは20cmのヤマメ●

 そして、細仕掛の扱いにも慣れてきた頃にはゲットするヤマメの量も少しずつだが、増えていった。

                
                 ●釣果は伸びていったが、ある種のパターンがあった。●

■竿抜け狙い■

 ここまでの傾向から推測すると、やはり前日に散々叩かれているのか、当たり前のポイントからのアタリは少なく、いわゆる「竿抜けポイント」と呼ばれるところでの反応が多い。しかも、クロカワムシ以外でのアタリはゼロだ。更には、水深のない瀬の部分よりも水深のあるポイントの方が反応が良い。
 そこで、次の区間からは「0.15号のハリスで、クロカワムシを刺し、水深のある竿抜けのポイントを中心に狙う」という戦略を立てて釣り上がることにした。

                
                 ●この日のヤマメは、何故かクロカワムシしか食わない●

■ヤマメの隠れ家■

 ここから先は前回でも登場した、晴天時には日陰になるポイントが続く区間だ。しかし、当日は小雨が時折降ってくる状況だったので、日陰の要素よりも、「覆い被さる木の下に隠れてなかなか出てこない、スレたヤマメがストックされている。」といった要素の方が優先されそうだ。
                
               ●木や草の陰に流れ込むようにサイドスローで仕掛をブチ込む●

 予想通り、この区間はヤマメの隠れ家だったようで、ポツポツながらアタリは結構な数を拾えた。しかし、警戒心が強いせいか食い込みが浅く、ハリハズレも多い。


                
                    ●ゼロ釣法での最大は25cm止まりだった●

 結局この区間では7回アタって、獲れたのは4匹だった。

 今回初めて本格的に取り組んだゼロ釣法だったが、魚の出具合の違いから、その威力を充分に感じることが出来た。そして、そこそこサイズの魚が掛かってからの「ハラハラ感」は通常仕掛の比ではなく、こういった繊細な駆け引きは本来好きな方なので、ボク的にはかなり楽しめる釣りではあった。
 ただし、ここから先の区間は、段々瀬が続き、流れも速くて複雑になってくる。それに前回、尺オーバーのヤマメをバラした記憶も鮮明に残っている。従ってゼロ仕掛では通用しそうになさそうだ。ここでゼロ仕掛を諦めて竿を仕舞い込み、通常仕掛用の竿(翠隼60/シマノ)に交換することとした。結んだハリスは0.3号だ。大型のヤマメにはまだ出会ってはいないが、ここからが勝負なのだ。そして、ボクのチャレンジは、まだまだ続くのである。

                             ~後編に続く~
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久婦須川 ’10 その1 ~後編

2010-07-03 12:30:39 | 渓流&管理釣り場での釣り
■雲の合間から■

 滝の落ち込むポイントを後にし、更に上流へと向かう。やがて雲の合間から太陽が見え始めると活性が明らかに落ち始め、水深の浅いポイントでは反応が激減する。コレは、晴れると見通しがきくために、ヤマメたちが上空からの外敵に狙われ易くなることを知っているからだと言われている。そこで、ここからは樹木が覆い被さる日陰を中心に狙っていく。

                  
                  ●木に掛からないよう、キャストに正確さが要求されるのだ●

 「キレイに仕掛が日陰に入った」と思った途端にアタリが出るが、かなり警戒しているのか、食い込みが浅くてハリが外れてしまう。構わずじっくりと攻め続けてゆくが、小アタリは出るものの、ハリに掛からず苦労する。
 数投目、何とか掛けアワせるのに成功する。ソコに居るのが判っていながら、なかなか食い込まない相手を駆け引きの末にゲットするような「神経戦」も、また楽しい。

                  
                            ●またまた25cm級●

■段々瀬■

 日陰ポイントでポツポツと拾った後は、タイミング良く太陽が雲間に隠れ始めた。そして川は段々瀬の区間へと変化する。段々瀬とは読んで字の如く、フロアとフロアが1ステップずつ、瀬によって区切られているような区間を指す。

                  
            ●中央にある大石を境に手前と段差がつく。この区間ではそれが何段もある。●

 この段々瀬では、勿論最下流から攻めていくのだが、始めの数段の区間こそ数匹ゲットしたのみだったが、何段目かでそれまでは少し雰囲気の漂うポイントに入った。

                   
                      ●この大石の周囲が今回の爆発スポットだ●

 このポイントでも、まずはセオリー通り手前の流れから少しずつ攻めていったが、攻める場所ごとにアタリがあって、ゲット数が増えてゆく。
 何投か繰り返す内、ふと本で読んだ「大型はウケの部分にいる」という言葉を思い出した。ウケとは石の上流側にある水流が盛り上がる部分だ。その言葉を信じて攻めを開始する。勿論、流れがブチ当たる部分なので、オモリはそれまでよりも重くしなければならない。何度かの調整の後、底の流れを捉えてゆっくりと流れるようになっていた仕掛の動きが、ウケの部分でピタリと止まった。そしてその瞬間、反射的にボクはアワセを入れていた。
 「デカイっ!」と思った瞬間に相手は水中で反転し、ひるがえるような動きをしたが、その姿は正しく30cmを軽くオーバーするヤマメであった。だが、その反転は反撃の狼煙だった。
 相手は石の向こう側に回り込んだ後、段を1段下りた先にある瀬の中へ突っ込んでいった。こちらも反撃のために、下流へ走ろうとするが、生い茂る雑草に足を取られて思うように足が運べない。そして次の瞬間竿と糸が一直線になった。
 「ヤバイっ!」と思った途端、フッとした感触と共に、手に伝わる生命感が消えてしまった。
 この釣りを始めて以来の目標であった30cmオーバーを取り逃がし、呆然とする中、諦めずに仕掛を作り直すボクがそこに居た。
 「まだまだチャンスはあるのだ。」

 結局このポイントでは大型は出なかったが、1ポイントから抜いた20cmオーバーの数としては最高記録である、9匹をゲットし、上流へと向かった。

                   
                         ●サイズは粒ぞろいの20~25cm●

■贅沢な気分■

 この時点でゲットした20cm以上のヤマメの数は30を軽く越え、合間にリリースはしていたものの、このままだと肩から掛けていたビクから後数匹で溢れてしまうほどの釣果になっていた。そこで、キープサイズは25cm以上に設定のハードルを上げ、3匹収めた時点でこの区間を終了することにした。こんな贅沢は気分はこの釣りを始めて以来初めてのことだ。

■竿の交換■

 段々瀬を抜けると、開けた区間になる。ここまでは全長6m竿で攻めてきたが、ここから先はポイントとの距離をとりたいことと、最後に控える堰堤下を攻め切るために、ここまでずっと背中に背負ってきた8mの本流竿へと交換をする。そして同時に仕掛を全て交換し、エサのクロカワムシも新たに採取して、ラストに向けての新たなスタートを切った。

■平瀬■

 ここからしばらくの間は平瀬の区間になる。「平瀬」とは平で、ゆったりとした流れという意味だが、こういう場所で攻めるポイントは障害物、すなわち水中に見え隠れする底石の周囲ということになる。じっくり攻めながら上流へと向かうが、そこで気になる石を発見する。


                   
                              ●泡立つ部分がその石●

 まず、下流から攻めて1匹。コイツは20cmあるが、キープの範囲外なので即リリースする。続いて投入して丹念に探るが、同じ20cmクラスしか反応がない。そこで、それまでのジンタン2号からオモリを2Bに変えて白泡のすぐ下に仕掛が入るようにする。コレにアタリが出て、25cm級をゲット。コレで残りのキープ可能数は2匹になる。

                   
                                ●あと、2匹●

■堰堤下■

 やがて大場所の堰堤エリアに入る。まずオモリをジンタン3号に交換して、下段にある瀬の、瀬尻の部分を「上流から流れてきたエサがフワッと浮き上がるような」イメージで流してみる。コレが効果あって目印に変化が出る。それを見極めてアワせてみると、ゴツンとした衝撃と共に一気に下流へ向けて走り始めた。こちらも今回は足場も良いのでそれに合わせてついて行き、ロッドを思いっきりタメて応戦する。タメを何度か繰り返していく内にやがて相手が反転する際に姿を確認したが、結構デカイ。
「尺あるかも?」と、こちらはハラハラとドキドキとウキウキが入り交じった気分でやり取りを繰り返す。そして慎重に頭を水面から出し、何とか空気を吸わせ、グロッキーさせてから玉網に誘導し、何とかネットインさせた。
「ヤッター!、初めての尺オーバーかも?。」と、喜び勇んで河原に上がり、計測をしてみる。
「サイズは30cmジャストだ!」「………?」
 尺貫法をメートル法に直すには1尺=30.3cmとある。ということは、尺と呼ぶにはあと3mm足りないのだ。しかもこのヤマメの尾ビレを確認すると以前のイワナと同様、目印のためにハサミでカットされた痕がある。そのせいで5mmほど損をしているのだ。
「何という余計なことを…。」と思いつつ、目標の30cmはクリアしているのだと、自分に言い聞かせ、堰堤下の淵を再び攻め始めるのであった。

   
                    ●3mm足りない、いわゆる「泣き尺」というサイズだ●

 続いて深みを流すために、オモリを重いもの=2Bに変えて、丹念に探っていると、白泡の立つ瀬の脇でまたもやゴツン!とアタってきたが、コレは先程よりも、や小さいサイズであった。

                   
                          ●最後の1匹は、またもや28.5cm●

 その後は予定数をヤマメに知られていたのか、3匹目以降はピタリとアタリが止まり、何も起こらないままでこの区間の釣りが終わった。

■早帰り■

 まだ残りの時間もあるし、他のポイントを攻めてみようかとも思ったが、もう充分過ぎるほどの釣果を得ていたこともあって、後は車で新たな入渓点を探すのみに費やして、この日の釣りを終えることとした。

 この日のトータル釣果は20cm以上だけで40匹以上と、ボクとしては超ハイレベルなものであった。こんなスコアが出た要因は恐らく増水した後の引き始めという、絶好のタイミングだったことが挙げられる。物の本によると、こういったタイミングに渓魚は大きく動き出すので、それまで釣り荒れ気味だった川でも、ある程度リセットされるということだ。だから皆さんも雨を嫌がらず、「こんなタイミングこそチャンス」と捉えて釣行して欲しい。
 しかし、これだけ釣りながら、ボクは満足はしていない。それはこの釣りを始めて以来の目標である、30cmはギリギリクリアしたものの、何となく中途半端な形でそれを迎えることとなり、釈然としていないからである。
 だから、その点をスッキリさせるために、この先のボクの目標は「尺」を優に越える「尺上(しゃくがみ)」を釣ることに変更だ。(わずか数mmの違いだけど…。)シーズンの残りは約3ヶ月。ハテさて、その間に、勝利の女神はボクにドラマを用意してくれているのだろうか?。
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久婦須川 ’10 その1 ~前編

2010-06-26 12:30:44 | 渓流&管理釣り場での釣り
■梅雨時を迎えて■

 梅雨時は長雨によって、どうしても増水傾向になるので、釣行日の近辺に降った雨がどのように影響しているのかを、ある程度理解していなければ現地に到着してから慌てることになる。
 昨年1年しか経験がないのでエラそうなことは言えないが、何度か通った川の中では、支流部からの流れ込みが多い岐阜県北部の高原川の本流部は特に増水しやすく、流域のどこかでまとまった雨が降れば、釣っている最中でも、それこそみるみる内に増えてくるから厄介だ。
 今回は富山県中南部の久婦須川へ向かったのだが、ここは去年の梅雨時に釣行した際、夜明けに増水状況を確認した途端に「ダメだこりゃ!」と引き返した経験がある。
 しかし、同じ梅雨時に、ここをワザワザを選択したのは、気象庁のホームページ内にある「気象観測データhttp://www.jma.go.jp/jma/menu/obsmenu.html」で流域近辺の1週間の降雨量を確認し、国土交通省の「川の防災情報http://www.river.go.jp/」で、近日間の水位変化を確認したうえでのことだった。高原川は釣行前日までの雨の影響で、ピーク時には2m近い増水だったが、久婦須川では昨年の釣行時に釣りが可能だった水位(=69cm)に対して今回は20cmほどしか増水しておらず、それが徐々に下がりつつあるのをボクは事前に知っていたのだ。
 距離が40kmほどしか離れていない両川であってもこれだけの差があるので情報収集は大切だ。

■朝一番■

 今回の入渓点は、昨年始めてここを訪れた時に入った場所からだった。ここはヒザくらいの水深しかなく、一見何でもないように感じるが、ヤマメ達のエサ場になっているのか、朝一番はライズ(=水面が盛り上がるほどのところまで魚が表層のエサを追っている様子)を繰り返すところだ。今年も現場に着くと時折ポコッとかバシャッという音が聞こえ、仕掛けを作るボクを歓迎してくれていた。心配していた川の濁り具合も笹濁り程度だった。

                   
                            ●何の変哲もないポイントだ●

 とりあえず、キヂ(ミミズ)をハリに刺して、ライズしている上流側から流し込んでみる。何度か流す位置を修正していると目印を引き込むアタリが出て、最初の1匹をゲットする。いつも感じることだがここ久婦須川のヤマメは体高が高い「幅広タイプ」が多いのでよく引く。

                   
                           ●当日の初ヤマメは体長約20cm●

■エサのローテーション■

 最初のポイント付近で3匹ゲットした後は反応が無くなったので、「魚は釣り切った」と判断し、その周辺で川虫取りを開始する。この川で採取できるのは主にクロカワムシ、オニチョロ、そしてのカワムカデの3種だが、中でも安定して獲れて釣果が堅いのはクロカワムシだ。ここまでキヂ(ミミズ)、とブドウ虫の市販エサを使っていたが、コレにクロカワムシが入って、以後3種のローテーションで攻めていくことにした。

                   
                     ●左上がブドウ虫、右上がクロカワムシ、下がキヂ●
            (キヂは写真の「ミミズ通し」という器具を使って装着した方が、ハリ掛かりが良い)

■様子を探る■

 次に目に入ったのは、やや水深があって中央に白泡を伴って強く流れる流芯が明確な
ポイントだった。昨年に入った際は何も出なかったので、サッサと軽く流して済ませようかという気もしないではなかったが、今回は、この日全体の傾向を探り、状況判断するために少し粘ってみることにした。
 その日の戦略を決める際に、「移動のピッチを上げつ活性の高い魚を釣る」のと、「じっくり攻めてスレた魚に口を使わす」の、どちらの方が結果的に魚を多くゲットできるのかを判断するのは難しい。ボクの場合は、それを気分で判断して失敗することも多いのだが、この日のように「お試しポイント」を設定し、そこで判断するのも良い方法なのだ。

                   
                               ●白泡の立つ流芯●

 まず最初はミミズを刺し、次いでローテーションをさせつつ、最下流の白泡の消える辺りから攻め始め、その両サイドと流芯部を攻め上ってゆく。当然オモリもB~3Bを付け替えつつ探りを入れてみた。そして10投を越える頃になってようやくアタリを捉えた。
 それまでの魚よりも確実にサイズが大きそうだったので、魚が流芯に入っていかないように注意しつつ慎重に玉網に誘導する。

                   
                               ●25cm級のヤマメ●

 続いて23cmくらいのヤマメを連続ゲットしたが、そこで打ち止めになった。

 いつもの感じで攻めているとゼロに終わっていたハズだから、この2匹は貴重だった。これが「目に付いたポイントは簡単には見切らず、粘ってみることが有効」だと判断できるキッカケになったのだ。そして上述したエサのローテーションと共に以後のパターンとして組み入れることになったのである。こうやって早い段階で試した結果を反映させれば、以降の攻めに迷いが減るのだ。

■大型イワナ■

 次に差し掛かったのは、幅の広い浅瀬から落ち込んだ流れが前面の岩壁へとぶつかるポイントだった。

                   
                          ●攻めるスポットが多いポイントだ●

 ここは、流れの筋同士がぶつかって収束するところと、流れの落ち込み、向かいの岩盤際、流れの中にある石の裏等、ポイント数は多い。先程の教訓から時間を掛けて一つ一つを潰してゆくように攻め始めた。
 まずは岩盤際の最下流部で20cmチョイのヤマメを3連続でゲットする。

                   
                      ●ここでのヤマメのサイズは20~25cm程度●

 続いて複数の流れが収束するところを狙ってもう1匹追加する。そして石裏では不発だったので、最後の仕上げとして、ややオモリを重い(2B)モノに交換して瀬の部分から最初に落ち込む部分を攻めてみる。
 何カ所目かの落ち込みで「ゴンッ」というアタリが出たので反射的にアワせると、魚は下流に向かって一気に走り出した。相手の動きに合わせて慎重にあしらい、引きをイナしていると、竿を伝わる感触から「イワナだろう」と推測できたが、型が大きいうえに瀬から押してくる水圧が加わって玉網の位置までなかなか寄ってこない。それでもこらえている内に、なんとか水面まで引き上げるまでに至った。魚は、やはりイワナで、30cm台の中盤サイズのようだ。この時、今シーズンに入ってイワナの30cmオーバーはかなり釣っているため、心の中で何となく「なんだ、またイワナか…」と、つぶやいてしまった。
 その瞬間事件は起こった。この奢った心を悟られたのか、その瞬間に「バカにするな!」とばかり、イワナは怒って?クルンッと反転し、見事にハリを外して逃げていったのだ。
 呆然とする中、「ヤマメでなくて良かった…」と言い訳しながら立ちつくしているボクが居た。

■粘り勝ち■

 イワナのバラシの後に続く魚は無く、更に上流を目指す。今度は淵に滝が流れ落ちるポイントだ。

                   
                           ●誰もが狙うポイントだろうから…●

 このポイントはいわゆる「大場所」と言うべきところで、誰もの目に付き、誰もが狙うポイントだろう。この日のボクは、ゆっくり攻めることに対して自信を持っていたので、何だか「攻めがい」を感じてゆっくりと探ることが出来た。
 まずは淵尻(最後の部分)にあるカケアガリを丹念に流して20cm強のヤマメを1匹ゲットし、続いて流れの中に見える石裏近辺を探るが、今度は反応が無い。しかし諦めずに攻めは続く。
 一旦竿を置き、冷静になって滝の周囲を見回してみる。すると上流からの流れと滝がぶつかる部分に潜り込む流れを発見し、何となくそこに魚の気配を感じた。
 1投目はオモリをBサイズにして流したが、仕掛が馴染む前に複雑な流れにハジキ飛ばされてしまう。そこで一気に3Bまでアップし、底の流れに合わせて送り込んでいると待望のアタリが!。
 合わせた瞬間の抵抗とスピードから良型のヤマメと判断できた。いつものように慌てず、相手の動きを先回りし、竿を寝かして頭を持ち上げてやると、魚が深みから徐々に上がってくる。そしてようやく背ビレが水面から顔を出すに至ったが、魚影は尺近いサイズだ。だが、相手はそこからでも再び潜る抵抗を繰り返す。それを何度かイナしてようやく玉網に導くことに成功した。
 安堵する間もなく、早速メジャーを取り出し計測してみる。引きが強かっただけに期待はしていたが、「ウ~ン残念!」尺には足りない28.5cmで、その差1.5cmにガックリと肩を落とす。

                   
                              ●28.5cmのヤマメ●

 しかし、自己タイ記録であり、本日の最長寸であるヤマメを釣って気を良くしないわけはない。以後の攻めにも弾みがついた。脱渓点までの中間点近を前にして、釣果は既に「つ抜け」(ひとつ、ふたつのように、数に「つ」が付く状態を脱すること=2ケタ)している。このまま好調をキープして後半戦に突入だ!。 ( ~第二部に続く)
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高原川 ’10 その3 ~第2部

2010-05-22 12:30:45 | 渓流&管理釣り場での釣り
■生命の終焉■

 3度目の退渓する直前、白骨化した鹿(多分)を発見した。渓流ではタマに見かける風景らしいが、僕自身が発見したのは初めてだ。これは冬場にエサを求めて雪の上を歩いていた鹿が、知らず知らずのうちに水際に近寄ってしまい、雪の下を流れている川に足を取られて脱出不能になった結果のようだ。自然は、時には残酷なまでに過酷な条件を我々生物に突きつけてくるが、その一端を垣間見たようで、心が引き締まる思いだ。そしてこの変わり果てた鹿の発見は
「自然に対してナメてかかってはイカン!、順応しなくては。」と、心に言い聞かせたくなるシーンであった。

●大きさからして、まだ若い鹿のようだ。●



■情報収集■

 宝フィッシングさんに到着すると、見回り監視員の情報として
「本流にはほとんど人は無く、支流の一部は賑わっている。」との連絡があったそうだ。具体的には本流が流れるところから一山越えたところにある、山之村(やまのむら)周辺が好調(但し人も多い)ということらしい。ここからの距離が近くて、すぐに入れるところにある支流では、下佐谷(しもさだに)にも何人か午前中に入っていたが、どこも思わしくなかったらしく、もう既に引き上げた後らしい。それに付け加えて蔵柱川(くらばしらかわ)には午前中に、ご主人自らは釣りをせず、娘さんのガイドとして向かったらしいが、小型のイワナと山女魚が各1匹に終わったということだった。
 「本流の下流部は?」との問いにも
 「連休前半は良かったらしいが、ここ近日は思わしくない。」との回答であった。そこで、
 「ベテランの通った後であれば、釣り残しは少ないが、小学生の後なら何とかなるかも?」との判断を下す。だが長時間粘ってもしょうがないので、1時間のタイム・リミットを設けて、その時点で結果が思わしくなければ、即、本流の下流部へ向かって
 「玉砕覚悟の一発狙いで散ってしまおう。」と心に決めてのアプローチとした。


■蔵柱川■

 早速、蔵柱川沿いを走る道路に沿って上流部に向かいつつ、眼下に見える川の様子を確認する。しかし、思わしい入渓地点が見つからず、結局一番下流部から入ることにした。

●蔵柱川最下流部の様子●


 さすが、支流とあって川幅は狭い。そこで、それまでの全長7.5mの竿から、5.0mに持ち替えて遡行していった。そしてすぐに淵を発見する。

●これが、すぐに発見した淵●


 1投目、すぐに目印が「ツンッ」と引き込まれ、すかさず合わせるが、アワセと同時に空を飛んでくるほどのサイズだ。

●全てがこのサイズ●


 しかし、魚は予想通りに貯まっているようで、次々にアタってくる。渕尻から攻め始めて淵頭までの間、全て同じエリアで計6匹のヤマメが出たが15~17cmといったところで不満足な結果だ。時間も丁度1時間経ち、判断のしどころである。
 「このまま、遡行すべきか、それとも…。」
 結局、この日のボクは男らしかった。「弱い者イジメ?」はヤメて、すぐに車に戻ったかと思うと一目散に下流へと向かうのであった。


■下流へ■

 一口に下流部と言ってもエリアはかなり広い。ボクがこれまで入った経験があるところは「二ツ屋」と「割石」の2箇所だった。上述した宝フィッシングさんの情報では連休前に良かったのは「二ツ屋」ということであった。
 ここで浮かんでくるのが
 「好調だったところは、条件が良いからそうなるのであって、水が回復しつつある今日なら、ポイントとしても復調しているのでは?。」という考えと、
 「連休前半に釣りきられて、ソコには魚は残っていない。」と考えの二つになる。
 ボクは、車中で後者を選んだ。釣りではよく「昨日までは良かったポイント」というのが存在する。これは磯釣り等で渡船店の店主に「今日は調子の良いところに上げてやるよ。」と言われて喜び勇んで上がったはイイものの、結果が出ずに惨敗すると、帰港時に「昨日までは良かったんやけどなぁ~。」と店主に慰められるという、そんなポイントのことを指す。その経験をイヤ?というほど味わっているボクとしては、そうなってしまうのは仕方がない。これは一種の性(さが)なのだ。


■割石上流■

 以前に割石から入渓したのは橋の下流部であった。その時、橋の真下から見えていた上流部に気になる淵があったのだが、河岸が切り立っていて、どうしてもアプローチ出来ずにいた。車窓から見ていると、その気になる淵に入れる場所を発見し、何かに吸い込まれるかのように気が付けばそこに車を駐めていた。
 この場所から降りて、攻めることが出来るのは、2箇所の淵と、その間のみになる。というのも神岡町街から下流にある地区では、切り立った河岸が多くて降りられる場所が限られてくるうえ、川通しが出来ない(川沿いを上がって行けない)ところも多いので、一つの入渓点から釣れる範囲が限られてくるからだ。

●割石から数えて一つ上流にある橋の下の淵●
          

 まずはすぐ近くの淵を攻め始める。水深はかなりあって、流れの幅もあるので8mの竿を使用した。
 数投目、目印がキレイに引き込まれてヤマメをゲット。アタリがあったのは淵尻からだった。

●本日最長寸のヤマメ=22cm●


 ただし、この頃から下流部から吹き付ける風が強まり、目印の動きが安定しなくなる。そこで、オモリを重くして対抗してゆく。
 後にこの淵では何度かアタリがあるものの、全てがウグイからのものであった。


■大トラブル■

 淵を丹念に探っている最中に事件は起こった。この時足場を変えつつ、様々な角度から淵を攻めていたのだが、誤って足を滑らせ、右臀部というか、右太もも付け根のやや上のケツ部を突き出た岩で強打したのだ。先端部が尖っておらず、突き刺さらなかったのは不幸中の幸いだったが、打ち所が打ち所なのでしゃがみ込むことも出来ず、ただ立ちつくすのみで、その場で激痛に耐えていた。何分が経ったところで、右足が動くことを確認し、ようやく安全な位置まで引き返したが、この時点で日没の時間までは30分ほどしかなくなっていた。
 「そのまま上がろうか?」とも思ったが、ふと下流部を見ると以前に見た、見るからにオイシソウな割石橋上流の淵が「おいで、おいで」をしているではないか!。これも釣り師の性なのか、何故か変な力が沸いてきて、気が付けば痛い足のことも忘れて小走りをしている始末だ。そして数分後には、その淵の横にバカが一人で立っているのであった。

●これがその淵頭だ●



■竿を襲う激震■

 「狙いは目は淵頭に流れ込む、白泡の流芯の両サイドとその下、それに流れがぶつかっている先にある岩盤の窪み部分だろう。」と予測したが、この時、もう既に山間の向こうに太陽は隠れており、道糸に結ばれた目印はかろうじて見えるか見えないかの境目だった。それに加えて風は一向に止みそうにもない。
 そこで、風対策としてオモリをそれまでよりも更に重い0.5号を装着した。そして目印が見えなくてもアタリがとれるよう、竿を持つ手に全神経を集中しつつ、竿を操作して仕掛を流してゆく。
 何投かするが通常の流し方では反応がない。ここで作戦を変更し、根掛かり覚悟でオモリを底に着け、コロコロと転がして行く戦法に切り替える。
 そしてまた数投。白泡の手前を転がしていた仕掛から伝わるオモリの「コトコト感」が一瞬消えたように感じた。「異変を感じたらアワセる」という鉄則を考えるヒマもなく、気が付けば反射的に竿を持った手首がアワセの方向へと返っていた。その瞬間、激震が我が愛竿である翠隼本流(すいしゅん・ほんりゅう/シマノ製)を襲い、それと同時にヒン曲がっていった。
 「最初の一撃への対処が肝心だ!」と心に言い聞かせ、竿を上流側に倒して踏ん張るが、相手は言うことを聞いてくれない。こちらもそれは予想の範囲内なので、下流に突進する相手の動きに合わせて、こちらも脳内をアドレナリンで埋め尽くすことでケツの痛さを忘れさせて走る走る!。この動きを何度か繰り返していると、相手の動きに対してこちらがアドバンテージを持つように変化していった。こうなればこちらのモノだ。グレ釣りで培った竿サバキ=相手が進む方向に先回りして竿を回しつつ、テンションを上方向にかけて相手の頭を持ち上げてやる。
 引き具合からして、大きめのイワナだろうと思っていたが、現した魚影を確認すると、その通り!良型のイワナだ。しかし、このクラスになるとここからでも抵抗を繰り返し、何度か潜ってゆく。引きが弱まる機会を捉えてようやく玉網を右手に持ったが、今度はそれを避けて通り越してしまう動きで抵抗を繰り返す。しかし何度目かのチャレンジで何とか玉網に収めることに成功した。

 このブログでも書いたことだが、昨年はゲットしていたハズのこのクラスのイワナには、不注意のために計測及び写真撮影の前に玉網から逃亡されてしまった。結局それは未公認のイワナとなってしまったが、今回はしっかりと握って撮影の後、安全地帯で計測をする。

●40cmジャスト!の大?イワナ●


 「ヤッター!自己記録クラスのイワナだ!」これをゲットしたことで、ふぬけ同然となったボクは、これを機に退渓を決意し、アドレナリンが出なくなったと共に復活したケツの痛みをこらえつつ、駐車地点へと向かった。


■まだ痛いケツ■

 それから1週間以上経ったが、その後、右臀部は腫れ上がり、今も紫に色付いている。したがってイスに座るにも半ケツ状態=左半分だけで座っている。もちろん、このブログもその状態でキーボードを打っているのだ。
 実は、今から20年くらい前にボクは島根県の隠岐で地磯に向かう途中に転落して、両足骨折をやらかしている。当時は交際中で「彼女」であった妻も、もちろんその時のことはよく記憶しているハズだ。だから今回の件に関しても、いつまでも懲りないボクに対して
 「バッカじゃないの?」という半ば呆れた目線で息子共々に見ていることだろう。
 もちろん、こっちとしてもそれは十分に承知している。だが、この日のような大逆転を味わってしまうと、もう手遅れなのかも知れない。そう言えば昔からこんなことが言われているのだ。
「釣りバカは、そう簡単に止められないのだ。」と…。
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高原川 ’10 その3 ~第1部

2010-05-15 12:30:20 | 渓流&管理釣り場での釣り
■新緑の季節■

 乱高下する今春の気温傾向には、ほとほと参ってしまう。高原川の流れる岐阜県最北部では、2週間前、マイナス基調の極寒状態だった状況から一変し、ゴールデン・ウィークには30度を超していたようだ。
 それでも日照時間を積算しているのか、木々は芽吹いて季節通りの色に変わりつつある。

●高原流域も新緑の季節を迎えている●


 今年のように山にストックされた雪が多いところに気温が急上昇すると、雪解け水が大量に発生する。そのような水のことを「雪代(ゆきしろ)」と言い、それが流れ込む河川では多くの場合、白濁した流れとなり、水温が急低下する。誰もが知っていると思うが、魚は変温動物だ。急激な水温低下が起こると、彼らは自らの生命を保護する法則に従って行動を開始する。つまり餌もとらずにジッと我慢し、体力を使わない=低活性化するのだ。
 更には釣行前々日には温かい雨がしっかりと降り、雪解けを加速させて中流部では1m近い増水となっていた。そして事前に問い合わせた宝フィッシングさんの見解では、
 「水は引きつつあるものの、本流はキビシイかも?」ということだった。 
 元々、ボクはこの釣りを始めた頃から長い竿をブン回して大型を狙う、本流での釣りが好みだ。従ってこんな状況下では時間に余裕のある人の場合なら諦めるのかも知れない。だが、ボクはサンデー・アングラーと呼ばれる、基本的に日曜日にしか釣行出来ない釣り師だ。よって危険のない状況下であれば「行くと決めたら行くしかない」のである。
 「逆に本流で釣る人が少なくて、釣りやすいかも?」と自らを言い聞かせながらも、
 「ハテさて、どのような結果になるのやら」と、不安という暗雲がたれ込める中、岐阜県最北部へと車を走らせた。


■厳しい状況■

●雪代によって白濁した水で増水する高原川●


 仮眠を数時間採った後、夜明けと共に準備を開始する。今回は、前回の脱渓地点である「蒲田建設裏」から上流を目ざし、「笠谷の出合」という地区までを釣るつもりであったが、一度川を確認しないことにはその後の流れ展開が読めない。そこで、いつもとは違って脱渓予定地点であるが、川の展望が効く「笠谷の出合」で一旦確認した後、入渓地点に戻って釣り上がるパターンで攻めることにした。
 川の様子は予想通り増水傾向だが、確実に引き始めており、その点では合格ではあったが、やはり雪代で白濁傾向にあり、如何にも水温が低そうである。


■実釣スタート■

 「蒲田建設裏」の河原は以前に大水があった影響か、右岸側(下流に向かって右側)が削り取られており、今にも崩れそうに感じるが、ザッと見回した感じではそちら側にオイシソウなポイントが見える。そこで慎重に河原を歩きながら各ポイントに仕掛を打ち込んでいくことにした。まず最初は20cmチョイのイワナが登場するが、目印に出るハッキリとしたアタリではなく、モゾモゾとした感じのアタリを捉えての結果である。

●当日の初イワナ●



■溜まり場発見■

 アタリはイワナらしい流れのたるんだところで出たのだが、試しに周囲にある、やや流れは強いがヤマメが好みそうなところに仕掛を打ってみても全く無反応。
「やはり水温低下の影響でヤマメは動いていないのか?」と自問自答を繰り返す。
 そして更に釣り上がったところに「如何にも!」という流れのたるみを発見した。

●この石の後ろのライン上に魚が溜まっていた●


 一見して、ソコには魚が溜まっていそうな気配がプンプンと漂っていた。一番のポイントは石のすぐ裏になるだろうが、すぐにソコへ仕掛を入れて釣ってしまうと、他の魚が警戒しそうだったので、まずは慎重に一番下流にある深みが浅場に向かってカケ上がる部分から攻めてみる。
 答えはすぐに出たが、やはりそれはイワナだった。続いてアタリをとってゆくと計5本のイワナが玉網に収まる。
 そして最終の攻めとして石のすぐ裏を狙い始める。2投、3投と繰り返すが、無反応。そこでオモリをそれまでのG2サイズから、重めの2Bに変更して早めに仕掛が低層に入るようにした。イメージとして、底をエサが転がるように流していくと根掛かりのように仕掛の流れが止まった。
 すかさずアワせると、相手はそれまでとは違う重々しい引きで抵抗を繰り返す。それまでは高い位置から竿を出して全て魚は引き抜いていたのだが、コイツは無理そうだ。崩れやすい河岸をやり取りしながらスロープ状に降りて行き、玉網で無事に掬い取ったのは尺にはチョッとだけ足りないイワナであった。

●29cmのイワナ●


 この縄張りのリーダー格を釣ったせいか、その後はウグイが食い始める。コレには閉口して退散を決め込み更に上流へと向かう。そして、またもや石裏の攻めパターンで良型イワナをゲットしたがコレは単発に終わった。

●先程と同寸=29cmのイワナ●



■ポイント・チェック■

 時間が過ぎ、何も得るモノがないままに笠谷の出合には到達したが、ココから上流は更に流れが速く、この日の「魚が低活性」という状況下では釣果が望めそうになかった。それに、ボクはどうしてもイワナよりもヤマメが好みなのだ。そこで、一旦退渓し、前回、前々回にヤマメをゲットしたポイント3箇所に対してピンスポット的にアプローチし、活性をチェックすることにした。幸い、この状況下ではボクの予想通り本流で竿を出す人は見かけなかったので、今回はこの方法が採りやすかった。
 まず最初は芋生茂橋付近に入り、前回と同じようにヤマメを1匹ゲットする。しかし、サイズはそこそこであったが後が続かない。

●当日初ヤマメ=21cm●


 続いて葛山堰堤の上流に入る。そして1箇所目。

●2方からの流れが合わさるところがポイント●


 ココではズドンと目印を引き込む大アタリが出る。それと同時にそれまでとは違う引きがロッドを絞り込んでいった。ボクは腰を落として何度も締め込みをかわすが、相手はシツコク抵抗を繰り返す。

●ようやく水面に顔を出したところを必死に撮影●


 応戦を繰り返してゆく内に取り込みに成功したのは尺越えサイズのイワナだった。

●尺越え第一弾=32cmのイワナ●


 このポイントではまたもや単発で後が続かず、更に上流へと移動し、続いて前々回にヤマメを連発した、この区間で2箇所目のポイントに仕掛を打ち込む。

●白泡の奥にピンポイントキャストで仕掛を投入●


 始め仕掛は反転しながら渦巻く流れ=反転流に沿ってグルグルと回っていたが、その動きが止まるのを受け、
「コレは生命からの信号だ!」と感じた瞬間に、手首が反射的にアワせる方向へと動いていた。そしてまたもや強い引きがロッドを襲った。
 今度は2度目なので落ち着いてはいた。しかし、先程とは違って流れの速い部分で釣っているので、下流に走られると水圧が加わり厄介だ。それは相手もよく解っているようで、ボクが嫌がる方向へと執拗に回り込もうとするが、その度にボク自身が下流に走ることで応戦をする。何度かそのやり取りを繰り返し、何度も転倒しそうになりながらも相手の動きを制することに成功する。必死のパッチでようやく玉網に収めたのは、またもや尺越えのイワナで、先程よりも心持ち大きそうなサイズである。

●今度は33cmのイワナ!●


 気をよくして少し粘ってみたが、やはり良型が居座るところには縄張りがあるようで、他の魚は居ない。よって単発のままでこの区間での釣りを終えることにした。


■脳内の一人作戦会議■

 ココまでの釣りで得た結果は、
「葛山より上流部の本流ではヤマメがほとんど動いていない。」
ということだった。ここで、
「だったら思い切ってヤマメの居そうな支流に行くべきか?」
「イヤイヤ、もっと下流に向かって本流の実績場で一発勝負か?」
という二つの選択肢が出てきた。しかし、その方面の情報は全く掴んでおらず、判断に困った。そこでいつもの宝フィッシングで近況を確認することにした。丁度エサの補充もしたいところでもあった。
             
●自己採取したクロカワムシも使用したが、このキンパクにアタリは集中した●



■ヒレが欠けている理由■

 お気付きの人もいるかと思うが、ココまでの時点で釣った尺越えイワナの2匹ともが尾ビレの一部が欠けている。ボク自身、この2匹は成魚の状態で放流されたのが大きくなったモノだと思っていた。(養殖魚は狭い水槽の中で泳ぐので、ヒレが擦れて少し溶けたような感じになっている。)しかい、アドバイスを求めに行った宝フィッシングさんにココまでの釣果報告していると意外な事実を聞かされた。
「いや~、マズマズのサイズのイワナが釣れたんですけど、どうもヒレピンの天然魚ではないようで残念です。」
と、ボク。
「その魚は天然魚ですが、フライをやる釣り人が、リリースをする際に尾ビレをカットした痕ですよ。」
と、宝フィッシングさん。
 調査員が漁業資源調査のために脂ヒレという小ビレをカットする話を聞いたことはあるが、個人がそんなことをするなんて…。
 「この行為は、個人的に調査するためなのか?」それとも「もう一度釣った際に区別できるように個人の楽しみのためにやったのか?」ボクには定かな理由は解らない。
 よく我々エサ釣り師は「リリースをせずに持ち帰り、魚を殺す。」と、ルアーやフライの愛好家の一部から批判されることがある。勿論、ボク自身も釣った後に食いきれず、処理に困るような量(しかも小型ばかり)を釣って自慢する人を見ていると「どうもな~。」と思うことも多いが、入漁証をキチンと購入して資源増殖に貢献していればいれば、基準は難しいが適量の獲物を持ち替えるのは当然の権利だと思う。
 尾ビレのカットが魚に与えるダメージに関しての知識はないが、もしも理由が個人の楽しみであったのなら
「殺すのはダメで、傷つけるのはアリかよ?」
と、ついついボクはツッ込みたくなる。そしてこの行為は別れる相手に
「お別れだが、今度会ったときにボクがすぐ判るようにイレズミを入れておくよ。」
「コレは愛情の印だからね。」
と言っているのと同じでは?と思え、その独善さに唖然とするばかりである。


 色々と思うことはあったが、ともかく宝フィッシングさんの意見を参考にボクは作戦を練り直した。この時点で時計は午後2時半を指していた。時間はまだあるが、充分ではない。この後はやや焦りを伴って移動を開始。実は、その先には更なる大きな展開が待っていたのだが、この時のボクには当然予想すら出来ていなかった。そしてドラマ?は第2部へと続くのであった。
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高原川 ’10 その2

2010-05-01 12:30:40 | 渓流&管理釣り場での釣り
■今期二度目の高原川■

 今春は誰もが言うように寒暖の差が激しく、安定しない。この日も4月が終わろうとしているのにやって来た寒気の影響で、岐阜県北部の道端に立つ温度計は午前0時頃には既に氷点下を指していた。海とは違って外気温と連動しやすい川の水温を気遣いながらも岐阜県最北部を走破し、高原川河畔へと向かった。


●明け方にはいったい何度まで下がっているのだろうか?●


■朝靄の中■

 前回の脱渓地点だった「芋生茂(おいも)橋」を渡って、その近辺から入渓し、そこから上流を目指した。

●芋生茂(おいも)橋●


 あまりに激しい寒暖差の煽りを受けてか、各渓流では釣果ムラが出ているようだが、ここ高原川も例外ではなく、スタート地点に立ちこめる朝靄(あさもや)は前途を予感させるモノであった。

●朝靄の立ちこめる高原川●


■実釣スタート■

 まず、目に入ったポイントに仕掛を投入し始める。数頭目で早くも、そこそこサイズのヤマメをゲットし、その後も散々攻めてみたが、小型がポツンと1匹アタッたものの、それっきりで後が続かない。更にアタッたポイントは、通常ヤマメが好む流れよりも遅い部分だ。
「やはり、気温と共に水温低下で活性が落ちているのだろうか?」との思いが頭を巡り始める。

●21cmのヤマメ●


 橋のすぐ上流にある、やや深みのある部分を攻めてみるが、ココは盛期にはヤマメの良いアタリがとれそうな感じはするが、この日の条件では流れが速すぎて無反応だった。更に他のそれらしきヤマメ・ポイントも攻めてみるが、稀にアタッてもエサの端をカジるのみで、食い込まない。これでいよいよ水温低下による食い渋りが現実のモノとして感じるようになった。そしてここから導いた予測から「流れの緩い部分にある、変化」に対する重点的な攻めを心掛けた。

 その甲斐あってか、ポツリポツリとアタリが出始めるが、そのアタリの発信元は全てイワナからのモノだった。コレには理由がある。イワナはヤマメより低水温と流れがやや遅い部分を好むからである。

●アタッてくるのは全てイワナ●


■晴れ渡る河原で■

 時間が経つと朝靄も消え、天気はピーカン・モードに突入した。それと共に上流正面に「焼岳」が姿を現す。こういう景色も渓流釣りの楽しみの一つである。

●残雪の輝く焼岳●


 焼岳に見とれつつ更に釣り上がるが、ココで他の釣り人と遭遇する。上流に向かって釣り上がってくる人に気付かず、前に入ってしまうことは偶然として考えられるが、そうではない。
 動きを観察していると、こちらのペースが速くて追いついた結果であったり、その人が釣り上がる人の目の前にワザと入る「頭はね」と呼ばれる行為をしたのでもなさそうだ。どうやら下流に向かって釣り下って来ているようだ。
 この釣りをやっていて何度か釣り下って来る人を見かけたことがあるが、そのほとんどがルアー釣りをする人で、この人もそうだった。
 この「釣り下り」という行為をする人の神経は、どうにも理解できない。それは、ボクがもし仮にルアーをキャストする立場に変わった場合であってもだ。
 元々、渓流でのルールを作ってきたのはルアーやフライが日本に入ってくるよりも、遙か昔からそこで釣りをしてきたエサ釣り師やテンカラ師達だ。だから、たとえ何かの不条理さを感じても「渓流では下流から釣り上がる」という基本ルールは何人であっても従わざるを得ないのだ。
 唯一釣り下って構わないのは、下流に大型堰堤や滝のように人が絶対に上がってこられない区間=「一方通行区間」に向かう場合だけで、しかも自分が降りた場所から下流には人が降りられないという条件が必要だ。
 釣り下りの弊害は、左側通行の日本の道路で「自分は右側通行の方が走りやすい」という根拠の下、「近くに誰も居ない」のをイイことに車を逆走させ続ければ、やがては必ず正面衝突するのと同じだ。お互いに気持ちの良い釣りがしたければ、絶対に守るべきルールなのだ。

 一言言ってやろうと待ち構えていたのだが、その意気込みが事前に届いてしまったのか、そのルアー君は、ボクを避ける方向に歩いて行った。
「避けるくらいなら、最初からするな!」と思いつつ、彼がさっきまで執拗にキャストしていて、何も釣っていなかった地点を見ると、良さげなポイントではないか!。
「どうせ、この日の低活性下では、ルアーを追うようなヤル気のある魚は居るまい。」との判断から、ボクはそのポイントを攻め始めた。

●ルアー君の諦めたポイント●


 数投目、アタリを捉えて良型のイワナをゲット。しかし、「ドーだ、参ったかこのヤロー」と振り返ってみるが、ルアー君は退散した後とみえて、既に姿は消えていた。

●結果的に本日最長寸の、27cmのイワナ●


 その後は更に釣り上がるが、既にルアー君が叩いていたのに加えて、更なる釣り人を発見したこと(この人はエサ釣り師だったが、ちゃんと釣り上がっていた)で諦めがつき、本日1回目の脱渓を決意した。

●土手にはツクシが顔を出すが、気温は低い●


■情報収集■

 今回のエサも前回同様「キンパク」であったが、サイズが小さく2個装着する機会が多くてエサ切れの心配があった。そこで追加のエサを購入するため、いつも高原川釣行でお世話になっている「宝フィッシング」さん(http://www.geocities.jp/takaraf/)に立ち寄り、同時に情報収集をする。
 予想通り店長さんから
「3日前から水温が下がって昨日も食いが悪かった。」という情報をもらったので、ボクからは
「上流の蒲田川なら温泉が流れ込むので水温が高いの?」という、質問をする。
 聞けばその通りだった。退店後は上流に車を走らせ、車窓から見下ろして気になる部分に仕掛を打ち込む「ラン&ガン」攻撃をしつつ、蒲田川に向かって高原川沿いを遡っていった。

■天然記念物■

 途中、とある淵が気になって、河原に降りていこうとした際に、ナニヤラ茂みに気配を感じ、そこででゴソゴソと動くモノを発見した。「すわ、熊かっ!」と身構えたが、それは国指定特別天然記念物である、ニホンカモシカだった。自身3度目の遭遇であるが、それらは全て3年間での出来事なので、「遭遇密度?が濃いような…」との思いから「個体数はそんなに減っていないのでは?」と、調べてみたが、中国地方以西では絶滅状態にあるものの、予想通り、それ以東ではかなり増えているようである。

●ボクを見つめるメスのニホンカモシカ●


 カモシカに見送られた先にある淵では、なんとかヤマメをゲットしたこともあって少々粘ってはみたものの、コレも単発だった。
 どこも気配が薄く、万策尽きた感があったので、宝フィツシングさんのアドバイスに素直に従い、間のポイントはもう飛ばすことにしてダイレクトに蒲田川へと向かうことを決意した。

●淵での釣果=ヤマメの24cm(当日最長寸)●


■蒲田川へ■

 蒲田川は今見という地区で高原川に注ぎ込む、比較的規模の大きな支流の一つだ。ここの特徴は前述したように、川沿いに何カ所もある温泉地から流れ込む温泉水のお陰で、水温が他地区に比べて高く、低水温に強いのが特徴だ。しかし、ココを目指す釣り人=特にルアーやフライをする釣り人が多く、激戦区とも言われている。

●蒲田川名物?地獄谷砂防堰堤(通称:メガネ橋)●


 人混みがキライなボクはこれまでこの川を意図的に避けてきたのだが、背に腹は替えられない。しばらく川沿いを走って入渓点を探しているうちに気が付けば中尾橋まで到達したのだが、既に日没の時間が迫っており、躊躇するヒマも無くなりつつあった。
 ふと橋の上から見下ろすと、良い感じのポイントを発見した。しかし今、正にそこから釣りを切り上げて帰る人の姿がそこにあった。
「まだ、魚は残っているのだろうか?」と、不安になりつつもその釣り人の様子を確認してみる。「釣りは道具ではない」という人が居るが、偏見を承知で発言させてもらうと、長年釣りをやっていれば、立ち振る舞いや恰好、それに道具立てである程度実力が判ってしまうものだ。幸い?にも名人級ではなさそうだったので、半ば安心しつつ空いたポイントに入ってみることにした。

●典型的な渓魚ポイントが空いた。●


 散々叩かれて、魚が警戒しているのかもしれないので、仕掛は今までよりも細いモノを装着し、投入する。すると、案の定、2投目でキレイなアタリが出た。
 だが、小さなアマゴだった。
「日本海に注ぐ川なのにアマゴ?」と思うだろうが、漁協関係者の説明では昨年放流?した発眼卵(受精済みの卵)の中に手違いでアマゴの卵が混入していたようである。
「しっかりしてくれよ。」と、言いたくもなるが、もう入ってしまったものは取り返しがつかないので、誰が何を言っても無駄なことだ。


●アマゴのサイズは15cm前後●


 最後の約45分間で、合計6匹出たが、どれもが小型でキープ出来そうなモノは1匹も出ず、この日の釣りが終わった。


■頭の引き出しに…■

 今回は、水温の低下でボクがいつもメインに狙っている、ヤマメやアマゴの良型に遭遇するチャンスがほとんど無かった。
 こんな日には誰もが思いつくであろう、水温の高いエリアに混雑を承知で移るか、思い切ってイワナ専門に狙う方が結果的に楽しめるという経験が再確認されたうえでボクの、頭の中の引き出しに仕舞い込まれたのだが、反面、「玉砕覚悟で目的の魚を狙い続けていれば、もしかして…。」と、頭のどこかでチラついてしまうのも釣り師の性だ。
 ボクの好きなギタリストである、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの曲に「PRIDE & JOY」というのがあるが、それは「非常に大事にしている人[もの]」という意味らしい。ボクにとっての釣りは、正しくそうであるが、釣りは(そんな英語があるのかどうかは判らないが)「PRIDE OR JOY」でもあるのだ。
 「ひたすら本命の良型魚を求め続ける」=「プライド(PRIDE)をとるか?」、「そこそこサイズに妥協し、安定した釣果を得る」=「楽しみ(JOY)をとるか?」…。勿論、両方成立するのが最高だが、機会はそう多くはない。だが、こうやって葛藤するのも、「実は釣りの楽しさなのだ。」と、ボクは肯定的に捉えている。

 「嗚呼、罪深きかな釣りという趣味は…。」ということだ。


●蒲田川上流方向に望む山々●
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高原川 ’10 その1

2010-04-17 12:30:01 | 渓流&管理釣り場での釣り
■高原川へ■

 昨年は「日券」という、その日一日だけ釣りが可能な券を当日現地のコンビニ等で買い求めて入漁していたが、今年は気合いを入れてシーズンを通して入漁可能な年券を事前に購入して備えていた岐阜県、高原川への釣行。
 しかし、今冬は山々に雪が多く、飛騨地方もその例外ではなかった。高原川は岐阜県内でも特に海抜の高い所を流れているため、春の訪れは特に遅い。アプローチ道に雪の心配が無くなったのは4月に入ってからだった。

■笹島付近■

 事前の情報では冬の大雪とに加えて3月は寒暖の差が激しく、雨&雪が交互にやってくるような天気傾向のため、特に下流部では増水続きと聞いていたが、それもようやく落ち着き始めたとのこと。当日は雨の天気予報ではあったが大した降りにはならない判断から、釣行を決意し、まずは入渓場所を確保するため、昨年初めてここを訪れた時と同じ笹島トンネル付近を目指した。

●高原川・笹島付近の様子●


 夜明けと共にポイントに降りたが、昨夏にあったという大水が原因なのか、昨年とまるで様子が変わっている。
 以前の印象では、この区間は割と幅が広く、ゆったりとした流れと瀬が交互にやってくるように構成されたいたのだが、水量自体はあるものの、川筋がかなり細くなって水流の勢いが増している。あまりの変貌ぶりに、やや唖然としたが、これも計り知れない自然の力なのだ。土手や堰堤で守っているつもりであっても人間にはどうにもならないことを思い知らされ、変に感心しながらも竿を振り始めた。

 しかし、川から魚の気配は消えたかのようだった。全体的に水深が浅く、昨年釣れたと記憶しているポイントのほとんどが潰れ、リセットされた状態になっている。当然、昨年不注意から玉網から逃してしまった推定38cmのイワナを掛けたポイントも消失しており、一時は途方に暮れてしまう。
「魚はいったい何処に居るのだろうか?。」こちらの頭もリセットしなくてはならない。

●この区間は全体的に幅が狭くなっているようだ●


 そんな時、
「大場所がダメなら、小さなスポットを攻めてみよう。」との思いが、ふと頭に沸き上がってきた。そこで瀬の中にある石裏にある、小さな掘れ込みを片っ端から狙い打ってゆくことにした。
 何カ所か仕掛を打ち込んでゆく内に禁漁のブランクで薄れていた感覚を取り戻して(と言っても、この釣りのキャリアは少ないが…。)キャストの精度も上がり、ピタッと石裏に入り出すのに合わせたかのように、ようやくアタリを捉えるに至った。

●瀬の中にある、石裏が狙い目だ。●

●この区間のレギュラーサイズ=25cmのイワナ●


 答えが出たので同じ要領で攻めてゆくと、ポツポツながら、ゲット数が伸びて行き、区間の終了時には6匹を数えていた。

●斑点模様が鮮明なアメマス系のイワナも登場●

●この日の魚は全て「キンパク」で喰わせた●


 ただし、この区間ではイワナは25cm前後ばかりでサイズが伸びず、ボクが好きなヤマメが全く出ていない。
 ココで、
「雪代(雪解け水)が入っているせいで、より低水温を好むイワナばかりなのか?」
「ということは、ヤマメはもっと下流のゆったりとした流れに居るのだろうか?」
等々、色んな思考がまたもや頭の中でグルグルと回り始める。

■葛山へ■

 一旦、笹島地区を脱渓した30分後、ボクは下流側の葛山堰堤近くに立っていた。

●葛山の堰堤湖●


 この付近は先程の笹島から下流側にある最初の大きな魚止め(魚が行き来できない)堰堤があり、その上流にあるダム湖(土砂で大分埋まっているが)が
「それより上流への魚の供給源になっているだろう。」との予測をたてて、ココにやって来たワケだ。

●入渓地点では春を告げる「ふきのとう」が、お出迎え。●


 最初の大場所こそ不発だったものの、次の「雰囲気丸出し」のポイントで、待望だった約20cmのヤマメをゲットする。

●ポイントは二つの流れが合わさる部分。●

●コンディションは良さそうだ。●


 「続いて…。」を期待したが、そう甘くはない。こんな誰でも解りそうなポイントは、天気の良かった前日の土曜に相当攻められているハズだ。答えは全くその通りで、後が続かない。

 以後はそのまま釣り上がって行くが、川底が砂礫質の部分が多く、今ひとつポイントになる決め手に欠ける雰囲気が漂う。

●この付近の川の様子●


 やはり予想が当たって、しばらくは何も起こらないまま、ただただ釣り上がっていくのみである。

 この日の釣果全てに言えることだが、例えば淵部の流れ込みのような太い流れの筋=普段なら魚が多く居着いていそうなところでは反応がほとんど無い。これは前述したように前日に入った釣り人のプレッシャーと、当日の雨による増水と濁り、そして雪代による水温低下など色々と要因があったのだろうが、この日のココまでの傾向から推測すると、この区間でも観察して初めて気付くような小さなスポット=いわゆる「竿抜け」がキーワードであろう。そしてそれから推測されるスポットを探して仕掛を打って行く。

 長年釣りをやっていると、何だか気配を感じる瞬間があるが、ボクの目に止まったポイントは正にそんな感じであった。
 このポイントは強い流れの筋の奥に出来た小さなポケット状の「窪み」のようなところで、その部分だけが流れから取り残された真空地帯のようになっている。しかし、上から木が被さっているココは、ボクにサイドスローでのアプローチを要求している。
 この頃、河原には強風が吹いていたが、コレがウマいことに追い風となっており、竿をサイドから振り込む途中で強制的にピタッとスウィングを止めてやると、水面と並行方向を飛来する仕掛を勝手に運んでくれた。そのことに気付くとオモシロいようにキャストが決まり始めた。

●白い筋の奥が、この日最大のヤマメ・スポット●


 そしてこのポイントでは、この日初めてヤマメが連発した。

●当日時点で「成魚」は未放流=イワナ、ヤマメは全て「ヒレピン」だ。●

●ヤマメの最大サイズは25cm●

 しかし、3匹抜いた後は、さすがに続かず、移動を余儀なくされる。

 更に釣り上がると、「いかにも」的なポイントに差し掛かる。釣らない手はないので一応仕掛を打ち込むが、やはりこの日のパターン通りで反応はない。

●流れの周囲にある「当たり前」の部分に魚は居ない●


 何投かシツコク攻めたが、やはりダメ。そうこうする内に何かに気を取られて竿の扱いに集中できず、流し切っても竿の送りが止まったまま放ったらかしていると、仕掛が竿先を中心に弧を描き、手前にある水深の浅い、「何でもなさそうな」部分に回り込んでいった。しかし、何故かそんなころで偶然にもアタリが出始めるのであった。

●手前の「何でもなさそうな部分」がポイント●


 エサを求めて小玉スイカくらいの底石が転がる浅場に出て来ているのだろうか、ココではイワナ&ヤマメが混棲しており、集中して攻めるためにやや下流に足場を換えてからは、それぞれが連発し始める。

 仕掛は「何でもなさそうな」部分を何度も通過し、魚のゲット数も伸びていったが、とある底石に差し掛かった瞬間に、それまでとは違う、ゴツンという衝撃が竿を持つ手を襲った。
 ロッドを立てるのと同時に、相手はグングンとトルクフルに締め込みながら下流側にある底石の裏に回り込もうとする。
 ボクはその動きに合わせて下流へ移動し、相手の動きを先読みしつつ、走る方向へとワザと竿を回して一気に頭を持ち上げた。そして空気を吸わせると、幾分相手はおとなしくなっていった。そのスキをついて更にプレッシャーを掛けて引き寄せた瞬間に、右手に持つ玉網へと導いた。

 相手はイワナ。ギリギリであるが、尺は越えているようだ。

●実寸31cmのイワナ●


 同じポイントで数匹追加した後は、更に釣り上がって行った。

 ここから上流は、明らかに魚の気配が無くなって、ごく稀に小さ目のイワナが相手をしてくれる程度だった。更には事前に用意したエサがとうとう切れて、自己採集を余儀なくされる。

 雨脚の強まる中、最終的に芋生茂(おいも)橋まで到達したが、明らかに増水し始めており、危険が伴うかも知れない。それを機に、この日の釣りが終了した。


 今年初めての高原川本流だったが、流筋が自然に変わっている部分に加えて、重機が入って河川改修をし終えたところ、逆に現在改修中のところもあって、昨年とは大きく様子が変わっていた。更には、インターネット情報で確認すると、他にもこの地区と同じように変化しているところがあるようだ。その事実は当然「釣りにくくなっている箇所もある」ということでもあるが、モノは考えようで、その事が逆にボクのチャレンジ精神を刺激してくれそうだ。
 今回の釣行は、今年も間違いなく何度も訪れるであろう、この地区の初戦であるに過ぎない。
「今年こそ尺オーバーのヤマメを…。」と、決意を新たにするボクであった。
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ようやく渓流シーズンの開幕

2010-03-27 12:30:07 | 渓流&管理釣り場での釣り
 何だかんだで、遅れていた渓流解禁後の初釣行。昨年に圧倒的な魚影の違いを感じたことから「開幕は岐阜県内で」と思っていたのだが、前日夜が雪の予報になっており、今更スタッドレス・タイヤに履き替えるのは面倒だ。そこで、あまり釣果が期待が出来ないのは知りつつも、昨年と同じ岡山&鳥取の県境部へ向かうこととした。

 昨年同様、雪を被った大山がボクを出迎えてくれた。

                    

 最初は旭川の上流部から。アホの一つ覚えとは知りつつも、昨年と同じポイントから竿を出してみる。

                    

 ココにはアマゴが待ってくれていたものの、型は小さく16cm前後が3匹で終わる。
 どうも今年は成魚放流魚は釣りつくされていたようだ。釣れたアマゴはココでは珍しい天然もしくは準天然物のようで、

                    

 ヒレは綺麗な状態だ。

 天然物が動いているのなら、「もしかして」と昨年チェックしていた岩のゴロゴロしているポイントに入ってみる。

                    

 だが、不発に終わる。

 次に、「昨年にニジマスが出たポイントは?」

                    

と、向かってみるが、またもや不発。
 今度は仕方なしに県境を越えて鳥取県の天神川水系へと向かう。

 天神川水系でもアホの一つ覚え第二弾で入ったところでは不発。「柳の下にドジョウが2匹」は成立しないようだ。

 こうも釣れないと、ヤル気が全然出てこない。そこで「釣れれば何でもイイや。」と妥協をして、成魚放流物の残り物を狙いに行く。そういえば、昨年にカーナビに放流地点をマーキングしていたので、ソコに入ってみる。

                    

 しかし、解禁から20日以上経っているので、さすがに魚の気配はほとんど無い。ソコで「ゼロ仕掛」と言われる、ハリスが0.1号の超極細仕掛に竿を含めて丸ごと交換した。時間の経過と共に魚が食うエサも野生化しているのでは?という考察からそれまでのイクラやブドウ虫などの放流魚向けっぽいモノからその場で採取したクロカワムシに

                    

交換してみる。

 コレが正解だったようで、ようやくアタリを捉えて、ヤマメを1匹追加。

                    

続いてもう1匹出たが、すぐに気配が無くなったので、上流に移動する。

                    

 このポイントでは、クロカワムシと、持参していたキンパク

                    

とをローテーションさせてエサ交換して行くうちに、更に5匹を追加することに成功した。

 この天神川水系では21cmのヤマメ

                    

が最長寸で、天然っぽいと言えるのは、やや小さめの1匹だけだったが、成魚放流とはいうものの、時間が経っても残っているヤツはそれなりに賢く、何らかの工夫が要ることは理解でき、その意味では楽しかったが…。
 やや釈然としない部分はあるものの、「ボーズでなかったことが、せめてもの救い」であり、スタートとしてはマズマズかな?という思いだ。

 やっと解禁したボクの渓流釣り、これから約半年の期間には、今回のような何となくショボイ釣りとは違った、エキサイティングな釣りをお届けする予定なので「乞うご期待を…!」という感じかな?。
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