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中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

またもや久婦須川へ

2011-07-16 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■釣り場の条件■

 釣行計画をたてる時、磯釣りの場合だと渡船店のホームページなどを見れば釣果が一目瞭然で現況が判断できるが、渓流釣りの場合は地元に詳しい釣具店のホームページを見たり、実際に電話で問い合わせても、店に立ち寄った釣り人から得た極一部の情報か、概要程度しか解らない。さりとて「行き当たりばったり」で釣り場に向かったところでそれはバクチになってしまうだろう。
 そんな時キャリアが豊富な釣り人であれば「いつ何時」といった釣り場に向かうタイミングが経験上ある程度判断できるし、釣り人同士のネットワークからリアルタイム、もしくはそれに近い情報を得ることができるので失敗は減ると思うが、経験の浅い釣り人の場合はそうはいかない。だから釣果を伸ばすには自分でデータを探して確度を上げることが大事になってくる。
 この釣りを初めて僅か3年目のボクの場合は、川の水況を知ることで、「ある程度確度が上がるのでは?」と考え、釣行前に調べている。そのために利用しているのが、国土交通省が発信している「川の防災情報」(http://www.river.go.jp/)だ。
 このサイトでは、「全ての河川を網羅」とは言えないものの、釣り場になりうるであろう多くの河川の水位とその周辺の雨量が、3日前からの推移で目にすることが出来るのだ。

 渓流釣りの場合、基本的に「増水後、平水に向かって落ち着き始める頃」に釣果が伸びると言われている。それに適合する川はないものかと、今回の釣行前に色々と調べたところ、岐阜県の最北部一帯の川では雨後の増水からの回復が早く、前日の土曜なら狙い目だったかも知れないが、日曜日は期待薄に思えた。更には鮎釣りが解禁されて渓流釣りを気楽に楽しめる川自体の数が減っていた。
 そこで浮上したのがいつもの久婦須川だ。鮎釣り客に占拠されることが無いこの川は、釣行2日前に1m台に近付いた水位がゆっくりと下がり初め、前日には80cmに入っていた。この水位は今年最初に訪れた際と同じ状況下なので、こと水位面だけに限っては期待が持てるようであったが…。


■増水の川■

 家を出る時間が遅かったせいか、現地に着くと想定していた箇所にまたもや車が止まっており、結局三回連続でいつもの入渓点からのスタートになってしまった。
 川に降りる準備をしていると、ボクが車で向かう際に雷雨でもあったのか、山から道路に小川のように流れている部分が何カ所もあり、最初から嫌な予感がつきまとっていた。更には季節が進んだせいか河原へと通じる踏み跡には草が生い茂り、ジャングル状態になっており、「完全藪こぎ状態」で進まなくてはならない状況だった。

●河原へは藪こぎが強いられる●

 草いきれと雨後と朝露による湿度とクモの巣にウンザリとしながらもようやく河原に到達する。そこでこの日の釣果が予想される光景が目に入ってきた。
 「思ったよりも濁りがキツイ…」

●水位は何とかなるレベルだが、濁りがキツイ●

 そして、ボクの場合、悪い方の予想はいつも当たるから、困ったものだ。

■最初の一匹■

 水位的には釣りに支障が出るギリギリの線だった。更には直感だが、川が流れる流筋がどことなく悪く見え、前回、前々回に比べてポイントになる部分が潰れて確実に減っている。スタート地点から全く無反応のまま釣り上がって行くが、どうやら魚は流れの筋には出てこず、物陰に隠れている様子だ。

●ポイントを潰すようなグチャグチャな流れ●

 そこで、いつもならメインになるポイントよりもアシ際にある、流れの落ち着いているところへ向けて重点的に打ち込んでいく。しばらく無反応の区間が続いたが、諦めずに投入を繰り返す内に、モゾッともたれるような感覚で目印の動きがとまった。すかさずアワセると、アタリの弱さとは反対に結構締め込む。貴重な魚の引きを味わいながら、落ち着いて玉網に誘導し、無事にゲット。この日初のヤマメとご対面だ。

●26cmのヤマメ●


 このヤマメから導き出した答えは、予想通りではあるが、「流れの中には出てこない。」だった。

 ここからはヤマメの気持ちになって「ハードな状況から逃れられるポイント」を見付けると、時間を掛けて丹念に探るように努めた。

 そして淵部の流れの影でまたもやモゾッとしたアタリを捉えてもう一匹追加する。

●23cm級●

 一匹目はクロカワムシのエサでの釣果だったが、この淵部で色々と試行錯誤を繰り返す内、小さなサイズを含めてミミズのアタリの方が極端に反応が良いことに気が付いた。上記のヤマメもミミズに反応した一匹だったので以後は、ミミズのエサをメインに切り替えた。

●「濁った時のミミズ」の定説は本当かも?●



■思い切って堰堤へ■

 更に釣り上がる内に、少ないアタリを捉えつつもソコソコのサイズを数匹追加できたが、いつもの安定感は無く、しんどい展開が続く。そして、そうこうしている内にあっという間に堰堤部に到達した。

●かなり増水している堰堤手前の区間●

 これまでの釣行で好印象だった堰堤手前のポイントは潰れ、何も出ないままだった。こうなりゃ何としても堰堤下に入りたいが、増水のために普通のルートでは到達できそうにない。そこで一端下流に戻って右岸に渡り直し、途中でまたもやの藪こぎをしながら苦労の末に何とか堰堤直下に到達する。

●堰堤直下の流れ●

 ようやく到達したものの、水量が多くて釣り辛いうえに濁りもキツイ。諦めずに投入を繰り返したが、苦労の甲斐無く反応するのは中~小型のみで期待はずれに終わった。

●23cm級●


■激戦区へ■

 堰堤から退渓した後は一端車に乗り、少し下流へと向かった。するとこの川では数少ない、河原に車が直付け出来る区間=いつも誰かが入っているところに車が駐車されていないことに気付いた。
 「多分、誰かが入った後だろうな…。」と思いつつも、正午過ぎの暑さに負け、「藪こぎはもうイヤだ。」とばかりにこの区間から「誰かの残り物」を狙って釣り上がることにした。

●誰もが入る激戦区●

 最初の内は明るい日差しが差し込んでいて、望み薄なので適当に飛ばして進んで行く。川の様子を見ると午前中に攻めた区間よりも濁りが薄いようだ。 

 やがて周りに木々が迫り、日陰になるポイント群に到達する。

●途中から日陰が多くなる●

 しかし、「誰かの残り物」はほとんど無かった。反応するのは小型がメインで苦労の連続だったが、物陰の中の物陰のような箇所へ仕掛のロストを覚悟しつつ、一か八かでキャストした仕掛にようやく小マシなサイズが反応する。

●ようやくの20cm級●


 しかし、上向いたかに見えた兆しもすぐ下降線を辿っていった。そして更には最悪の事態が発生した。
 ここまで底石がヌルヌルとしているのに注意しつつ釣り上がってきたのだが、遂に足を滑らせて転倒し、全身ズブ濡れになってしまったのだ。オマケに掴んでいたメインロッドを真っ二つにする「体たらくさ」を伴って…。


■不幸中の幸い■

 大トラブルにも負けず、ロッドを予備のモノに交換するが、その竿はいわゆるゼロ・ロッドという、極細糸対応の竿であった。
 「ヤマメの喰いは悪いし、細目の仕掛でちょうど良いか?」と自分を納得させつつ、糸をこの竿では限界に近い太仕掛の0.2号に交換する。しかし、努力の甲斐無く何も反応がないままこの区間の最終局面へと到達した。

●一応の区間最終部●


■この日一番■

 区間最終部とは言うものの、実はその先に「奥の院」とも言うべき一帯がある。しかし、そこへ到達するには入り口に立ちふさがる放水口からの水の量が運命を左右するのだ。残念ながらこの日は吹き出す水の量が多く、「奥の院」へのアプローチは無理である。そこで吹き出し口周囲にある淵を丹念に探ってみることにした。

 この淵には大石が一箇所デンッ!と座っていて、「誰が見ても」それこそ見るからにそこがポイントだと判断できる。その周囲を下流側から丹念に探って行くが無反応。やはり誰もが狙うからだろうか魚影は薄いようだ。
 連日のように攻められて魚が減っているのか、石裏では反応が全くないので、石に水流が当たる面=いわゆる「ウケ」の部分で仕掛が馴染むように投入し、流してみる。
 3投目、石の直前で目印の動きが止まったと同時に、それまでピンッと張っていた糸がフケた。
 「アタリか?それとも根掛かりか?」と半信半疑のままでアワセを入れると、それと同時に軟竿がグニャリと曲がり込んでゆく。
 相手に対して糸が細目だから慎重にならざるを得ないが、柔らかい竿でバランスをとっているので、ウマく衝撃を吸収してくれているようだ。それを上回る引きが時折ロッドを襲った場合は竿を上流側に倒したままで自分が下流へと下ることで仕掛全体に架かるテンションを逃がしてやることで対処してゆく。
 徐々に相手の引きが弱まり、玉網へと誘導したいと思うが、柔らかい竿はここ一番で魚を浮かせるパワーが出てこない。そこで上流に竿を倒したままで、こちらから魚に近付くイメージで誘導してみると、何とか取り込みに成功した。見れば、背中の張りが強いオス、それも本日最長寸のヤマメだった。

●尺には足らないが、♂ヤマメの29cm●


 その後は粘ってみたが、この淵では続く魚はとうとう出ずじまいだった。
 
 その後、見えているのに行けないジレンマに耐えきれずに「放水口を超える方法はないものか?」と、アプローチを試みたが、間近で見る放水の勢いは強烈そのものだった。無理をすれば吹き飛ばされて危険にさらされそうだし、これ以上ズブ濡れになるのはもうゴメンだ。イイ魚もゲットしたことであるし、キリのいいところでもある。ここで退渓を決意するに至り、この日の釣りが終了した。

●越すに越されぬ放水口●


■ケガの功名■

 夏本番に入り、どの渓でも厳しい状況下に入っている。しかし、そんな中でも20cm以上のヤマメが何とか一日楽しめるほど釣れ続いてくれたのは、ベストとは言えないまでも、
 「『増水から平水へと向かい、落ち着き始める』際の、恩恵の一部と捉えるべきなのだろうか?。」とも思えてくる。
 今回の釣果は、決定的な判断材料になるほどの釣れっ振りではなく、そうだと言い切れないのが苦しいところだが、少なくとも「川の防災情報」がある程度の目安になることだけは言えると思う。
 今回は車で移動している時間帯での雷雨の影響が出て濁りがキツくなったようだが、それに対処するには、携帯電話版の「川の防災情報」を利用し、現地に向かう途中で再確認することが必要になってくるだろう。今後はそれを利用することで更なる確度アップを図ってゆきたいと思う。

 それにしても、この日の最大魚のことである。これは細仕掛に喰ってきた魚だ。直前に転倒していなければ、竿を交換していなかっただろうから、もしかするといつもの0.3号では喰ってくれなかった魚かも知れない。そうだとすると、正しく「ケガの功名」と言ったところだろう。しかし、ケガの代償は大きい。家に帰って調べると、折れた部分の他に、割れも発見し、交換が必要なパーツは2ヶ所に渡っていた。これから修理費の捻出に苦労しなければならないのだ。
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柳の下にドジョウは…

2011-06-25 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■梅雨の晴れ間に■

 前回、好調に釣れたヤマメに気をよくしたボクは、今回も同様に富山県を流れる久婦須川を目指した。

 夜明けが早い夏至前後のこの時期は、遠くから訪れる者にとっては到着後の仮眠時間が短縮されて辛さが増す。実際に、この日も到着後の仮眠は1時間半しかとれなかった。コレが若き日のことであれば、ほとんど気にならなかったのかも知れないが、50を前にした男にとっては堪らない辛さがある。
 しかし、それを感じるのはその日の夜以降のことだ。どうやらボクの場合は、釣りをしている最中にアドレナリンその他が脳内に出続けて覚醒しているようだ。体力的にはともかくとして、コレが出ている内は、まだまだ精神的に「若い?」ってことになるのだろうか?。

 この日は4時に仮眠から目覚めてパンをかじりながら準備を整えていたのだが、見上げれば、もう空には朝焼けが広がっていた。

●朝焼けの山々●

 「朝焼け」を見つめながらその昔、カシオペアという当時のフュージョン音楽界を代表するバンドの「ASAYAKE」という曲をバンドでコピーしていた高校3年生時のことを思い出していた。

 あれから約30年が経った今も当時に行動や価値観を共にしたバンドのメンバーや、バンド仲間達の一部とは不変の親友であり、ボクの心の財産でもあり続けているが、残念なのはボク以外に誰一人として釣りをしないことだ。
 個人的なノスタルジーに浸りながらも、アイツらの中の誰か一人くらいが、リタイヤする頃に「『オレも連れていってくれ』って言うのかな?」なんて思っている間に準備が完了する。

 当初は前回とは違った箇所からの入渓を想定していたのだが、ボクが到着した頃には「先約有り」の状態だったので、仕方なく、前回と全く同じ区間からの入渓となってしまった。
 同じ区間に連続して入るのは好きな方ではないが、西日本とは違って北陸方面では梅雨の中休みが続いて雨が少なく、ここ久婦須川でも前回よりも水位が30cm近くも下がっていたから、川の様子も変わっているだろう。そのうえ、前回は曇り+小雨だった天気が、当日は1日中晴れるという予報が出ていたから気象条件も違う。
 こんな条件の日だと警戒心の強い渓魚のことだから、空からの外敵を恐れるあまり物陰に隠れて食い渋ることが予想され、前回とは随分と違った展開になるだろう。従って一から仕切り直す必要があるかも知れないのだ。
 僅かな望みとしては前回バラした魚が残っているかも知れず、少しは望みを持ちたいが、世間で言うところの「柳の下にドジョウが2匹」は甘い考えだとされている。果たして今回の結果はどう転ぶのだろうか…。


■エサ場には不在■

 前回と同じ地点からスタートしたのは当然だが、かなり水位が下がっているうえに水温が上がったせいか、流れの緩い底石に緑の藻が着いている。コレは底に棲む川虫たちにも良いコンディションとは言えず、当然食物連鎖の上に立つ渓魚達にも悪影響を及ぼす状態だと聞いている。
 更には、夜明けからしばらくの間はやや薄曇りではあったものの、周囲は随分と明るく、元々水深の浅いエサ場のようであるこの一帯に出てくる渓魚は少ないだろう。
 それを実証するかのように、当初は全くアタリが出ない。

 そのまま釣り上がってゆくが、ようやくアタリを捉えたのは、区間としては一つ上流にある深瀬脇の、木陰の下だ。

●木が覆う部分がポイント●

 ようやくゲットするものの、型には不満が残るサイズだ。

●20cm強のヤマメ●

 しかし、一匹の本命魚から得るモノは大きい。明らかに警戒心が増している様子から考えられることは、物陰への攻めだ。それには正確なキャストとオモリの選択が必要になる。
 例えば対岸にある物陰へのアプローチだと、オーバースローでは覆い被さる木々に引っ掛かってしまう。そこでキャストはサイドからする方法と、アンダーからする方法を取り入れなくてはならない。多少のミスによる仕掛のロストはあるものの、キャスト自体は慣れれば何とかなるレベルだが、それに加えてオモリの選択が重要になってくる。
 オモリが重いとキャストがし易く、コントロール性も向上するのは確かだ。しかし、水中に仕掛が入った後、流れの中を流してゆく際に、度を超したオモリを装着していると竿先を支点に沖側に出ている仕掛がオモリの重さで振り子が戻るように流れを横切って手前に寄ってくる。だから、想定していたラインから外れない程度のオモリがベストの選択になるのだ。この辺は磯のグレ釣りで雨期をワザと沈ませて使う、「沈ませ釣り」と同じだ。バランスの取れたオモリを装着した仕掛は、流れの中に一度食い込むと、簡単には外れなくなるのだ。
 また、物陰は木陰ばかりとは限らない。例えば石裏もそうであるし、泡立つ流芯のサイドや下にも影は出来る。そしてそれぞれに対して仕掛に打つオモリの選択も変わってくる。
 そして次なるポイントではそんな物陰の一つである、流芯の脇を狙わなくてはならなかった。

●泡立つ流芯の両サイドが狙い目だ●

 ここではまず、軽めのジンタン2号を仕掛に打って泡の流芯に巻き込まれてゆく流れに乗せて流してゆく。勿論セオリー通りに手前から、そして下流側から攻めてゆく。
 しかし、反応がない。そこで今度はオモリを2Bに打ち変えて流れが始まる頭の部分で素早く馴染ませてみる。
 この仕掛にアタリが出て、良型のヤマメをゲットする。
 
●25cmのヤマメ●

 因みに使用したエサはクロカワムシだったが、前回の経験から更に良型を狙ってこの時点で現地採取で何とか3匹確保していたギンパク(オニチョロ)を使用してみた。しかし、そう甘くはなく、このポイントで拝めた魚は他にはなかった。

●クロカワムシ●

●現地採取で数匹キープしたギンパク(オニチョロ)●


■瀬落ちのポイント■

 次は大きく広がる瀬から落ちるポイントだ。

●本来なら、落ち込みの全てがポイントなのだが…●

 本来は端から端までワイドに攻めることができるポイントなのだが、以前より水量が少ない状況下では、渓魚が居着く部分が限られるのか、反応がほとんどない。しかも流れが緩くていつものオモリ使いでは根掛かりが多発する。
 そこで、軽めのオモリに打ち変えて何とかピン中のピン・スポットから絞り出すように1匹のヤマメをゲットした。

●23cmのヤマメ●


■食性の変化?■

 次なるは、淵に小さな滝が注ぐポントだ。
 こういった場所は、初期に魚が貯まっていそうな所ではあるが、季節が進んで瀬に渓魚が出だすと、ウグイのような足の遅い外道に支配されてしまうことが多いと聞く。しかし、就餌するという面から考えると一等地には違いなく、少しは期待ができるかも知れない。
 クロカワムシをハリに刺して何投かキャストするが、案の定、ウグイが連発する。
 「エサを変えるとどうなるか?」と思って一発狙いのギンパク(オニチョロ)を指してみるが、これまたウグイが食ってくる。


 今度はダメ元で前回に成績が振るわなかったミミズ(キジ)を刺してみる。

●「もしや?」のミミズ(キジ)●

 しかし、「やってみないと判らない」もので、これに反応があった。
 すかさずアワセを入れるが、その途端に良型特有の「ゴンッ!」という衝撃と共に竿を絞り込んでゆく。
 相手はかなりの抵抗を示すが、「馬鹿デカイ」サイズの引きではない。したがってこちらの対処にも僅かな余裕がある。
 竿を上流に向けて倒し、ゆっくりと締め上げるように慎重に操作してゆく。このクラスなら、竿の角度を保持し反発力と喧嘩させることで相手のパワーが弱まってゆくものだ。そして水面近くに浮いてからは、やや強引に浮かせ、空気を充分に吸わせて更に弱らせたうえでフィニッシュへと導く。
 粘った甲斐があった。尺には届かないが、それに近いサイズのヤマメだ。

●29cmのヤマメ●

 前回通用したエサは今回通用せず、結果が出たのはその逆の方だった。もしかすると季節が進んで、川に流れ落ちるミミズの量が増えた影響でヤマメの食性が変わっていたのかも知れない。こんな風に、その日その日の条件によって変化するのも釣りの奥深さである。

 今回ボクは、たまたまミミズをハリに刺すことで答えを出したが、ボク以外の釣り人のオリジナルな思考の中で生まれた、エサ・ローテーション以外の他の方法であっても答えが出たのかも知れず、そのパターンは多岐にわたる。
 しかし、導き出した答えは、気象や水流(潮流)、水位(潮位)、水温、気温といった環境面やタイミングによって常に条件が変化するから、同じことが続けて通用するとは限らない。このあたりが、あらかじめプログラムされたコンピューター系のゲームなどと大きく違うところだ。だから本気で釣果を伸ばしたいのなら、脳内に知識と経験とが詰まった沢山の引き出しを作り、常にそこから必要なモノが取り出せるようにしておかなくてはならないのだ。
 そんな釣りの奥深いオモシロさを若い世代にも理解してもらい、受け継いでいって欲しいとボクは願っているのだ。何せ日本の釣りや漁といった魚の捕獲技術や釣具は世界一と言えるのだから…。


■更に釣り上がる■

 次なる区間は、河畔に木立が茂り木陰が多いポイントだ。その区間ではポツリポツリと拾えたが、良型と呼べるサイズにはお目にかかれなかった。

 続いて段々に、階段状に落ちてゆく区間に入るが、これまた同様にポツリポツリと忘れた頃にアタリが出る程度の状況だった。
 その区間を釣り上がる内に、とある石裏の流れが緩い部分が気になった。

●石裏ポント●

 「如何にもイワナが居そうな…。」と思って仕掛を打ち込むと、大きくはないが、その通りの答えが出た。

●20cmチョイのイワナ●

 たとえ相手が小さくとも、予想通りの展開でゲットした瞬間は、自分の読みが冴えていると感じることができるので、気持ちの良さがある。


■好ポイントのハズが…■

 そうこうしている内に、退渓地点の堰堤が見えてきた。そこまでの間は好ポイントが続くうえ、前回は水位が高くて近寄れなかった堰堤直下にも今回は入れそうだから、期待は更に膨らむ。

●好ポイントの堰堤下●

 しかし、残念ながら前回に尺オーバーを獲ったポイントは水量が減って好ポイントとは言えない状態になっていた。
 気合いを入れて望んだものの、期待は見事に裏切られ、小型がポツポツとアタるのみだ。日は高く、明るく注いでいるうえ、減水しているとは言え、いくら何でもこんなにアタリが少ないのは、ここが入渓し易い区間故に、前日の土曜日に散々叩かれていたのかもしれないし、もしかするとボクが釣り上がってくるまでの間に誰かが頭ハネをしていたのかも知れない。

●リリースサイズのヤマメ●


■堰堤直下■

 得るモノがないまま、ついに堰堤直下に到達する。アタってくる渓魚が少ないという予想は既に立っていたので、攻めに更なる慎重さと丁寧さが必要になる。

●堰堤直下●

 セオリー通り「下流から、手前から」を守ってじっくり攻めてゆくが、少ないアタリを何とか捉えても小型しか出てこない。

●またもや、リリースサイズのヤマメ●


 誰もが竿出しするような所ではアタリが出ないので、オモリを重い3Bとして、堰堤から落ちてくる流れが作り出す、泡の中を攻めてみることにした。根掛かりは多発しそうだが、流れに弾き飛ばされずに泡の下ですぐに馴染ませるにはこの方法しかない。
 予想通り、油断をすると根掛かりするが、それでも攻め続け、底をオモリが叩くように流していると仕掛の動きが止まり、それと同時に目印が引き込まれていった。
 引きのスピードと質から、相手はイワナだとすぐに理解できた。この区間に入る時点でいつものように8mの長竿に交換していたので、明らかにこちらが優位となる。
 因みに竿は長い方がショック吸収性に優れる。しかもキレイな円を描くように胴の部分から、じわりと曲がり込む竿の方が、こと取り込み性能に関しては優れている。但し、反面に操作性は落ちるが…。

 難なく引き寄せに成功し、無事玉網に収まったのはイワナで、これまた残念にも尺にはほんの3mm足りないサイズだった。

●30cmのイワナ●

 そしてその後はアタリが途絶え、期待はずれのままでこの区間の釣りを終えた。


■最下流へ■

 堰堤から退渓した後は、どこに行こうか散々迷ったが、この川では恐らくヤマメが棲息する最下流部にあたるところに入ってみることにした。

●最下流部の区間●

 ここでは、産卵期に入ったウグイの連発が始まった。それも30cmオーバーがかなり混じるので、やり取りが大変だ。
 何とかヤマメのアタリを捉えても、20cm級一匹がやっとの状況だ。

●20cm級のヤマメ●


■結局同じ場所へ■

 状況が好転しないまま、釣り上がって行くが、刻々と残り時間が減る中で、結局シビレを切らしてしまう。
 そこで前回フィニッシュした「渦巻く淵」で竿を出し、そこでダメなら諦めるつもりで移動する。(何とも節操がない話だが…。)
 前回は藪漕ぎしなくては到達できなかったが、水量が減って川沿いを歩きながら移動でき、その面では助かったが、明らかな減水は食い渋りを意味するので喜んではいられない。そしてポイントに到達するが、様相が変わっていることに驚いた。

●水流に変化が…●


 最後の一粘りをして、丁寧に攻めるが、ここはウグイの巣窟となっていた。
 「かけ上がりでウグイ」、「流れの脇でウグイ」、「渦の中でウグイ」、「ミミズでウグイ」、「ギンパク(オニチョロ)でウグイ」、「クロカワムシでウグイ」、何をやってもウグイのオンパレード。それもド派手な婚姻色に染まった大型のオスがほとんどなので、ほとほと疲れてしまう。

●婚姻色に染まる雄のウグイ●

 しかも、釣り上げると放精する姿は同じ男?として、やりきれなさを感じて更にガックリと来てしまう。

 「時間もないので、あと5投でヤメよう。」と心に決め、クロカワムシと途中で必死で捕まえたオニチョロとを交互に刺し替えつつ、1投、2投と繰り返すが、同じ状況だ。続いて3投目、クロカワムシが残ってきた。
 「ン?」と思いつつ、そのままのエサで4投目。渦の中で馴染んだ途端、目印が引き込まれてゆく。
 合わせた瞬間にソレと判る引きだった。「本日最後の一匹」とばかりに慎重なやり取りを繰り返し、無事に取り込んだのは本日2位のヤマメだった。

●28cmのヤマメ●

 「最後っ屁としては上出来」と喜びつつも、ついつい悪いクセであるスケベ心が沸いてきて、更に5投を追加したが、結果は元通りのウグイ地獄で終焉を迎えた。


■一日を終えて■

 一日を終えて振り返ると、「魚も生き物なら川も生き物」であり、「同じことは通用しない」とは判っていても、前回とは違った展開に苦労の連続だった。
 特に前回あれほど当たった「ギンパク(オニチョロ)」の効果はほとんど感じられず、だからと言って、他の当たりエサもなかった。やはり相手が自然界に棲息する生き物である限り、自分側の理屈でパターン化できるほど甘くはないのだ。
 それでも食い渋る中、好調だった前回に比べて釣果が2割減に収まっていることは自分の上達を感じた瞬間でもあるのだが…。
 まぁ、うぬぼれはさておき、今回の成績は「柳の下にドジョウはそこそこ」といった表現が適切なのだろう…。
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ヤマメを追って

2011-06-11 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■久婦須川へ■

 ボク好みの対象魚は引きのスピードが速い魚だ。磯釣りだとチヌよりグレ、それも最速の尾長グレが釣りたいし、船から狙う魚だとマダイよりも青物、その中でもヒラマサが釣りたい。だから渓魚の場合はイワナよりもヤマメ&アマゴの方がボク好みになる。

 以前にも書いたように例年であれば、6月中旬までは岐阜県の最北部を流れる高原川に的を絞り、ヤマメを狙って釣行を重ねていたが、腕がないのか?巡り合わせが悪いのか?、ナゼか年を追うごとにヤマメの釣果が減り、イワナが中心の釣果が続いて少々不満気味だった。
 更に今シーズンは低水温傾向が続いて、例年になくヤマメの動きが遅かったが、それを承知で釣行を重ねる中、ここに来てようやく復調の兆しがあって安心し始めたところだった。
 「今度こそ大型のヤマメを」と、今年4度目の釣行計画をたてていた矢先、そんな高原川に追い打ちがかかった。例年になく早い台風の影響と梅雨入りが重なって、山に残っていた大量の雪が一気に溶け始め、再び低水温傾向になったのだ。そして気付けば、6月に入ったというのにイワナ中心の釣果に逆戻りしていた。
 この川のロケーションが大好きなことは変わりなく、今後も諦めるつもりはないのだが、こうなるとヤマメ欲しさに「浮気の虫」が騒ぎ出す。そしてとうとう、例年よりも2週早い段階での富山県を流れる久婦須川への釣行となったのである。


■白鳥名物■

 ボクの自宅のある兵庫県西宮市から富山県へと向かうには通常だと北陸自動車道を通って現地へ向かうのだが、今回はとある事情があって、岐阜一宮から東海北陸道を経由しての移動になった。とある事情とはエサの購入ためである。

 渓流釣りに使用する釣りエサは、ミミズ、ブドウ虫、イクラという、多くのエサ店で手に入る「市販エサ」と、川の中に棲息するモノを基本的には現地採取する「川虫」類とに別れる。
 特に川虫類は普段から魚達が日頃から食い慣れているだけあって、アタリの数が多く拾えることが多い。しかし、その川の生息場所を熟知している釣り師は例外として、ボクのような流浪の釣り人では時期や川の流れによっては現地採取が難しい日もある。そんなアテが外れた日は、一日の展開が大きく変わることすらあるのだ。だから「安定供給できる手段があれば」と思うのは、ボクだけではないハズだ。
 そんな釣り人のニーズを受けてか、渓流釣りの本場の一つである岐阜県の郡上八幡市周辺のエサ店には川虫を市販する店もあるのだが、24時間営業をする店が少なく、我々のように他方面からやって来る釣り人には利用し辛い状況下にあった。
 そんな中にあって岐阜県、白鳥インターチェンジの出口近くにある「めだか釣具店(0575-82-3281)」では自動販売機で24時間対応しているので、近頃ボクはよく利用している。

●めだか釣具店の自動販売機●

 調べれば、この自動販売機は釣り人以外のH.P.などでも紹介されているくらい有名らしく、半ば名物と化しているそうだ。
 取扱内容も充実しており、季節やその日の採れ具合によって「キンパク」、「ギンパク(オニチョロ)」、「クロカワムシ」そして「ヒラタ」など多彩だ。

 白鳥経由であれば北陸道出直接向かうルートよりも約30kmの追加となるが、エサが現地で採れるかどうかの不安を払拭するには安いコストだと思う。しかし高速道路¥1000上限が撤廃され、夜間割引のみとなる今後は、判断が微妙になるだろう。


■実釣開始■

 事前にインターネットで調べた久婦須川、小長谷地区の水位は約1m高い状態になっていたので、念のために、この川の年券購入でいつもお世話になっている地元釣具店(桐谷釣具店076-455- 2751)に問い合わせてみた。
 結果は「水位は高いが釣行可能」ということだったので釣行を決意したワケだが、ボクが経験した中では最高の水位での釣行だった。

 現地に着いてみると、情報通りの状況だった。流れはキツく、濁りは少々あるものの、釣りに支障が出ない範囲なので一安心。河畔に降り立ったのは午前5時頃だったが、曇り空に加えて朝靄が立ちこめる中でのスタートだった。

 
●どよ~んとした空気感が漂う河畔●

 ボクの入渓したところは川沿いに出るとすぐにポイントがあるのだが、ザッと見回しても地形的にそんなに変化がなく、水深も浅いこの辺りは、釣り慣れた人には見分けがつくポイントなのかも知れないが、渓流歴が浅い人にとっては、恐らく判断がつかないと思う。かく言うボクも、初めてこの川を訪れた際に、たまたまヤマメがライズ(水面に向かって捕食行動をとること)する姿を見掛けたから気付いただけのことだ。
 ただし、川底をゴソゴソやると他の地区よりもクロカワムシの数が多いように感じるから、どうやらヤマメ達にとってはエサ場になっているようだ。そのためか明るくなってしまうとほとんどアタらなくなる。(特に晴天時は顕著だ。)

 複雑な流れではないので、ハリ上30cmにやや軽めのジンタン2号を打ち、仕掛の投入を開始する。そして数投目、対岸のアシ際を流す仕掛に反応があった。ほどよい抵抗を味わうが、さほどのサイズでもない。難なく玉網に収まったのは久婦須川らしい体高のあるヤマメだった。

●ファーストヒットは22cmのヤマメ●

 薄曇りが幸いしたのか、この区間での釣果は続く。

 この日に用意したエサは「クロカワムシ」、「ギンパク(オニチョロ)」の川虫系と、「ミミズ」、「ブドウ虫」の市販エサ系だった。後述するが、それらのエサに対するヤマメの反応には明らかな傾向があった。

●クロカワムシ●

●ギンパク(オニチョロ)●


 周囲のポイントらしき部分から同寸クラスを3匹抜いた後は、ピタリと辺りが止まった。この久婦須川でのエサは、川虫であればクロカワムシが定番になるが、そればかりでは魚の目が慣れてしまうのか、釣りきることはできないと思う。そんな時はエサをローテーションさせることが必要になるが、この日も今までと同じように、クロカワムシからミミズにまず刺し替えてみた。
 そして、気になった対岸のアシ際にある石裏のポケット部に投入する。

●アシ際にある石裏のポケット●

 しかし、反応はない。そこで今度は「ギンパク(オニチョロ)」に刺し替えて、もう一度同じ場所に投入する。
 ギンパクが後回しになったのは、単にボクとの相性が悪いからであり、これまで幾度となく使用したが、イイ思いをしたことがないからだ。しかし、この日はナゼかひらめきがあって上述の「めだか釣具店」で購入しておいたのだ。そしてこのひらめきは大いに当たった。

 石裏にジンタン1号を一つ打った仕掛をウマく滑り込ませ、ポケットと本流の境にできる筋に仕掛が入った途端に、目印がこれまでにない反応を示した。
 アワセるとすぐに良型と判断できる引きが竿を絞り込む。それを慌てずイナして取り込んだのは27cmほどのヤマメだった。
 
●27cmクラスのヤマメ●

 釣りを長年やっていると、このエサ選択のように、何気ない勘であるとか、思い付きとかから何かを感じてひらめくことが時たま起きるが、それは、ボクのDNAに刻まれている、太古の昔より祖先から受け継いだ野生が呼び覚まされる瞬間なのだ。と、大袈裟に書いておく。その真偽はともかく、当たったときの喜びは、ボクが長きにわたって釣りを続けられる大きな要素の一つであることは間違いない。
 そして後に気付くが、この時点でギンパク(オニチョロ)の有効性を理解したことが、この日のボクを勝利に導いたのだ。


■灯台下暗し■

 幸先良くスタートしたことに、気をよくして徐々に釣り上がってゆく。いつもより移動に時間が掛かっていたが、この日は時間を掛けてポイントを攻めることにしていたので、それも納得の上での行動だ。
 以前にも触れたが、釣りをしない人には「ノンビリ釣り糸を垂れている。」と思われがちな釣り人の気質は、実はせっかちでいつもピリピリしていることの方が多い。それに加えて、自分が立つフィールドの中であれば先端へ先端へ、沖へ沖へと行きたがる、一種の「我先に」心理がつい働いてしまう。それが渓流の場合は対岸へ対岸へ、上流へ上流へと向いてしまうのだ。
 しかし、落ち着いて行動している場合は、それまで見えなかったモノが見えて来るものだ。この日はそんな目で見ていたから、手前側にある、そう大きくない石裏にも魚が着いていそうに思えた。

●川岸からの距離は1mほど●

 そこに仕掛を投入すると、すぐに答えが出た。そう大きくはないがイワナだ。

●20cmのイワナ●

 「灯台下暗し」とはこの事である。慌てずにこういったポイントを丁寧に攻めることの重要さを知った瞬間であった。


■当日最大魚?■

 次のポイントは、やや川幅が狭まって深瀬になっており、その流芯に強い流れの筋ができているところだ。

●泡立ち波立つ流芯●

 まず、始めに流芯の両サイドにある流れの緩い部分をジンタンオモリ1号を着けた仕掛で探って22cmクラスを追加し、それからオモリを2Bに打ち替えて流芯の際を探り始める。
 丹念に探ってもアタリが出ないので、ハリに刺していたエサをそれまでのクロカワムシからギンパク(オニチョロ)に交換して、更に仕掛を打ち返してみると、コレが功を奏したのか明確なアタリが出始めるのであった。

 まず最初は、そこそこ良型のヤマメをゲット。

●25cmのヤマメ●

 続いて流芯が流れ込み始める頭の脇にある「一等席」を攻めるが、上席に居るヤツはやはりデカかった。
 アタリと共に竿が絞り込まれる。流芯を超えた向こう側で食わせたのだが、しばらくの間はその位置でやり取りを繰り返す。しかし、ボクの足元まで寄せてくるには一番流れの速い筋を越さなければならない。そこで、ある程度相手の体力が消したら、一旦下流に下がって流れの勢いの落ちたところで流芯の筋を超えさせる作戦が頭に浮かぶ。
 頃合いを見計らって下流に移動し、それまで上流側にテンションをかけ続けていた竿操作を円を描きながら、徐々に徐々にと左へ回す。
 しかしである。この時、一瞬テンションが緩んだことを相手は見逃してくれなかった。こちらとの間合いを計っていたかのように、そのタイミングで一気に走られ、その魚は「見果てぬ夢」の一部となってしまったのだ。
 そしてバラシでポイントが荒れたのを機に更に上流へと移動する。


■定番のイワナ■

 次なるポイントは、毎年、尺前後のイワナを釣っているポイントだ。しかし、過去経験した水位よりも40cmほど高い水位の状況下では、広い瀬からの落ち込みを狙うだけに厳しいかも知れない。
 そして到着すると案の定、ポイントの数が激減していた。
 
●狙いは石裏の一箇所のみ●

 しかし「居るところには居る」もので、いつものように良型のイワナが登場するが、残念ながら尺には届かなかった。
 
●28cmイワナ●


■順調に伸びる釣果■

 その後も順調に伸びる釣果に支えられ、気分が良いまま釣り上がってゆく。

●26cmほどのヤマメ●

●28cmほどのヤマメ●

 そして気付けば、区間の最終局面へと突入する。
 いつもなら、対岸に渡ってそこから竿を振るのだが、今回は増水しており、渡るルートが絞られているから、事前に脳内で充分にシミュレーションし、ルートを描いてから慎重に渡らなくてはならなかった。


●この瀬を渡って対岸に●


■最終区間■

 最終区間が見渡せる位置に立つと、そこからは2人の釣り人の姿が見えた。様子を伺うと既に竿を振り込んでいて、そこで幾らかの時間を過ごしていたように感じたが、その2人は釣り上がってきたボクの姿を見ると、竿を畳んで引き上げの準備を始めたのだ。
 うっかり「頭はね」をしたことに気付いたための遠慮なのか、それともここから釣り下ろうとしていて、ボクの姿を見て「釣り下って攻めても無駄だ」と思ったのかは判らないが、このような局面であっても、こちらを無視して釣り続けたり、釣り下ったりする人も多い中、とにかくすぐに姿を消してくれたことはマナーを守ろうとする心の現れでもあるから、こちらも気を悪くする必要もない。釣り人同士で互いに譲り合って、この日のように気持ちが良い1日が過ごせるように努力したいものだ。

 この区間に差し掛かると、いつもボクは、それまで振っていた6mの渓流竿から、8mの本流竿へと持ち替えるようにしている。それは周りに木々が少なく開けているから、ポイントとの距離を充分にとりたいということと、堰堤下に入ると物理的に届かないポイントもあるからだが、それとは別に広い河原で長竿を振るのは感覚的に気持ちが良いという側面もあるし、気分転換にもなる。

 長竿をブン回しつつ、釣り上がってゆくと、さっきまで2人組が攻めていたポイントに差し掛かる。初めのうちは石裏を攻めていたが、やはり釣り切られていたのか、全く反応がない。そこで、石の手前の早い段階で仕掛が馴染むように、やや重め2Bを打ち、この日のパターンであるギンパク(オニチョロ)にエサを差し替えて、石の表=水が当たる上流側にある「ウケ」と呼ばれる部分を重点的に攻め直してみた。
 何度か打ち込んでゆく内に、流れに乗った仕掛がウケに到達し、落ち着いた動きを示す。それと同時にピタッと目印の動きが止まり、続いて少し沈み込んだ。ここは攻められていなかったのか、魚が残っていたようだ。
 
●石の前がポイントだった●

 すかさずアワセを入れ、グンッ!と竿に重みがかかった瞬間に型の良さを感じて、慎重にやり取りを開始するが、相手は流芯部に入って更なる加速を試みようとする。
 しかし、使っているのは長竿なので、こちらの心理に多少なりとも余裕があった。少し岸側に移動できるスペースがあることが判っていたので、その浅瀬を伝って下流へと移動して、こちらがやり取りするのに有利な場所へと移動しながら、同時に相手を誘導する。
 そこまではこちらのペースで攻めることができたのだが、相手も「勝手知ったる自分の庭」だ。今度は、下流側にある瀬に入っての加速を狙いつつあるようだ。
 これ以上ボクが下流に移動して相手の攻めをかわすのは、自分も一緒に瀬に乗って流れて行くことを意味するので、この場に立ち止まるしかない。
 そこで一か八か、上流側に竿を倒して思いっきり締め上げるように竿を絞り込んでみると、竿のパワーに負けた相手がこちらの動きにある程度順応するようになった。そしてその後は何度か水面に顔を出すが、その度に潜るを繰り返す。しかし、その度に相手が空気を吸って徐々に弱ってゆくのを感じていたので、頃合いを見計らって一気に寄せて玉網に誘導し、無事に取り込んだ。
 「ギリギリだけど、今年初の尺オーバーだ!」と心で叫ぶ。それは、興奮と安堵を同時に感じる瞬間だった。

●今年初の尺ヤマメは31cm!●

 更に釣り上がり、そこから上流の区間も既にある程度攻められ、魚が抜かれていたのか、反応が鈍い。そうこうしている内に気付けば最終地点の堰堤下に到達しようとしていた。
 この先にあるポイントでは、昨年33cmを仕留めているだけに期待は大きい。

●大場所である、堰堤下●

 しかし、ここで問題発生!。
 ここではポイントに向かって竿出しができる立ち居位置が、それまでとは逆の対岸側にあるのだが、増水による押しの強い流れが発生して、どのルートを辿っても渡河できそうにないのだ。

●足元はこの通り●

 「まぁ、ここは無理をせず、核心部の攻めについては次回以降に持ち越すことにしよう。」
 と判断し、危険のない範囲で立ち止まり、そこから長竿を駆使して届く限りのポイントを攻めてみる。
 どうやらさっきの2人組はここまでは来ていなかったのか、はたまた使用していた竿が短かったのか、魚を釣り切っておらず、ここではそこそこサイズを3匹追加することができた。
 

■下流へ■

 堰堤直下を諦めた後は一端退渓し、下流部へと向かう。
 ここまで充分な釣果を得ていたし、雨も降り出したことから、これ以上の増水は危険を伴いかねないので、この区間は間を飛ばして核心部のみで竿出しするつもりで河畔を遡行してゆくが、この区間も増水のために移動が困難になり、文字通り行き詰まってしまう。
 そこで仕方なく河原に笹や樹木が生い茂りジャングルのような藪の中を「藪こぎ」しながら更に上流へ突き進んでゆくが、コレがまた辛いのなんのって…。

 ヘトヘトになった後にようやく到達したポイントは、増水気味だが見るからに期待を裏切らなさそうな様相を呈していた。

●見るからに条件の整ったポイント●

 丹念に探りを入れながら、仕掛のオモリを調整するが、水深がある割には渦巻く部分と流芯との境目に仕掛が吸い込まれるので、打つオモリをジンタン1号として投入を開始する。
 一匹目はそこそこサイズだったが、クロカワムシからギンパク(オニチョロ)に替えた途端に、またまた大当たりのヤマメが登場した。
 コイツも結構抵抗を繰り返すが、こういったポイントでは水深があるために魚が走っても糸が石に当たることもないので強気のやり取りができる。
 主導権を与えず長竿を思いっきり締め込んでやることで相手を弱らせる。そして頃合いを見計らって一気に浮かせて玉網に誘導し、無事取り込みに成功する。これまた尺近いヤマメだ。

●「泣き尺」30cmジャストのヤマメ●

 その後もしばらく粘ってみたが、ここでは計3匹抜いた時点で渓魚の気配が無くなり、それを機にこの日の釣りが終わった。


■一日を終えて■

 この日は増水気味で、入れないポイントも多かった。しかし、考えようによってはその増水がヤマメの食いを良くしたのかも知れないので、一方的な残念感を抱いてはダメなのかも知れず、判断は難しいところだ。
 それにしても驚かされたのは、この日の当たりエサだ。何しろ上位5匹がギンパク(オニチョロ)による釣果だったのだ。
 しかし、このエサ選択が次回にも有効なのかどうかは判断できない。というのも、昨年同時期に釣った33cmを含む良型全てがクロカワムシによるモノだったし、過去には市販エサのミミズに良型が集中したことが何度もあるからだ。
 結局「何が有効か」は当日になってみないと判らない。しかし、それを探し当てるのもコレまた釣りの楽しみなのだ。釣りとは本当に奥深く罪な趣味である…。
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導火線に火が着いた高原川

2011-05-28 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■ようやく本格スタートの高原川■

 厳しかった今冬の影響なのか、聞こえてくる話は不調という言葉しかなく、実際に訪れたボク自身の釣果も空振り続きだった高原川。漁協に対する良からぬ噂を立てる者も一部に現れるなど、ロクなニュースが流れてこなかったが、いつもお世話になっている地元の釣具店=宝フィッシングさんの情報では、5月も中盤の大水が出た後にようやく本格的に釣れ始めたとのこと。それを受けて早速釣行と相成った。


●夜中の1時過ぎ、峠の気温は17度を指していた。●


 但し、川の状態はベストではない。大雨に雪解けの雪代が加わった増水の後は、やや高止まりしたままであるうえ、当日午後も天気予報では降雨の予報が出ており、更なる増水を考慮すると「勝負は午前中になる」と初めから予想していた。運のないボクのことだ。果たしてその短時間の間に復調の恩恵は受けられるのだろうか…。


■予想通りの増水■

 朝一番は、今まで何度か入ったことのある、葛山の堰堤から釣り上がることにした。これは上記したような増水傾向から、ある程度予想がつく区間でなければ、更に増水した際に危険が伴うという予想があったためだ。それに、前回、前々回と減水のために潰れていたポイントが復活している可能性が高いことも要因の一つだった。


●スタート地点の葛山堰堤前●


 早速入川するも、予想通りの増水で川幅は前回に訪れた際の3倍くらいになっている。しかも雪代の影響で川はやや白濁気味だったが、前回に訪れた際に感じた川の冷たさは無くなっており、その分だけ期待が持てそうであった。


●増水傾向の高原川本流●



■いつものポイントへ■

 スタート時点での反応は薄く、「またやってしまったのか?」という感もあったが、やがて昨年にヤマメをまとめて抜いたポイントへと差し掛かった。
 様子を見ると、水位がほどよく上昇して窪みの中で渦を巻き、見事に復活しているではないか!。


●チョッとブレた写真だけど、いつものポイント●


 早速仕掛を投入開始したが、増水の影響で今までとは逆にポジション取りが難しく、持ち込んでいた7.5mの竿ではヒジを伸ばした片腕で保持するという、無理な姿勢をとらないと届かない距離になっていた。
 腕がツリそうになりながらも仕掛を投入し、なんとか渦の中で馴染ませる。仕掛が渦の中で1周するまでの間に、アタリを捉えることに成功。しかし、無理な姿勢のおかげでアワセが遅れたせいか、1匹目のヤマメは水面から抜こうとした瞬間にハリハズレで逃してしまう。
 ガックリうなだれながらも投入し続け、何とか次のヤマメは無事に取り込めた。続いて小型のイワナが続く。
 

●高原川らしい体型のヤマメ●



●18cmほどののイワナ●


 サイズは大したことはないが、今シーズンの高原川では初めてのまとめ釣りに気をよくして更に釣り上がってゆく。


■押しの強い流れ■

 魚の反応が一段落ついた後は移動し、更に釣り上がってゆくが、思った以上に流れが強くてポイントが少ない。特に流れ込みのようなポイントは、水量に押されて流芯とその脇との流れの差があまり付かなくなってポイントが潰れていることが多く、投入した仕掛が落ち着かない。更には、この季節にしては低い水温のせいか、流れの速い部分には魚が入っておらず、自ずと大石裏の淀み狙いの方が成果が上がりそうだ。
 そして如何にも魚が着いていそうな石裏を見付けては、ソコに仕掛を打ち込み、シツコク粘ってみることにした。


●「如何にも」なポイント1●


 狙いは的中し、マズマズのサイズのイワナをゲットする。しかし、その姿は無惨にも尾ビレの一部がカットされていた。これは去年にも書いたことだが、フライ・フィッシング界の一部に居る自称愛好家によってカットされたものと聞いているが、しかるべき機関が行う学術的な調査ならいざ知らず、個人でやることに何の意味があるのだろうか?。カットされたヒレの回復は放流魚の例を見れば判るが、そう簡単なものではない。これだけ大きくカットされれば尚更のことだろう。


●尾ビレがカットされた25cmのイワナ●


 押しの強い流れが続く中、ここまで石裏を中心に狙ってそこそこ数を稼いできたが、ようやくボクの好きなタイプの、力強いハッキリとした流れが深瀬に流れ込み、その周りに引き込まれるような流れが生じているポイントに到達した。


●「如何にも」なポイント2●


 丹念に下流側から攻めてゆくが、このような誰もが狙うポイントは前日の土曜日に攻められて居るであろうから、反応は薄い。そして、空からは事前に予想していたモノよりも大きな雨粒が落ち始め、同時にやや強い風が吹き始めた。
 そこで3Bオモリを打って風に対抗させるがそれでも流し辛いので4Bに打ち直し、オモリが根掛かりしない程度のテンションを掛けて底を転がすようなイメージで仕掛を流してゆくことにした。
 この作戦が当たって1匹目は20cmほどのイワナだったが、続いて久しぶりにヤマメをゲットする。


●20cmのヤマメ●


 このポイントでは結局3匹ゲットした後に移動し、再び石裏狙いの区間に入る。
 降り出した雨と共に気温が下がり始め、寒いことこの上ない。それと同時に各ポイントでの魚の反応が鈍くなってアタリが渋くなってくる。それでもイワナは低水温に強いのか、なんとか食い込んでくれるが、ヤマメらしき魚はアタリがあってもハリに乗らない、もしくはやり取りの途中でハリハズレが連発し始める。

 ここまで使用したエサはミミズと川虫類だったが、特にアタリが多いのはクロカワムシとキンパクの2種類だった。


●クロカワムシ●



●キンパク●



■今季初の尺オーバー■

 明らかに下降する魚の活性を感じつつ釣り上がって行く内に、気付けば区間の最終地点が近付いていた。残りポイントが少ない中、その近くにある、とある石裏ポイントに目が向いた。このポイントは大石の裏に、もう一つ二回りほど小さい水没した石が見え、その石と石との間が「如何にも」な雰囲気を醸し出していた。
 強風対策で打っているオモリが大きいので、直接仕掛を打ち込むと、着水音が伝わってそこに潜むであろう魚に警戒されそうだ。そこで奥側に打ち込んだ後に引き込むイメージで仕掛を馴染ませてみることにした。


●「如何にも」なポイント4●


 この作戦が一発で成功し、目印の動きが止まると同時に「ゴンッ!」という衝撃がボクのロッドを襲った。
 スピードはないがトルクのある引きから容易に相手がイワナだと想像できたが、サイズはそこそこありそうだ。
 天候具合とアタリの遠退き具合からこれが本日のラストチャンスだと思い、逃したら後がないことが判っていたから、やり取りは慎重になる。
 何度か空気を吸わせて充分に弱らせた後、無事玉網に誘導したイワナは尺を少し超えていた。ホッとしたのも束の間で、そう喜んでも居られない。ナゼならこれまた尾ビレがカットされていたのだ。


●尾ビレにカット痕のある31cmのイワナ●


 その後も同じ石裏を攻め続けたが、大きめの魚にはナワバリ意識があるのか、一等地ポイントに「二匹目のドジョウ」のイワナは居なかった。
 程なく最終地点の芋生茂(おいも)橋に到達したが、この下にあったハズのポイントも増水のために消滅しており、何も手だてが打てないまま、退渓を決意した。


●芋生茂(おいも)橋●



■最後っぺ■

 退渓後は車で移動しつつ各ポイントの様子を覗いて回ったが、降り出した雨により更に上昇した水位の影響で、ほとんどの区間で釣りにならない状況に陥っていた。
 唯一何とかなりそうだったのが景勝地の杖石(つえいし)裏だった。早速竿を出してみたが、ブッ飛ぶ流れに仕掛が馴染まず苦労の連続だ。


●杖石裏のポイント●


 それでも何とか仕掛が落ち着くところを見つけ出し、イワナを1匹を追加する。


●24cmのイワナ●


 その後も少し粘ってはみたが、続く魚は居なかった。
 釣果が20を超えていることもあって、この魚を機に「これ以上の続行は危険」と判断し、高原川を後にすることにした。


■本番はこれから■

 帰り際に立ち寄った宝フィッシングさんの話では、遅れに遅れていた渓魚がマトモに釣れ出したのは、ほんの一週間前のことだそうだ。
 渓魚自体の「本番はこれから」ということであるらしいし、更には今年も鮎の解禁が遅れるそうなので、7月上旬までは充分渓流釣りが楽しめるということであった。
 釣行当日は前日に30℃近くあった気温が10℃以下に下がり、加えて冷たい雨の影響で急に水温が下がったせいか、釣果のほとんどが、より低水温に強いイワナだった。しかし、これから水温が上がればヤマメも本格化するだろうから、楽しみが増えるだろう。

 ここに来てようやく導火線に火が着いた感がある高原川の現況だった。今後は、遅れていた分だけ凝縮されて大爆発するのかどうかはボクには予想できないが、「そうあって欲しい」と願うばかりだ。
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春の荒城川

2011-05-14 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■荒城川へ■

 例年だと鮎釣りシーズンが始まり、人が大勢押し寄せて渓魚が釣り辛くなるまでの間は岐阜県最北部の高原川へ向かうのがパターン化しており、それに合わせてここ2年というもの入漁証は年券を購入していた。
 勿論、年券は元を取らなければ買う意味がないのだが、高原川の場合は5回以上行かないとそうならない。しかし、何度かレポートしたが、今年は不調であり、実際に体験した手応えでも釣果の本格化は1ヶ月は遅れそうな気配があったうえ、今回の釣行直前の情報では雨+雪解けの増水で厳しさは更に増していた。それを受け、思い切って釣行地を変えることにした。フトコロには厳しいが、採算は度外視して…。

 増水に強い別の河川を選択しようとアレコレ考えた挙げ句に浮かんだのが、岐阜県の小京都といわれる高山市の北部を流れる荒城川だ。

●荒城川の流れ●

 今までは夏に訪問することが多かった荒城川を選んだのは、たとえ高原川が大幅に増水していても山一つ挟んで南側を流れるこの川では、上流部にあるダムの方針の違いで流量の制限法が違うのか、増水量が幾分かマシなことが多いように感じるからだ。
 ただし、雪の多い地区を流れる川だけに、まだ水温が上がっていないこの時期にどういう結果が出るのかは判らない。各河川が混雑するであろうゴールデン・ウィーク真っ只中にあって、そうは迷ってもいられないので、ここは思い切って釣行することにした。


■増水した荒城川■

 釣行前日朝まで降っていた雨の影響を考え、アレコレ入渓場所を考えつつ高山市内を車で抜けていたが、弱いながらも寒気が入っており、現地に近付くにつれてヒンヤリとした風が流れていた。

●夜中の1時過ぎの気温は3℃●

 おそらく明け方には氷点下に下がっていただろうから、増水に加えてその影響もあるかも知れない。だから水深のあるポイントから攻めることを考えていた。水深があると言えば過去に攻めたことのあるこのポイントがまず頭に浮かんだ。

●夏に攻めたことのあるポイント●

 ポイントを確認すると、やはり水量が多く、押し出しの強い流れが吹き出すように走っている。
 まずはセオリー通り、下流側の淵尻にあるカケアガリから攻め始める。いかにも水温が低そうな様子から流芯よりも、そのサイドのタルミを重点的に攻めるが、アタリが出ない。しかし、時間がかかるのは初めから解っていることなので、ていねいにシツコク流してゆく。
 何度目であろうか?低層を攻めている仕掛の目印の変化をようやく捉えた。今年になってマトモなサイズの渓魚は掛けていなかったので、ほどよい抵抗が懐かしい。そしてゆっくりと玉網に誘導して1匹目をゲットした。

●27cmのイワナ●

 しかし、粘り続けるも、この1匹のみでこのポイントでの釣りが終わった。


■傾向と対策■

 下界では既に晩春に入っているが、ここ飛騨地方の山間部はまだ春が本格化する寸前であり、その傾向は魚が着くポイントにも現れている。
 水流が適当に見えても水温が低いために、浅いところからの生命感の伝播は皆無だ。それがキーワードとなって自身のポイント選びに確信を持つことが出来る。そのキーワードは、この時期には当たり前ではあるが、ある程度水深があってゆったりと流れる部分だ。

●4月末だというのに、桜はまだ蕾が膨らみ始めたばかり●


■連続ヒット■

 次に目が向いたポイントは一見水深がないように見えるが、石裏が大きく掘れ込んでいるポイントだ。

●目に見える石より下流は結構深い●

 石裏を丁寧に攻め続けていく内に流芯の脇にある流れの緩い部分で明確なアタリを捉えてイワナをゲットする。

●20cmチョイのイワナ●

 そして、やや流れの速い淵尻で待望のヤマメをゲット。そう大きくはないが、狙っていただけにウレシイ1匹だ。

●20cmチョイのヤマメ●


■大場所発見■

 次に入ったポイントは、付近では一番水深が深そうに見え、そこに上の瀬から流れ込む芯のある流れが中央を突き切り、その真ん中に大石があるという、誰が見ても解る「如何にも」なポイントだ。それだけに誰もが狙うポイントだろうと思うから、攻めには慎重さと丁寧さが要求されそうだ。

●大石の周囲と流れの白泡の周囲がポイントだ●

 ここでもセオリー通りに下流のカケアガリか攻め始める。ここで「なぜセオリーなのか?」を説明しておこう。
 渓魚は流れてくるエサを捉えようと、基本的には上流を向いて待ち構えている。当然視界は前方に開けているので、上流から攻めたのでは釣り人の姿が渓魚に見られ易くなる。一旦姿を見られると警戒心の強い魚たちだけに、以後の釣りの展開に悪影響を及ぼすのだ。
 したがって下流側、ついでに言うと釣り人の立ち位置から見て手前側から攻めるのがセオリーになる。しかし、これは絶対というワケではなく、諸説あるようだが…。
 ついでに言うと、この理論の下で多くの釣り人が移動するから、渓流釣りは「釣り上がり」が基本になるのだ。近年、人口が増えているルアー釣りでは、キャストできる分だけ制約が少ないせいか、「釣り下る」人も一部には居て、他の釣り人との間でトラブルが起きていると聞く。しかし、「ルアー専用区間」ならいざ知らず、様々なスタイルの多くの釣り人と共存しているのが現状なので、元からあるルールには従うのが筋だと思うのだが…。

●淵尻のカケアガリ部

 カケアガリ部の人頭大の石が点在する部分を流していると、目印が動きが止まってヤマメをゲット。先程のポイントよりもサイズがやや大きい。

●23cmのヤマメ●

 喜ぶ間もなく、エサのローテーションを交えて投入を再開するとポツリポツリとやや間の空く連続ヒットが始まった。

●25cmのヤマメ●

 因みに、使用したエサは…

●ブドウ虫●
  
●オニチョロ●
 
●ヒラタ●

 の他、ミミズと多彩であったが、釣れるエサに偏りはなく、目先を変えるために変えた瞬間にアタるということもあった。


■当日一番■

 一通り淵の後端周りを釣り切った後は、核心部である淵頭の大石周りを攻め始めた。
 まずは、奥側の川岸にポケット状の窪みがあって、そこを流れがグルグルと回る部分を発見したので、その中にオモリBを打った仕掛をブチ込んでやると、一発でアタリが出て、そこそこサイズのイワナをゲットする。

●26cmのイワナ●

 徐々に仕掛を投入する位置を石裏へと近付けてゆくが無反応。一目瞭然なポイントだけに、スレた魚を相手に執拗な攻めを繰り返す。
 エサをローテーションさせて反応を伺いつつ、仕掛を馴染ませる位置をオモリの重さと投入地点を調整して、徐々に相手を追い込むかのように距離を詰めてゆく。
 そして、何投目か、2Bのオモリを打ち、ミミズを刺して投入した仕掛の目印の動きに変化が出ると当時に「ゴツンッ!」とした反応が手に伝わった。

 引きのスピードが遅いので、イワナだと予測できたが、無理に食わそうとしてハリスを一回り細い0.2号に落としていたから慎重なやり取りになる。
 何度かのやり取りの後、顔を出した相手を見ると「今季初の尺モノか?」と思わせるサイズのイワナだ。
 空気を充分に吸わせて弱らせた後、無事に玉網に誘導し、メジャーを当てるが、何とも惜しい29cmだ。
●29cmのイワナ●

 やり取りに時間をかけたためにポイントが荒れてしまったのか、このイワナを釣った後は全く気配がなくなってしまう。しかし充分に釣り切った間があるので、満足したうえでこの区間での釣りを終えることにした。


■道端でヒョイッ■

 車で移動しながら、「ここぞ!」というポイントを探していたが、区間的には流れが速すぎて水温の低そうな当日の状況には向かないものの、ピンスポットとしては面白そうなポントを発見し、横着にも路上から仕掛を投入してみた。

●道端から見えるピンスポット●

 ここではすぐに反応があって、アマゴ(この川はヤマメ域だが、以前に放流していたアマゴの子孫)をゲットする。

●21cmのアマゴ●

 続いて投入を繰り返すが、連発はしないようだ。何度か後、諦め気分で何気なく回収しようとした仕掛の後方で、魚が反転し水中で「キラッ」と光る様子が見えた。その瞬間、猛スピードで走り出したが、ボクの立ち位置は川面から4mほど高い道路上なので竿が立てられない。こちらがアレコレと迷う間もなく流れの速い瀬に入ってしまい、更に加速した瞬間に仕掛が飛んでしまった。
 「初めから下に降りて釣っていれば…。」と思っても後の祭り。正しく油断であった。


■雪代の川■

 当日朝は気になるレベルではなかったが、時間が経つにつれやや増水し、川が更に白く濁るようになってきた。気温が上がって発生した雪解け水=雪代の影響である。
 この時点で正午過ぎ。まだまだ時間があるので、めぼしいポイントで竿出しし続けたが、午前中とは打って変わり、魚の活性が落ちてウソのようにアタリの数が減っていった。そんな中、貴重なアタリは3度あったが、いずれもアタリがマトモに出ないうえ食い込みが浅く、やり取りの途中でハリハズレ、もしくはハリ自体に掛からない状態で、納竿時間を迎えてしまった。
 午前中の17匹に対して、午後からはゼロ。走行するジェットコースターのような釣果配分であった。

●雪代の影響が強まった様子●


■本格化しつつあるものの…■

 「今年は遅れている」という話は、多くの川から聞こえてくる話であったが、完全本格化ではないものの、ここに来てようやく魚は動き出してきたようだ。
 「これからが本番!」と言いたいところだが、鮎釣り場も兼ねている河川では、残り時間は1ヶ月も残っていない。しかも、奥深い山々を流れてくる川では今冬の大雪傾向の影響を今後も受け続けて釣果が不安定だろうから、まだまだ注意が必要だ。それが更に痛いところだ。

●里ではようやく雪が消えたようだ●
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やはり変な高原川

2011-04-23 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
■高原川本流へ■

 高原川本流は全長7~8mクラスの竿を思いきり振れる里川並の川幅がありながら、河原から冠雪した北アルプスの山々が見え隠れするロケーションがボクにとっては最高に思えるから一番のお気に入りスポットなのだ。
 しかし今シーズン、ここからは「絶不調」という情報が聞こえてくるし、ボク自身が一度だけ試しに竿を出した際も実際にもそのような感触を得ていた。しばらくの間は現地から伝わる「全く回復していない」という情報に怖じ気づいていたり、「いざ!」と意気込んでも釣行2日前の大雨と雪解けで大増水があったりで、1ヶ月半近く釣行機会を失っていたが、それをようやく乗り越えてチャンスが巡ってきた。

                 
                         ●河原から見え隠れする焼岳●


 高原川では釣行前日に「成魚」の放流があったそうだ。釣行日にも「残り物」はあるだろうけど、ソレを狙っては奥飛騨までやって来ながら「釣り堀の釣り」をすることになるので、プライドが許さない。
 「ここでは天然魚を!」ということで、昨年4月半ばにイイ思いをした葛山地区で竿を出すこととして現地へと車を走らせた。しかし、前日午後から冷たい空気に入れ替わり、当日も冷え込むことが予想された。「寒の戻り」というヤツだ。果たして結果は吉と出るのだろうか…。

                 
                ●午前1時過ぎで気温は2℃、夜明けには更に冷え込むだろう●


■ほとんど水が無い!■

 当初に予定した葛山に到着し夜明けを待って行動開始。河原に降りてみた。
 事前に「平水よりもやや上昇気味」と聞いていた水量に期待していたのだが、3月初旬に試し釣りをしたときと変わらない水量にガックリと肩を落としてしまう。
 どうやら、川の水量バランスが昨年と変わって水位が50cmほど下がり、川幅は半分以下に変わっている。今年のこの地区は、この状況がスタンダードなのかも知れない。
 「ポイントになりうる箇所も減っているんだろうな~?」と思いつつ、竿を振り始めた。「しかし」と言うべきか「当然」と言うべきか、一級に思えるポイントを攻めても、竿を通して生命感が伝わってこない。

                 
                        ●好ポイントに見えるが魚は居ない●

 昨年、25cm近い山女魚や尺越えのイワナを釣ったポイントも完全に潰れ、アタリすら全くないままに釣り上がってゆく。やがて視界が広がり、そこから見渡す景色に唖然としてしまった。
「ほとんど水が無い…!」

                 
                        ●辺り一帯の水深は15cmほど…●

 この状況にガックリと肩を落とし、早々にこの区間を切り上げることにした。そしていつもお世話になっている地元エサ店の「宝フイッシングさん」へ情報収集に向かう。


■笹島地区へ■

 宝フイッシングさんの話では、一旦温かくなったものの、この冷え込みが効いて前日の成魚放流の魚すら食い渋ってかなり残っているということだそうだ。
 「ボーズよりもマシか?」と思い、「その放流箇所を狙おうか?」というスケベ心が沸きそうになったが、そこは我慢してというか、その実今から行っても場所が空いているハズもないので、当初狙っていたヤマメより低水温に強いはずのイワナ狙いに切り替えることにした。
 ボクの頭では高原川の本流では蒲田建設裏~今見あたりまでがイワナが割と多い区間だと記憶しているので、早速そこへと向かった。しかし、どの箇所も車が留めてあって入れそうにない。しばらく探した後に唯一空いていた笹島地区へと滑り込んだ。

 この地区に入って数投目、流れていた目印の動きがまるで根掛かりしたように止まった。「アタリかも?」と思った瞬間に竿を持つ首が返って反射的にアワセが入る。
 程なく上がったのは18cmくらいのイワナだ。
 「やっとボーズを脱出だ!」と思った瞬間、嬉しさに気をとられ長竿が木に引っかかって魚が宙づりになり、モタモタしている間に何とハリハズレをやらかしてしまう。
 しかし、「魚が居るぞ!」という感覚はこの日のボクに勇気?をもたらしてくれ、攻めに気合いが入った。キーワードは「石裏のポケットで出るであろう、弱々しいアタリ」だ。
 そんな感じで攻め始めていくと現金なのもで「良さげ」なポイントが幾つも見えてきた。

                 
                          ●笹島でのポイント・その1●

 程なく「目印が止まるアタリ」を再び捉えて、本日の「確実な」1匹目をゲットする。

                 
                           ●18cmくらいのイワナ●

 流すパターンを掴むと次はエサのローテーションだ。そこでキンパク、ミミズ、ブドウ虫と、エサをローテーションさせるが同じポイントを流していても決まってアタるのはキンパクだった。

                 
                           ●当たりエサのキンパク●

 流すパターンと当たりエサが判ると更に自信を持って流すことが可能になり、調子づくと共に魚のゲット数も伸びてくる。

                 
                          ●笹島でのポイント・その2●

                 
                             ●22cmのイワナ●

                 
                          ●笹島でのポイント・その3●

                 
                             ●25cmのイワナ●

 約200mの間で、アッという間に中~小型ながら7匹ゲットできたが、やがてピタリと当たりが止まってしまった。この区間を振り返ってみると、気付くことがあった。それは昨年とあまり様子の変わらない河原であったことだ。水量が豊富だった一昨年とは確かに違うが、川幅や水深が昨年とほぼ同じであり、そうであるからこそ魚の着き場の傾向もあまり変わらなかったのだろう。しかし、逆にそこから上流は様子が変わっていたからピタリとアタリが止まったのだと予想できた。
 
                 
                           ●昨年と変わらない様子●

 アタリが止まってからもしばらく釣り上がったが、やがて先行者が入ったであろう箇所の駐車車両を発見し、諦めがついて脱渓を決意した。


■平湯川■

 この時点で午後2時過ぎだ。まだ少し時間はある。
 「下流か上流か?はてさてどこへ行こうか?」と思いを巡らせる。水温の低さとアタリの出具合から想像して下流は時期尚早だと判断し、更に上流か支流を目指すことにした。残り時間の関係から本流部の上流で二又に分かれる蒲田川か平湯川の二つに絞ったが、今期絶不調ということと、元来人気河川だけに人が多そうだということから消去法で選んだ平湯川へと向った。
 しかし、ここにも人が多く、ピンポイントで一箇所竿出しできたものの、アタリは皆無のままでこの日の釣りが終わった。


                 
                             ●平湯川の様子●


■やはり変だ■

 僅かキャリア3年で「何を言うのか?」と思われるかも知れないが、今年の高原川の不調傾向を分析してみると…。

 大雪の影響が最大の原因だと思うが、それに加えてこの地方にも地震があって、その後に温泉の出具合に変化があったそうだから、特に不調が伝えられる蒲田川は、本来ならこの川の水温を上げてくれるハズである温泉水の流入量が変化したのかも知れない。恐らく以下の下流側もその影響が出ているのだろう。
 その証拠に釣れたイワナも色は悪くないものの、みんな細かったので、水温低下からくるエサ不足、もしくは魚自体の活性が落ちてエサをあまりとることができなかったのだろう。
 何しろ昨年にこの地域の土産物店で手に入った「タラの芽、コシアブラ」などの山の幸類は、今年はまだ店頭に並んでおらず、問い合わせると「例年よりもかなり遅れている」と聞いたから、その傾向は山全体に及んでいるのだと思う。
 それらの低温傾向に加えて上から見る限り水量不足の区間も多かったように思える。これは自然の力と人為的な河川の改修具合による川の変化にプラスして取水のバランスが変わったせいかもしれない。
 様々な要素から勝手な推測してみたが、やはり今期は、例年とはかなり傾向が違って「何か変だ」ということだけは確かなようだ。

 宝フィッシングさんの話によると、「漁協の調査では魚は居る」という結論が出たということだから、今の状態は「居るのに食わない」だけだということを願っておこう。
 そうであれば、水温と水量が安定すれば食い出すだろうから、それまでの間は我慢の釣りが続くであろう今年の高原川なのだ。



                 
                        ●平湯峠には、かなりの残雪が…●
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今季渓流初釣行

2011-04-02 12:30:00 | 渓流&管理釣り場での釣り
 実は、この記事を書いたのは東北・関東の震災以前だったのだが、書きたいことが他にあって保留にしていたモノだ。よって多少のタイムラグがあることをお許しいただきたい。


■スタートは高原川水系から■

 長良川のように2月から解禁されているところもあるが、大勢では3月1日から解禁するところが多いので、ボクの場合もこの日を渓流釣行のスタート日としている。
 過去2年は中国地方の川で過ごしていたが、今シーズンは思い切って岐阜県最北部の高原川水系をスタート地点とすることを以前から心に決めていた。コレは魚影の濃さは全国でも有数であるし、上流部の蒲田川(がまたがわ)には温泉からの温水が流れ込むのでスタートの時点からコンディションの良い渓魚が出るといわれていたからだ。
 しかし、そのことについては全国の釣り人が知っているワケだから、解禁初期には釣り人が集中するに決まっている。ここでいつものヘソ曲がりが出てしまって、この水系では最北に近い富山県境から流れる跡津川、その中の打保谷というところを目指すことにした。コレは昨年の同時期に、この地を訪れて好釣果を得ていた他の釣り人のブログを通じてチェックしていたから少し期待はしていたのだが…。

                
                     ●神岡鉱山跡を越える道は当然雪道だ●

 勿論、ここへのアプローチはこのシーズンであればスタッドレス・タイヤの装着は必須でもあるので、来る人も多少は減るだろうと思ってはいたが、今年発売の渓流専門誌にも巻頭で紹介されており、多少の不安もあった。案の定、神岡の鉱山跡を縫うようにウネウネと走る道をひた走り、入渓点と思しきところに到着すると、既にそこには金沢ナンバーの車がデン!と2台も駐車されており、少し下ったところからの入渓を余儀なくされてしまった。

                 
                        ●到着時には-6度を指していた●


■実釣スタート■

 スタート地点は入りやすそうなところの中で、他人の足跡が付いていないところを探したのだが、当然そんな場所は雪に埋もれながらの移動になる。しかし、そんなこともあろうかと安物ながら「かんじき」を持ち込んでおり、コレがかなりの効果を上げた。

                 
                             ●1980円なり●

                 
                          ●今年は、ここからスタート●

 いつも高原川での釣行時にお世話になる「宝フィッシング」さんの事前情報では、「水温が低く魚は動いていない」と聞いてはいたが、水温の低さは川に入ると、文字通り身に凍みて感じる。最初からは期待せずに第一投したが、そのとおりに川からは生命感が伝わらない中でのスタートになった。

                 
                   ●シブキが枝にかかると再び凍るほどの気温だ●

 勿論、この時期だから深い淵に居るであろう魚を狙うのがセオリーなので、そんな場所を重点的に狙い打ってゆくが、無反応。少し車で移動しながら「ここは!」というポイントで反応をうかがうが、どこも同じ状況だった。

 「はてさて」と困り果てていると、ちょうど漁協職員が鑑札をチェックしに来たので確認をしてみると、やはり全体的に状況は芳しくないとのこと。この時点で既に午前11時を過ぎていたので、この場を諦め、大移動を決意することにした。

                 
                     ●鉱山跡の上部から神岡町内を見下ろす●



■蔵柱川へ■

 「とりあえず1匹を…」との思いから、情報で好調と聞いていた蔵柱川へと向かった。この川は下流部は自然渓の様相が漂うものの、逆に中流部になると両サイドを護岸した里川になって、渓流釣りの趣はほとんど感じることが出来ない。

                 
                             ●こんな渓?相●

 どこでも簡単に入れる川だけあって現地に到着すると、釣り人の踏み跡が結構残っている。その雰囲気に「長居は無用」と思いつつも、気になるポイントを見掛ける度に仕掛を打ち込んでしまう釣り人の性が出てしまう。しかしながら本気にはなれず、横着にも川沿いの道路に車を駐めて道路上から仕掛を振り込むのだが、得てしてこんな時に魚は来るものだ。そんな釣りに本年初ヤマメが登場する。

                 
                           ●15cmの放流サイズ●

 続いて車で下る内にこんなポイントに差し掛かる。

                 
                      ●見るからに好ポイントだが、道路沿い●

 そして、ここでもややマシなサイズのヤマメをゲットする。

                 
                              ●でも18cm…●

 結局この川では6匹出たものの、キープできるサイズは4匹。わずかな釣果ではあるが、とりあえず翌日に家族で食う予定になっている天丼に入れる具の足しにはなりそうな量がキープできたので、もう少しサイズアップを狙って2度目の大移動を開始した。


■本流は…?■

 次に到着したのは高原川の本流だった。少し時期的に早いとは思うものの、他の候補地も浮かばず「一か八か」での挑戦だ。
 しかし、河原に入ってみるとビックリだ。周辺部の水位計を事前に調べた際には平水よりもややプラスだったにもかかわらず、昨年の訪問時に比べて水が極端に少ないのだ。

                  
                           ●水の少ない葛山の上流部●

 しかもポイントが潰れており、困惑してしまう。
 とりあえずそれらしきポイントに仕掛を打ってゆくが、無反応。やはりこの区間では時期が早すぎたということになるとは思うのだが、移動しながら仕掛を打ち込み続けても生命感が全く伝わってこない。まぁ、ここは4月以降に攻めるべきだろうと、早々に諦めてしまった。しかし釣果のことよりも1ヶ月経った後に水量が回復しているかが、気がかりなのだが…。


■蒲田川へ■

 こうなれば、たとえ人が攻めた後でも、仕掛や釣り方の工夫で少量なら何とかなるかも知れないと、温泉水による水温上昇に期待して「最後の賭け」をしに蒲田川に移動した。
 移動中に見下ろす蒲田川は「釣れていない」という情報が流れているからか、それとも午後の時間帯だからなのか、釣り人の姿はほとんど見えず、どこにでも入れそうな雰囲気だった。
 とりあえずヘリポート下の淵が空いていたので竿を出してみた。

                  
                             ●ヘリポート下あたり●

 やはり、というか案の定というか、ここにも生命感はなく、水は澄み切って如何にも水温が低そうに見える。そして「全くダメだ」という答えは簡単に出た。
 少し移動して竿を出してみたが、答えは同じであり、もう他に思い当たるポイントもないので納竿とした。

                  
                        ●帰り際に見える、新平湯方面の景色●
                  
                        ●貧果の後は、追い打ちの大停滞!●


■今期の高原川■

 今期の展望をうかがうために、ワイドに移動して探りを入れてみたが、事前の情報どおり、状況は芳しくなかった。
 帰宅後に漁協関係者のブログを見ると、あまりの釣れなさに、調査が入るということが書かれていた。同ブログによると、発電等の取水の増減と河川改修によって水量と水温が例年とは違っているうえに、解禁前から続く地震の影響も考えられるそうだ。
 勿論今回のボクの釣果はシーズン初期であるからこの結果だったのであり、4月以降の回復を信じているが、「もしかすると…」という事態が起これば年券が7000円もする川だけに残念さは割り増しになってしまう。まずはそうならないことを祈るばかりだ。
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渓流釣り ~今シーズンのまとめ

2010-10-09 12:30:14 | 渓流&管理釣り場での釣り
■今シーズンの成績■

 今シーズン中に仕留めた尺オーバーの渓魚は31~40cmのイワナが5本、31~33cmのヤマメが2本だった。生まれて初めて渓流というフィールドにデビューしたのが昨年だから、通算2年目、しかも今年度の釣行回数が9回しかない中でのこの釣果は、ボクとしては納得できる成績だ。
 成績上昇の要因を探ってみると、「仕掛の振り込み」「仕掛の流し方」といった動作や「ポイントの読み」といった洞察力には多少の向上はあったものの、大きな変化はなかった。反面の大きく向上したのが「魚が掛かった後のやり取り」だった。
 具体的に言うとポイントは2点あり、「最適なタックル選び」と、それを信頼しての「強気のやり取り」だ。
 次項で今シーズンの釣りを助けてくれた手持ちのタックルについて紹介しようと思うが、何しろこの釣り以外では30年近いキャリアがあるものの、渓流釣り歴は2年であるし、サクラマスやサツキマスのような海降型の超大型(40~60cmオーバー)ヤマメやアマゴを狙っているわけではないので、その分は差し引いていただきたい。また、本来はグレ釣り師のボクが見た竿の性能評価は、渓流釣り専門の人とは違った展開になるのかもしれないし、キャリアのある人には物足りないモノになるかも知れないことを了承していただきたい。ただし、これから(来年度から)渓流釣りを始めてみようかという人にとっては「同レベルから見た評価」ということで役に立つとは思うのだが…。


■ビビッド・トップ■

 昨年は他社製が一部混じっていたが、昨シーズン終了後にヤフー・オークション等で売りさばいて整理した結果、ボクが今シーズンに使用した竿は全てがシマノ製になっていた。これは元々ボクがシマノ党であるということもあるが、それよりも「ビビッド・トップ」という穂先が各モデルに搭載されており、その効果が絶大なことが大きい。
 「ビビッド・トップ」とはシマノ製の渓流竿の一部に搭載されている、極端に柔らかいソリッド製穂先のことだ。メーカーのうたい文句では「無抵抗感覚でくわえた餌を放さない」、「自在なテンションコントロール性」や「掛かった魚も竿の抵抗が少ないので暴れさせない」とあるが、何よりもボクが一番のメリットに感じていることは「ミミズ(キヂ)をサシエサに使ったときのアワセ易さ」だ。釣具店でいつでも手に入るミミズ(キヂ)エサは、持参し、使用する確率が高い。従ってこの恩恵にあずかる機会は多くなる。
 海でのチヌ釣り等でも同じだが、虫餌(海の場合はゴカイやイソメ類)のような細長いエサを使った釣場合、前アタリから始まって食い込むまでに少々時間がかかる。これは魚が一度端をくわえてから吸い込むようにして飲み込むからだと思われるが、こと渓流釣りの場合は穂先でアタリをとるため、穂先が硬いと魚が違和感を感じて放すことがあるように思う。その点「ビビッド・トップ」搭載モデルは従来型の穂先搭載モデルよりもゆっくりと食い込ます余裕が産まれるので、その点で非常に有利になる。ボクの場合はあらゆる釣りにおいて意図的に遅目のタイミングでアワセることが多く、ついそのクセが出てしまいがちなので、その意味でもこの穂先との相性は非常に良い。


                     
                         ●3本所有している「ビビッド・トップ」搭載モデル●


■翠隼60ZK■

 それほど奥深い渓流に向かわないボクが、川幅が10m以内の河川でメインに使用している竿だ。

                     
                               ●実勢価格¥32000前後●

 上述した「ビビッド・トップ」を搭載したモデルで、ボクの一番のお気に入り。「S中硬」という調子表示され、適合水中糸が0.125~0.6と表示されているが、そんなにワイドな感じでもなく、0.25~0.4号くらいが一番バランスが取れてオイシいところだと思う。
 魚を掛けるまでは、割にシャンと張った胴部の先に極軟トップが着いている感じで、振り込みもピタリと決まるが、それでいて一度魚が掛かると先側が4.5:元側が5.5くらいのバランスになり、多少の大型サイズであってもそれを崩さずに胴までキレイに曲がり込んでゆく。勿論小型を抜く際もブレずに魚が飛んでくる。
 一時、このモデルの下位にある「渓隼」の5.5mも所有していたが、そちらも似たような調子であり、「ビビッド・トップ」などの基本性能は受け継がれている。カーボンの質の差で、曲がった後に起き上がる力はやや不足するが、それを意識して自分の力で起こしてやれば問題はないので予算がない場合にはそちらもお薦めだ。

■翠隼本流70-75ZZ■

 川幅15m前後、例えば高原川本流であれば、浅井田ダム上流部の区間でメインに使用中。

                     
                               ●実勢価格¥37000前後●

これも「ビビッド・トップ」を搭載。上述の翠隼60ZKと同じ「S中硬」という調子表示されているが、長尺仕舞設計のためか、それよりもやや胴が張っており、その先に極軟トップが着いている感じだ。適合水中糸は0.3~0.4号くらいが一番バランスが取れてオイシいところだと思う。魚を掛けてからは本流竿一般にあるような胴調子ではなく、先側が4:元側が6くらいのバランスで曲がり込む。この竿での最大サイズはイワナの34cmだったが、その際の寄せの性能も問題なかったし、勿論小型を抜く際にもブレずに魚が飛んでくる。


■翠隼本流75-80ZZ■

 川幅20m前後、堰堤部、淵等、例えば高原川本流で言えば神岡町より下流部の区間でメインに使用中。

                     
                               ●実勢価格¥40000前後●

これまた「ビビッド・トップ」を搭載。上述の翠隼本流70-75ZZより50cm長いだけだが、重量差が30gあって振った感じや保持する感覚はかなり重い。その他の感覚は70-75とほぼ同じ。ボクの場合は先にこっちを購入した後、「少しでも軽い竿を」ということで70-75を購入したが、重さが我慢できるのなら、これ1本のみで充分だと思う。もし2本揃えるのなら、追加になった80-85と、70-75を買った方がイイと思う。
 この竿での最大サイズはイワナの40cmだったが、全く問題なく取り込めた。勿論小型を抜く際にもブレずに魚が飛んでくる。


■ウルトラゲーム カゲロウ SUL 70-75ZX■

 川幅15m前後の河川で、魚がスレていると判断した場合、もしくは他人が入った後に使用。

                     
                               ●実勢価格¥35000前後●

 今年の春に廃盤になったモデルなので、実勢価格よりは購入できた。いわゆるゼロ・ロッドで胴から曲がる竿だけど、ハエ竿のようにベロンベロンではなく、この分野の中では何となく硬目に思える。だから0.1号の水中糸を使う気にはなれず水中糸0.125~0.2号を使う際に使用中。その範囲ではベストバランスだと思うが、何しろ釣ったサイズが25cm止まりなので、何とも言えない。残念ながら「ビビッド・トップ」は非搭載なので、次モデルへの搭載を期待したい。(上位モデルには搭載されているものの、メインロッドではないので、予算をかけられないのだ。)


■渓流ウルトラゲーム SUL 55-60ZX■

 川幅10m以下の河川で、魚がスレていると判断した場合、もしくは他人が入った後に使用。

                     
                               ●実勢価格¥18500前後●

 この竿もゼロ・ロッドだけど、上述の「カゲロウ SUL」と同様に何となく硬目に思える。従って同じように水中糸0.125~0.2号を使う際に使用中。この竿もその範囲ではベストバランスだと思う。掛けた最大サイズはイワナの30cmオーバー(実際には玉入れ寸前にハリハズレ)だったが、問題は無かった。これまた残念ながら「ビビッド・トップ」は非搭載なので、次モデルへの搭載を期待したい。


■その他の竿■

 ほとんど使用しないが、「もしも」に備えて携行中の竿もある。

                     
                         ●「本流スーパーゲーム MH 80-85ZV」●

 翠隼本流で獲れそうにもない大型が出る場所を想定して、某中古釣具チェーン店でデッド・ストック物の新品を格安で購入。しかし残念ながら使う場面に遭遇していない。

                     
                             ●「刀翠 硬調 51-56ZE」●

 滅多に行かない渓流奥部を想定して、これまた某中古釣具チェーン店で美品中古を格安で購入。一度使用したが、さすが硬調だけあって小型はスッ飛んでくる。だだし、奥に潜む大イワナ等には未だ遭遇せず、その実力は不明。


■気付けば竿は増えており…■

 振り返ると、いつの間にか竿が増えていた。それもこれも、自分が行く場所を想定してのことだ。釣り人には様々なタイプが存在しており、「メインの竿はこれ1本!」と、自分のスタイルを貫き、そのスタイルに合う魚を追う人が居るが、ボクの場合は適材適所、「その場にいる魚の事情に合わせる」というスタイルだ。よって道具はドンドン増えてゆく。これはシマノのカタログコピーで言うところの「適竿適所」だが、まんまとそれに乗せられているボクなのである。そして、来年になると、また増えているような…。今から考えるだけでオソロシイ今日この頃なのである。
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今期渓流最終釣行

2010-10-02 12:30:17 | 渓流&管理釣り場での釣り
■禁漁期を控えて■

 3月の解禁以来、各地で様々な思い出を作ってくれた渓魚とも10月1日(一部を除く)の禁漁をもって一旦のお別れとなる。
 当初は前回の釣行で最終にしようかとも思っていたものの、ポカッと日曜日の予定が空いてしまった。「常に動いてエラに海水を通さないと死んでしまうマグロ」のような性格のボクにとって、そんな日に「な~んにもしない」と、熊のプーさんのようにジッとしているのは我慢できることではなく、慌てて釣行を決意した瞬間に勝手に腰が浮いていた。
 アレコレ迷っているヒマはなかったので「大河川であれば、どこかに入るスペースがあるだろう。」と、以前に2時間ほど攻めただけだった「木曽川の最上流部」を目指すことにした。


■急転直下■

 釣行当日の朝、入渓地点に到着後、仮眠をとっているとあまりの寒さに思わず目覚める。外気温をチェックすると7度しかなく、先日までの猛暑もどこへやら。急転直下の気温降下で二歩も三歩も季節は前へ進んで「間は無いんかいっ!」と、ツッ込みを入れたくなってしまうが、どちらかと言えばこの気温の方がマトモであり、少なくとも熱すぎるよりは渓魚にとっても、デブったボクにとっても良い兆候である。車のラゲッジから寝袋を取り出し、くるまりつつ夜明けを待った。

                   
                       ●車の外気温計(上段左)は7度を指していた●


■木曽川上流部■

 前回訪れた際には時間が少なくて攻めきれなかったので、スタート地点は同じであっても、ボクにとっては未知である、上流部へと更に釣り上がるつもりで入渓した。

                   
                             ●朝靄の立つ夜明けの河原●

■出足好調■

 一匹目はすぐに目印を引き込んでくれた。ポイントとしては当たり前の、水中に沈んだ大石の裏だった。

                   
                  ●付近には平瀬が多いが、この区間の底質は変化に富んでいる●

 本日初物としてはイキナリの抵抗を示したが、0.25号の糸を切ってゆくようなサイズではない。今年最期の一日の始まりを味わおうと、ゆっくりとやり取りをして無事に玉網に収まったのは、意外に良型であり、25cmクラスだ。

                   
                    ●稚魚放流から大きくなったであろう、ド派手な朱点のメス●

 シーズン最終段階に来ても残っているアマゴは当然ながらスレている。だから一つ一つのポイントをじっくりと時間を掛けながら攻めることを心掛けつつ、更に釣り上がっていく。
 そして、更に少し上流の区間にほどよい石裏の変化を見付けた。

                   
                          ●石裏に泡立つ流れ付近がポイントだ。●

 そこに仕掛を投入。本流との流れの縁を丁寧に流していると、今度は目印の動きが停止した。すかさず合わせると、マズマズのサイズのアマゴが登場する。今度はどうやら天然育ちのオスのようだ。

                    
                          ●朱点がキレイに散った23cmのオス●


■区間の終わり■

 その後はポツポツながら、順調に釣果が伸び、機嫌を良くしながら更に上流を目指した。そして少し距離を置いて2段になった堰堤の区間へと差し掛かる。そこから上流に目をやると、フライをしている釣り人が2人見えたので、どうやらこの区間の釣りはココで終わらなくてはならないようだ。

 堰堤下流には角ブロックが整然と並んでいる。全般を見回すと、両サイドの川縁がやや深く掘れ込んでいるので、そこがポイントになりそうだ。
                  
                   
                        ●堰堤下をよく観察すると、両サイドが深い●

 空はピーカン状態なので、それまでよりも更に仕掛を細く、0.2号まで落として攻めてみる。しかし、この判断が最終的にはマズかった。下流側から慎重に攻めてゆくと、当初は小型のアマゴが数匹掛かる。そして一番上流側にある、最初の落ち込みで目印が止まると同時に竿全体を通して「ゴンッ!」という衝撃が伝わった。
 相手は溝になった部分を下流へと疾走するが、両サイドのポイントを攻めるために川のド真ん中に立っていたために魚に合わせてコチラが走ると、ブロックの切れ目で確実に深みにハマって流されてしまう。ココは一か八かその場で踏ん張り、竿全体を絞り込んで疾走を止めるしかなさそうだ。
 しかし、0.2号の仕掛に交換していることが頭をよぎってしまう。その一瞬の迷いを衝いて相手は深みへの落ち込みに全力で入ろうとした。その瞬間、竿先は天を突き、弧は解消されてしまった。痛恨のバラシである。

 その後は小型のみ、何も得ることがないままに、この区間の釣りが終了した。

                   
                        ●手にしたのは15cm以下の豆クラスのみ●


■巴淵■

 ココまでで釣り上げたマトモなサイズのアマゴは全て婚姻色が出ており、産卵は近いようである。その様子から、「アマゴ達は産卵絡みの行動で更に上流へ向かったのであろうか?」という考えが頭に浮かんだ。しかし、まだまだ時間がある。一旦、淵部分へ様子を見に行き、「答えが出そうにないのなら、一気に上流へ向かおう」という考えの下、淵が連続する「巴淵(ともえがふち)」近辺へと車を走らせた。

 因みに巴淵とは、平家打倒の兵を挙げた木曽義仲(きそよしなか)の妻、巴御前(ともえごぜん)が水練のため幼少期に泳いだ淵とも、ただ単に回る渦が巴模様に見えるからとも言われる淵であり、木曽路の景勝地としても知られている。

                   
                                 ●巴淵の石碑●

 淵が見下ろせる橋に立ち、様子を伺っていると、真下にいるフライ・マンがドンピシャのタイミングで魚を掛けているではないか!。

                   
                         ●フライ・マンが、やり取りの真っ最中●

 ゲットしたのは25cmクラスのアマゴのようだ。これを見たボクは、単純にも「淵に魚が入っているかも?」との判断に至る。そしてしばらく上流に車に走らせた先にある、淵などの水深があるポイントが続く区間へと向かうのであった。


■最終区間■

 この区間は淵や深瀬が平瀬で繋がりながら連続している区間で、それはそれは見事な景観を成していた。しかし…。

                    
                                  ●この区間も●
                    
                                  ●この区間も●
                    
                                  ●この区間も●
                    
                                  ●この区間も●
                    
                              ●せいぜいこのサイズが限界●

 小型は多数居るものの、どうにもこうにもサイズが伸びず、オマケに降り出した雨が強まってくる。このままでは増水して帰られなくなってしまいそうなので、ココは諦めて退渓を決意した。


■この日を振り返って■

 結果論ではあるが、当初の思い通り魚はどうやら産卵のために上流を目指していたようだ。「巴淵のアマゴ」を見たがために判断がにぶってしまったが、帰宅後に、この日の釣りを振り返っている最中に、その昔にブラックバス釣りをしていた頃に覚えた「シーズナル・パターン」というモノを思い出していた。これは産卵場所を基軸として、シーズンごとのブラックバスの動きを指すのだが、それを推測し追跡することで、より魚に出逢う確率を高めることができるのだ。
 渓魚の場合も多分同じで、秋の産卵場所が上流部や支流にあるとすれば、やはりそこへ向かうのが正解であった。それは頭では理解していたつもりなのだが、ついつい他人の魚を見たことでスケベ心を出した自分に反省することしきりである。
 だが、次に生かそうとしても時間切れであり、来年までは試す手段もない。しかしながら、昨年も迷った挙げ句に同じ失敗をしていたような気がする…。毎年のようではあるが、「来年こそは!」と決意を新たにした今期最終釣行であった。
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秋色の久婦須川

2010-09-18 12:30:08 | 渓流&管理釣り場での釣り
■秋はそぐそこに■

 クソ暑い毎日が続き、ウンザリしつつも9月を迎えたが、ここに来てようやくマシになってきたようだ。ただし「夏のようだ。」と思っていたのは人間だけのことなのか、山々の木々は日照時間の減少を捉えて一歩前へ確実に進んでいる。


                         ●里山の麓では稲刈りの真っ只中●

 そして台風の通過時に久しぶりの雨が降った渓流部でも、秋への変化が始まっていた。


■久婦須川へ■

 今は河川の水位情報が国土交通省「川の防災情報」(http://www.river.go.jp/)に代表されるサイトで簡単に見られる時代だから、水位の変化はすぐに判る。
 渓流魚狙いは、一度水位が上がった後、その濁りが落ち着きつつも減水し、平水時よりもやや高い状態がベストとされているが、今回訪れた久婦須川では70cm台前半が自分なりの判断ではそれにあたると思う。台風9号による増水の後、当日は60cm台まで下がっていて、やや下がりすぎの感も無いではないが、それまでの間の渇水時よりはまだマシとの判断で釣行を決意したワケである。


■入渓地点■

 久婦須川を訪れる際に、よく入る区間の入渓点へ到着し、準備をし、河原へと降りて行く。富山県下の河川では地元でオロロと呼ばれるメジロアブの大発生が、毎年お盆前後に起こる。それがあってか、夏場に、この川を訪れる人が減るせいで河原へと続く踏み跡が消えて降りるのに苦労する。
 何とか降りたって投入を開始するが、すぐには答えが出てくれない。朝一番だというのに魚は餌をとるために動き回っているような感じはなく、川の中は、まだ盛夏を引きずっているかのようで、タフな雰囲気が漂っていた。
 どうやら、解禁以来釣り続けられて魚の数が減り、生き残った者が条件の良い一等地に一匹ずつが居座っているような感じがした。そこで、「ここは…。」と思ったポイントで粘る作戦をとるようにした。


■一匹目■

 何も反応がないまま、以前に尺イワナを獲った、幅の広い浅瀬から落ち込むポイントへと差し掛かった。

                     
                         ●瀬から落ちてくるエサを獲りやすい地形●

 まず、周辺部から攻めてみるが無反応。徐々に本命スポットへと近付いてゆく。そして以前にイワナを掛けたのと全く同じところに仕掛を入れた途端に目印が引き込まれていった。
 瀬の向こうはもう一段下がっており、そっちへ行かれると厄介だが、こちらの意思に反して相手はそちらへそちらへと走って行く。しかもこの時期のヤマメは最大限に成長しており、フルパワーでこちらに挑んでくる。
 「弱気は禁物」と、竿を持つ手を引き絞り、やや強引にタメてやり取りを繰り返して何とか玉網に誘導した。確認すると婚姻色で秋色に色付いた雄のヤマメだ。

                     
                             ●一匹目は26cmの♂ヤマメ●

 しかし、続くアタリはなく、予想通り「一箇所一匹の狙い撃ち」の展開だ。


■二匹目以降■

 次のポイントからは、「そこに居るハズ」と信じて、じっくりと時間を掛けて攻めることを心掛けた。

                     
                               ●「如何にも」のポイント●
                     
                              ●じっくり攻めると答えは出る●
                     
                                   ●ここも…●
                     
                                  ●秋色の26cm●


■エサについて■

 ここまで、持参したミミズとブドウ虫、そして現地採取のクロカワムシを使用したが、アタリがあるのはクロカワムシのみだった。しかし、採取しても小型の物がほとんどで、ハリに刺し辛い。そこで、クロカワムシのサイズに合わせてハリを小さくするという、逆の発想で対処した。

                     
                    ●クロカワムシのサイズは15mm以下の小型ばかりだった●


■この日の最大魚■

 そろそろ堰堤が確認出来る位置になり、最終地点が迫ってきた。気になる大石絡みのポイントがあったのでそこを丹念に攻めてゆく。

                     
                              ●気になる大石裏ポイント●

 セオリー通りに周りから攻め手ゆくが、ここでもやはり無反応だった。そして残るは、石裏直下の、このただ一箇所というポイントにやや重めの2Bのオモリを打った仕掛を入れてみる。
 答えはすぐに出た。しかし、掛けた瞬間にいきなり先手をとられ、相手の疾走からやり取りが始まった。
 竿のタメだけではついて行くそうにもない。そこで下流へ向かう動きに合わせてこちらもついて行く。相手の走る部分は淵のようになっていて水深があるものの、ボクの足元は膝上くらいであるから、比較的容易に移動できた。やがて淵尻部に到達すると、幾分相手の走りも弱まっていた。後は竿を引き絞って浮かせにかかる岳だ。そしてネットイン!。残念ながら尺には少し届かなかったが、この日の最大サイズのオスヤマメであった。

                     
                               ●この日最大の29cm!●

 その後は堰堤の手前の区間に入ったが、20cmくらいのを一匹追加するに留まった。

 ここまでの成績は、25~29cmの山女魚が六匹+20cmが一匹という成績だった。数は出なかったが、粒揃いの結果に一応の満足をしてこの区間から脱渓した。


■予想外の結末■

 時間もまだ充分に残っていたものの、途中で日差しが照り込み、気温が上がって状況は最悪に近い。そこで、もう一箇所「お試しポイント」として竿を出し、良い結果が出なければ諦めようと、前回アタリが多かった下流部のポイントに入ってみることにした。

                     
                           ●淵に流れ込む流芯の周囲がポイント●

 しかし、アノ手コノ手で何度攻めてもアタリはなく、「これで最期だ」と決め込んだラスト一投でようやく目印が引き込まれていった。しかし、何とこれがスレでかかってきたアユでビックリした。
 釣りをしない人は判らないだろうから説明しておくが、成魚になったアユは川底の石に付着した藻類を食べるので、エサを使っていても口に針がかかることはない。釣ろうと思うのなら、友釣りという、縄張りに進入してきた他のアユを追い払う習性を利用して引っかけて釣る方法をとるのが普通だ。だから、この日ボクが釣った?アユは、たまたまハリが流れてきたところに居ただけで運悪く引っかかっただけというこになる。

 運が良いのか悪いのか、何が何だか判らないラスト一投の結末に苦笑いをしながらの退渓になった。

                     
                                ●20cmチョイのアユ●


 10月1日からの禁漁を控え、時間はあと僅かしか残っていないが、「あと一回行けるだろうか?」と思案し続ける日々である。「行くか、このまま終えるか?」いずれにせよ今シーズンは「尺上クラスをゲットする」という目標を達成しており、余裕を持って迎えられそうな幸せなシーズンの最終局面である。
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