私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

台湾有事は日本の問題:防衛政策局長

2008年03月15日 | 極東情勢(日本とその周辺)

「政府与党内に波紋が広がっています」(TBS)って、例のごとくお前らが波紋を広げたくて必死なんだろうがと小一時間・・・・

◆台湾有事は日本の問題 防衛政策局長が自民会合で発言(産経)
◆中台有事、警戒強め対応 防政局長発言に山崎氏注意(中日新聞)

いわゆる「周辺事態法」の目的条文では、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」が「周辺事態」であると定義されています。したがって、「日本は中台で事が起これば与那国島など近くは影響を受けるし、日本の主権が侵されない形での戦闘になるかということもある。警戒監視を高めるし、周辺事態的要素もあるので、そういう前提で対応していく」(高見沢防衛政策局長)というのは至極まともな見解です。
「台湾の火事は対岸の火事」という下らない駄洒落はさておき、実際96年の海峡危機の際、中共のミサイルが我が国の領海内に着弾する可能性もあった訳ですし、それ以来あの一帯の漁獲高は激減しています。シーレーンの重要性や「台湾防衛のため日本が米軍の後方支援に動いた場合、中国軍が日本の南西諸島を攻撃する可能性」も鑑みると、決して座視できる話ではない。

この発言に対し、早速すっ飛んで来たのが山崎拓前副総裁加藤紘一元幹事長というのが笑えますが、「地理的概念でなく事態の性質に着目した概念である」という「政府見解」と齟齬を生じる(これも今更何だかね・・・・)余地があるということなのでしょう。(加藤さんは「中国の許可を得たんですか?得てないでしょ?」と言いたくて仕方がないのでしょう・・・・)「中台有事が周辺事態として認定される可能性があるが、(日本の対応は)戦略的あいまい性が最も必要な分野だ。日本独自の判断ではなかなかできない。日米一体となった判断となる」(山崎拓前副総裁)という見解も、(発言者が胡散臭い点はさておき)現状認識としては間違っていない。
しかしながら、この一連の発言の中でもっとも重要視すべきなのは、「これはわれわれ自身の安全保障の問題なんだ」という気概だと思います。先日いただいたコメントにも記したことなのですが、例えば尖閣諸島やガス田を巡って日中間に軍事的緊張が生じた場合、二国間の問題として米側が介入してこない可能性も見ておかねばならない。そういう局面も見据えて、今何をなすべきかを主体的に考える。こういう能動的かつ戦略的な思考が欠如したままでは、中国の恫喝の前に沈黙を強いられ、早晩亡国の途へ至るのは容易に想像できるシナリオです。

◆The Associated Press: US Concerned Over China Buildup(AP)

<Navy Adm. Timothy Keating, commander of the U.S. Pacific Command, told the Senate Armed Services Committee that China's build-up would require Taiwan to improve its own defenses to deter potential aggression from the Chinese mainland."Sustaining stability across the Taiwan Strait is a top priority. Vital to preserving this current stability is a credible Taiwan self-defense capability," Keating said in written testimony released at a committee hearing.>
(ティモシー・キーティング海軍大将(米太平洋司令官)は、その潜在的脅威を阻止すべく、中国の軍備増強に応じた自衛能力の向上が台湾に求められるという見解を上院軍事委員会の公聴会で示した。「台湾海峡の安定の維持は、最優先事項です。安定的な現況を維持するには、信頼性の高い台湾の自衛能力が不可欠です」と、公聴会で配布された書面に記されている)

キーティング司令官は、北朝鮮の核問題よりも中国の脅威を重視しているようですが、これは米海軍関係者の共通見解のようですね。合衆国の太平洋戦略(米産軍複合体にとっても)において、台湾が戦略的に重要な要衝であることがよく解る発言です。

<Warner said he was also worried that Taiwan thinks the U.S. obligation to maintain sufficient force in the Pacific as a deterrent against China will serve as "a 911 dial to the United States to come rescue us." "911" is the phone number for emergency help in the United States.>

(ワーナー上院議員(バージニア州・共和党)は、合衆国が太平洋地域で維持している対中抑止力を、台湾側が「台湾を救出しに来てくれる米国直通の911ダイヤル」と受け止めることへの懸念も示した。「911」はアメリカ合衆国の緊急通報用電話番号である)

台湾側に誤ったメッセージを送ることへの懸念もまま見られます。同議員が懸念しているのは、(1)台湾側が自衛能力の向上を怠ること、(2)台湾側が米国の介入を見越して挑発的な動きに出ること──の二点でしょう。
介入の可能性を匂わせて北京の侵攻を防ぎ、介入の可能性を担保しないことで台北側の(正式な独立に向けた挑発的な)動きを阻むのが合衆国の「曖昧戦略」の本質ですが、これが機能してきたのも、台湾の軍事的優位性と「合衆国が維持している能力」が背景にあったからです。

台湾海峡両岸の均衡は、野球に例えれば「0-0」の投手戦を見るようですが、中国の軍拡がこの均衡にどのような波紋を投げかけるのか。日本としてもその動向を注視し、「これはわれわれ自身の安全保障の問題なんだ」という現状認識に立った対策が急がれます。


中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団  



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