・「台湾が中国にのみ込まれたら、もう沖縄ものんきなことを言っていられなくなる。(日本との間に台湾がなくなれば、沖縄のすぐそばに)中国がうろうろすることになる。そうなると石垣や宮古はビリビリ(緊迫)して、沖縄の方から米軍にいてくれと言わざるを得なくなってしまう」(自民党・久間総務会長)
・「(対中認識について)「党内では『脅威』とは違う意見があるのも事実だが、(自分は)『現実的脅威』という言葉を語り続けていきたい」(民主党・前原代表)
・・・・かの国はこういう「対中脅威論」や「報道」がお気に召さないと筋違いな注文をつけていたようですが、余りに荒唐無稽過ぎて論評自体は省略するにしても、こういう発言を並べてみると日本の与党も野党も随分変わったものだなぁという気がします。ほんの数年前までは、「周辺事態とは、地理的概念でなく事態の性質に着目した概念である」などと冷や汗かきながら苦し紛れのコメントをしていたわけですからねぇ。 (日本が攻撃を受けたらそれは〝直撃〟と言うことですから、〝周辺〟と言ったらあの辺とかあの辺だろうと思うのが普通だろうと奇異な感じを抱きましたが・・・・)
◆周辺事態の空港・港湾使用も米軍優先…法改正検討(読売)
◆久間氏「在沖米軍が中国けん制」 駐留の重要性強調(琉球新報)
◆民主代表、「中国脅威論」を党見解に(日経)
◆軍事情報保護へ早期協定締結を 訪米中の久間氏(産経)
◆米、3月合意へ素案提示 在日米軍再編で実施計画(共同)
◆米国製の無人偵察機、07年度から配備…防衛長官(読売)
◆台湾海峡の安定へ多国間協議の創設を・台湾駐日代表(日経)
昨年2月にワシントンで開かれた「2プラス2」では、地域における日米安保の戦略目標として、台湾海峡と朝鮮半島が挙げられました。日米の共同文書でこれらの地域が名指しされたのは初めてであり、私もずいぶん驚いた記憶があります。
コミュケの草案をすっぱ抜いた「ワシントン・ポスト」の記事からは、米側が日本の法体制の整備と極東条項の撤廃を望んでいることもうかがえましたが、周辺事態での米軍への後方支援体制を高める必要性を鑑み、周辺事態法の改正案が年内に国会に提出される見通しのようです。
・「メリケンの言いなりに民間空港の使用を許したら日本は戦争に巻き込まれてしまう。日米安保を破棄して在日米軍にはお引き取り願い、日本は憲法九条を堅持していくべきだ」(L氏)
・「メリケンの言いなりに民間空港の使用を許すのは日本として情けない。日米安保を破棄して在日米軍にはお引き取り願い、日本は完全自主防衛体制を目指すべきだ」(R氏)
・・・・「台湾海峡など日本周辺で紛争が起きた場合、日本有事と同様に、国内の空港・港湾を米軍に優先的に使用させる措置」等と言うと、日本国内からはこういう両極端の反応が返ってきそうではありますね。
米国筋は『不安定の弧』に中国そのものが黙示的に含まれるのかについては明言を避けていますが、米軍変革の主眼は『不安定の弧』における有事に即応できる態勢の構築にありますので、周辺事態法の改正も同盟国としての必要な協力体制の一環であるという理解が不可欠でしょう。
「村八分」ではありませんが、隣の家にボヤが出れば消火に協力せねばならないでしょうし、二軒先に放火魔が住んでいるのであれば、過ちを犯さぬように警戒が必要です。「見てみぬふり」を決め込むのであれば延焼は必至ですし、いざという時に迅速な消火活動が出来るよう然るべき態勢を整えておかねばならないでしょう。
もっとも、この措置が有事の際の対応策を規定しようという動きに過ぎないのも事実です。台湾海峡における「2プラス2」の共通戦略目標の真意としては、「平和的解決に向けて日米両国がエンゲージメントする」という点にあるのでしょうし、事実昨年ブッシュ大統領やライス国務長官は、「選挙で選ばれた陳総統と話し合うように」という秋波を数回北京に送りました。
北京側も「平和的解決」を図るのにやぶさかではないのでしょうが、彼らが妥協できる最大限の譲歩が、一国二制度による〝中華人民共和国・台湾特別行政区〟であり、台湾側がそれを望まない以上、「ただ話し合え」というだけでは中台両者がテーブルに着く場面すら想定しづらいのではないでしょうか。
TECROの許世楷代表のコメントが珍しく日経に出ていましたが、李登輝前総統も六カ国協議を模した、日・米・台・中による「四カ国協議」を開催して台湾問題の解決を協議してはどうかという提案をされたことがあります。
現状では北朝鮮問題で手一杯という感は否めませんが、台湾問題は擦り傷のように勝手に治癒するわけでもなし。今年も日米両国の頭痛の種として存在し続けることでしょう。
日米両国の具体的なエンゲージメント戦略が今ひとつ見えづらい中で、昨秋の京都でのブッシュ大統領の演説(記事)と呼応するかのように、台湾の陳総統が元旦の演説で民間版「台湾新憲法」の年内起草と07年度の住民投票の可能性について言及した(産経記事)のは個人的には目を引きました。これまでの経緯から鑑みると、この演説の内容は事前に米国務省に根回し済みだったと考えるのが自然です(国務省は「〝四不一没有〟を遵守するように」位の注文はつけたかもしれません・・・・)し、昨秋のブッシュ大統領の演説と台湾の新憲法制定、ゼーリック国務副長官の中国に対する「大国としての責任論」は、何れも極東地域における自由と民主主義の伝播というブッシュ・ドクトリンのライン上に位置するものです。
閑話休題、米軍再編絡みで鹿屋(鹿児島県)、新田原(宮崎県)、築城(福岡県)といった九州の自衛隊基地の存在も今後クローズアップされてくるでしょうし、日中関係に関してついでに言えば、この「2プラス2」で台湾問題への関与を日本が表明した点が両者の亀裂の決定的要因となった以上、「アジア外交の建て直し」とか「靖国神社参拝自粛を」などと声高に叫んでも今となっては詮無いことです。
その意味では日中関係の劇的な改善を望むのは僥倖に過ぎないのではないでしょうか。
※写真・・・・福岡空港国際線ターミナル
「アジアの玄関口」どころか「不安定の弧」の玄関口になっちまいましたねぇ。国際線で日本の機材で運用しているのはJLの上海便1便のみというのも・・・・
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牛肉騒動で展開が狂った感もありますが。(汗
>条約なんて極論すれば紙切れですから。
全くその通りで能動的に動いていかないと風化するのは時間の問題です。しかし、日本人の思考停止と申しますか、その辺の思考に慣れていないのがネックですねぇ。
これからも主体的に考えていきたいものです。
>ろろ様
仰るとおりだと思います。昨年下千島に常駐の話があったのですが何故か左翼が潰したような・・・・この辺が胡散臭いところですねぇ。
沖縄は、在日米軍が雇用を創出している面があります。
沖縄の左翼が何を言おうと、沖縄の就職情報誌に
「安定した職業」として軍雇用員が紹介されていることからも
明らかです。
それならば、環境破壊の影響が少なそうな離島に、
自衛隊の小規模部隊を展開するというのはどうでしょうか。
たとえば、八重山連隊があったら、本部は石垣に置き、与那国・波照間あたりに支部隊を置いてみます。
犯罪の危険の少ない定住人口が増えると思えば、悪い気はしないと思います。
まさか、自衛隊に対して「米軍は出て行け!」とは
言えないでしょうしねぇ。(笑)
ぜーリック副長官の訪日では何が話し合われるのか興味深いところです。やっぱり米軍再編関連がメインかな。
こちらこそいつも「電子落書き帳」にコメントを頂戴して有難うございました。
2月にまた台湾に遊びに行く予定なのですが、たまたまランタンフェスティバルとやらの最中のようでネタ拾いによいかもといった塩梅です。(笑)
本年度もどうぞ宜しくお願い申し上げます!
>miro様
離島防衛というのは実際10年前に危機があっただけに看過できないものですよね。自衛隊の常駐は地域の活性化という面も期待できるかと思います。まぁ先日もF15墜落しちゃいましたが、抑止力を落とさずに負担の軽減を図るという命題は他人事ではなく国民全体が真剣に考えねばならないことだと思います。
>猫研究員様
>同盟の円滑な運用というのは多少「融通無碍」なところがないといけないですよ。
車のハンドルに例えると「遊び」のような余地を作れということでしょうか。融通どころかいざという時に動けないという懸念があるのでしょうね。実際杓子定規にやってしまうとそうなりますし、そういう態勢の不味い点は阪神大震災に顕わとなりました。
さ~って、来週の最大のネタはゼーリック副長官の来日でしょうか。(汗)
台湾有事の際にはどさくさに紛れて、紅い特殊
部隊が展開して占領するかもしれません。宮古・八重山諸島に自衛隊の駐留は必要です。
しかし県内世論は中国の脅威など意識することもなく、無防備です。これでまた外国軍(今度
の場合は中国軍)に占領されたとき、「国はまた守ってくれなかった」、「自衛隊は住民を守ってくれなかった」、と言うのでしょうか。
冗談はさておき、周辺有事の際に米軍の空港・港湾使用に大きな制約が出そうだというのは前々からの懸案ですね。これは改正するしかない。「周辺事態とは、地理的概念でなく事態の性質に着目した概念である」というのは、確かにおかしな表現ですが、柔軟に拡大解釈できるという風にもとれます。正確には「準有事」とでもいうべきか…。こういうと「なし崩しはいかん」と、お叱りをちょうだいするのだろうけれど、同盟の円滑な運用というのは多少「融通無碍」なところがないといけないですよ。
今年も楽しいブログを期待しております。
例の沖縄の基地に関してですが、
なんか幕末時の日本をみている気が
いたしました。
攘夷論とでもいうのでしょうか。(笑)
私個人は、米軍が出て行くのなら、
(ありえないでしょうが)新たに自衛隊の
南方方面司令部を新たに設立し、代わりに
自衛隊が駐屯する形でないと受け入れら
れないというスタンスです。