私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

NYフィル、平壌から「新世界」(その3)

2008年02月27日 | 極東情勢(日本とその周辺)

昨日は帰宅後、NYP平壌公演の録画(medici.tv)を眺めていたのですが、大容量ブロードバンドで気軽に音楽鑑賞が出来る便利な時代になったなと改めて思います。NYPのサイト(The New York Philharmonic in Pyongyang and Seoul)には、雪が降り積もる平壌市内を捉えた写真も多数掲載されていて、これまた興味深いですね。

◆Philharmonic Stirs Emotions in North Korea(New York Times)
◆Diary: US orchestra in N Korea(BBC NEWS)
◆「将軍様はお忙しい」=金総書記のNYフィル公演欠席-北朝鮮文化相(時事)

<There's been some stinging criticism of the New York Philharmonic's decision to accept the invitation of the North Korean government to perform in Pyongyang.One New York newspaper has called it "a disgrace", concerned that the visit is an ill-timed folly that hands the government there a propaganda coup. >
(平壌公演の開催を求める北朝鮮政府の要請を受け入れた楽団側の決定には、鋭い批判の声も寄せられた。あるニューヨーク紙は「面汚しである」と断じ、北朝鮮政府のプロパガンダに手を貸す不適切な愚行であると懸念を表明した)

<I get a chance to talk to Stanley Drucker, the orchestra's principal clarinet and its longest serving member. He joined in 1948 at the age of 19. Stanley was on the 1959 tour of the Soviet Union, conducted by the legendary Leonard Bernstein, one of the early groundbreaking attempts at this kind of cultural diplomacy. "We didn't know what to expect then," he tells me. "One hopes for the best, but I think it can only have a positive appeal for whoever hears our music." >
(オーケストラの最古参メンバーである、主席クラリネット奏者のスタンレー・ドラッガー氏と話す機会があった。スタンレー氏は1948年に19歳で入団し、レナード・バーンスタインが指揮した伝説の1959年ソビエト連邦ツアー(この種の文化外交の試みとしては最初期に属するものの一つ)にも参加している。「何が期待されているのかは、その時は判りませんでした」と氏は言う。「楽観的に考える人もありますが、私自身は、聴衆の心に訴えることに尽きると考えています」)

(共同)

(NYタイムズ)

(共同)

           <演  目>
朝鮮民主主義人民共和国国歌/アメリカ合衆国国歌
ワーグナー:楽劇「ローエングリン」~第三幕への前奏曲
ドヴォルザーク:交響曲第九番ホ短調作品九十五「新世界より」
ガーシュウィン:パリのアメリカ人
         ~(アンコール)~
ビゼー:組曲「アルルの女」~ファランドール
バーンスタイン:喜歌劇「キャンディード」序曲
朝鮮民謡:アリラン
                      2月26日 東平壌大劇場

「今回は、00年のオルブライト国務長官(当時)訪朝時の約100人を上回る史上最大の米訪問団となる(朝日)って、そりゃ、オケのメンバーだけで百人以上いる訳で・・・・国務省のヒル次官補と将軍様は臨席しなかったようですが、今朝の日経朝刊が言及していたとおり、ペリー前国防長官の姿が会場に見えますね。
映像はカメラワークもこなれており、観客の表情もふんだんに捉えていますが、客層は民族衣装をまとった女性(とメリケン関係者)がちらほら見受けられる以外は、バッジを付けた背広姿の男性が圧倒多数で、演奏会というより、「人民大会」といった趣ですな。ここら辺は大方予想されたところながら、13日に聴いたNYPの高雄公演(記事)とのあまりの雰囲気の違いには、やはり違和感を禁じえない・・・・

演奏会は、途中休憩を挟まずアンコールまでノンストップ(やはり平壌でも「アルルの女」やったか!)ですが、聴衆の生硬な表情が次第に和らいでくるのが印象深い。マゼール氏は、「パリのアメリカ人」を紹介する際“Someday a composer may write a work titled ‘Americans in Pyongyang,’ ”とウィットに富んだ一言を交えましたが、通訳がこれを朝鮮語に翻訳すると拍手喝采(反米はどうした?・・・・合衆国国家を「直立不動」の姿勢で聴く観衆の姿も何やら可笑しかったですけど)。最後のアンコール曲(この朝鮮民謡って何気にいい曲だな)が終わり、メンバーが引き上げる際は、お互いに手を振ったりもしてましたね。

自身のクラヲタ人生に於いて、NYPの公演は、東京、名古屋、大阪、福岡、大分、高雄、NYといった塩梅で聴いておりますが、「日本人でよかったな・・・・」というのが視聴後の率直な感想。〝特権階級〟でない私のような平民でも、演奏会を楽しむことができるのですから。それでも、〝家路〟につけない同胞のことが頭をよぎり、「カメラに映らない三階席辺りで拉致被害者が聴いていないだろうか・・・・」と、「新世界より」を聴きつつ何とも言えない気分になったのも事実。
(マゼール&NYPは04年の来日公演時にNHKホールで同曲を演奏したのですが、「都落ち」している私は名古屋公演を聴きにいったのみ。92年のフランス国立管との来日公演と基本的な解釈は変わっていませんが、いい演奏だなと・・・・)

今回のNYPの平壌公演は、1959年の同楽団のソ連公演に準えられて報じられることが多いですが、ソ連邦が崩壊したのはそれから30余年後のことでした。今回の公演が歴史的にどう顧みられるのか、に関してもしばし時間が必要なのかもしれません。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やはり「アルルの女」やったんですね (Unknown)
2008-02-27 19:45:07
 平壌公演で「アルルの女」をやるかどうか気になっていたのですが、やはりアンコール1曲目でやったんですね。
 マゼール指揮の“ファンラドール”がどう受け止められるのか、想像がつきません(苦笑)
 詳細なリポートありがとうございます。
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これは〆のアンコールである筈ですが・・・・ (tsubamerailstar)
2008-02-27 21:52:23
>やはりアンコール1曲目でやったんですね。

マゼール節の真骨頂ですかね。(汗)
91年のピッツバーグ響、92年のフランス国立管との来日公演に比べると、一昨年のNYPとの来日公演では「昔ほどぶっ飛んでいないな」と思いましたが、カメラ入るとマゼールは〝大人しい〟ですものね。(笑)

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トラックバックありがとうございます (ユリック)
2008-02-28 05:42:20
はじめまして。
「あぁ、もう黙ってはいられない」のユリックです。
トラックバック、ありがとうございます。
こちらからも、させて頂きました。

コンサートの模様、興味深く、拝読しました。

>聴衆の生硬な表情が次第に和らいでくるのが印象深い

かの国の人も、「人間」なんですね・・・(という言い方も、ヘンですが)
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Unknown (tsubamerailstar)
2008-02-29 17:32:55
>ユリック様

皆表情が一様な感じが当初ぎょっとしました。(汗)
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