私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

米国流〝管理外交〟の行方

2007年05月08日 | 極東情勢(日本とその周辺)

連休最終日の深夜は、仏の大統領選の行方を注視していたのですが、個人的にはロワイヤル候補に勝って欲しかったなぁと。
如何にも<保守反動>といった風情のサルコジ新大統領が中国への武器輸出解禁とかを先導したりしなければいいのですが・・・・

◆「一つの中国」政策維持・日米、台湾有事時、武力不介入を確認(中央日報)

◆陳総統が「台湾の独立」と「新憲法」の必要性を強調(台湾週報)
◆Japan necessary to deter China, US official says(Taipei Times)
◆Rice warns Taiwan over any pre-Olympic moves(Taipei Times)
◆AIT head says US has no favorite(Taipei Times)

「米国と日本が台湾問題を両国の共同戦略目標からはずした。両岸(中国と台湾)関係の現状態を維持しながら台湾有事時、武力介入をしないという意味だと見られる。中国を刺激しないという意図も垣間見える。中国政府の反応は直ちに出なかったが、国際問題専門家たちは肯定的な反応を見せた。しかし台湾は日米の既存政策には変化がないと今回の決定を縮小解釈した」(中央日報)
・・・クリッピングに引っかかった記事ですが、日米両国の「2プラス2」というのは、その時点で差し迫った議題を取り上げるのであって、過去の合意事項をいちいち〝復習〟〝復唱〟する余裕はありません。重要な変更点があれば必然的に議題に上るでしょうし、何の言及もないということは現状そのままということです。(中南海の連中は、外国の要人と会談する度に、しつこいくらいに「一つの中国」とか「台湾独立不支持」を確認していますが、それとこれとは違うだろうと・・・・)
もっとも、このところワシントンが中台問題に気を揉んでいるのは事実であり、一月ほど前にもライス国務長官は、


<US Secretary of State Condoleezza Rice has cautioned Taiwan not to try to take advantage of China's hosting of the Olympic Games in Beijing next summer to move toward formal independence. "We expect that China will not try to change that circumstance, and we expect that Taiwan will not try, through a unilateral declaration or a unilateral movement toward dependence, to change that policy," she said.>
(合衆国のコンドリーザ・ライス国務長官は台湾に対し、中国が来年のオリンピックの開催国となっている機に乗じて、正式な独立に向けた動きを取ったりすることのないよう警告した。「合衆国は中国が現況を変えようとしたり、同時に台湾が、一方的な宣言や独立に向けた一方的な動きを通じて合衆国の方針を変えることはないと思っています」)

台北に向けては「北京五輪のドサクサに紛れて〝正式な独立〟への動きを加速させたりするんじゃないわよ!」と言いつつ、北京に対しては「北京五輪後に敵対的行動に出た場合は座視しないわよ!」と中台双方を諌める物言いは、件の「共通戦略目標」が発表された05年2月の「2プラス2」後の会見の様子を彷彿とさせますが、ネグロポンテ国務副長官共々、中国側の軍拡よりも台北側の「挑発的な動き」を抑え込みたいという〝事なかれ主義〟の匂いがするのもこのところの傾向ですね。
国務省筋が台北側の「オーバーラン」に懸念を示す直近の要因として考えられるのは、三月初旬の陳総統発言ではないかと思います(全人代開催中のドサクサに紛れて「独立志向」発言→北京五輪のドサクサに紛れて「独立宣言」といった懸念ではないのかな?)が、これに対しては、北京ではなくワシントンが「脊髄反射的に」反応した(ワシントンが台北の〝レトリック〟に過敏に反応し、その火消しにあたふたしている様を見て、北京側はある意味タカを括っているのではないかとさえ思います)のが興味深く思えました。
「次期台湾総統も〝四不一没有〟の公約を継承すると思うか?」という問いに対し、国務省のマコーマック報道官は、

<MR. MCCORMACK: We would expect that the -- inasmuch as these commitments flow from our policy requirements and our policy statements that they would continue to be abided by.>
(マコーマック報道官:おそらくそうでしょう -- (「四不一没有」の)公約は合衆国の政策上の要求によるものですし、その方針は今後も遵守されるでしょうから)

「新・アーミテージレポート」を眺めた際、ワシントンは(1)独立宣言をしない(2)国号を変更しない(3)ニ国論を憲法に書き込まない(4)統独を問う住民投票を実施しない、という『四つのノー』を〝現状維持〟のガイドラインとして次期台湾総統にも要求するだろうなとは思っていましたが、「中国が台湾を武力侵攻する意図がない限り」という前提条件は、00年以降侵食される一方であるのが〝現状〟です。中国が〝A responsible stakeholder〟への道を歩むであろうという期待を抱くことでその懸念が解消され得ると国務省は楽観視しているのでしょうか?
05年2月に採択された「共通戦略目標」は、中台有事の際の軍事介入を明言したものではなく(米国流「曖昧関与」政策の核心を言っちゃぁオシマイだし・・・・)、この点でも中央日報の記事は見当外れなのですが、米軍太平洋総司令部のデニス・ブレア前提督は、中国や北朝鮮を念頭に、実際の軍事力行使よりも「侵攻を思い止まらせる抑止力」と「外交的手段による摩擦解消」の重要性を強調しています。台湾に関しては自衛能力の向上を促しているのですが、日本に対しては、MD網と法体制の整備を急げと言いたいのでしょう。(日本の憲法改正を望む合衆国が、台湾の憲法改正を制止するというのも滑稽な話ですが・・・・)

中国が台湾の背後に合衆国(あるいは日本)の影を見ているのは間違いなく、その虚を突かれた時こそが「中台投手戦」の零均衡が崩れる瞬間です。
投手戦を支える米国流〝管理外交〟の力技が永続するという絶対的な保証が存在するわけではありませんし、「魚を除けずに猫を追う」ようなもどかしさを感じる面も否めないのですが、それに変わる最適解がさしあたって見当たらないところが日台ともに悩ましいところですね・・・・

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1 コメント

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中華民国は独立できるか (chengguang)
2007-05-30 13:03:16
初めて投稿します。此処は『グローバル・アメリカン政論』のブログで知りやってきました。

アメリカは、嘗ての蒋介石総統による中国統一の後押しを、自らの政策の拙さで失敗したので、なおさら夢が捨てきれないのかもしれません。台湾人も今では中国人と自らを語るようなので、国名と同時に意識も変えないと独立は難しいと思います。

意識を変えるには先ず自分たちの言葉を持つことです。幸い台湾語がありますので、この台湾語を整備して共通語として普及させることから始めるなどを考えるべきでしょう。ただ、独立は他国任せで、自分たちは領収書に中華民国などと書いているようでは何時までたっても無理だと思います。
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