先だって息子10歳の心臓定期検診でバンコク病院に行った帰りのこと。
シャトルバスの発車時間まで1時間近くあったので、仕方なくタクシーで帰ることに。
バンコクのタクシー運転手とくれば、手ごわい相手というのが常識。
ぼったくりや遠回り、乗車拒否、強制降車はよく聞く話。
幸い、私は今まで真面目な?運転手さんに当たっていてそういう局面には遭っていない。
でも心構えは常に必要。
この日も病院の係りの人があてがってくれたタクシーの運ちゃんに
へたくそなタイ語で目的地を告げた。
「ソイ○○へ行ってください」
「オーケー!○○ね!?」
えええ?英語で言われてしまいましたよ。
英語が話せる?タクシーの運転手なのに?(失礼)
タクシー運転手は手っ取り早く始められる仕事なので、貧しい層や北部からの出稼ぎが多い。
故に都内の道を知らなかったりする。ちなみに地図も読めない。タイ語しか話さない。普通は。
何気に驚いていると横から息子10歳が
「かあちゃん、スゲーよ!見てよ!」
彼の指差す先には天井が。そこは…
外国紙幣で埋め尽くされていました(爆
「おおおっ!凄いコレクションー!どうやって集めたのー?」
と褒めちぎると、
「お客さんがくれるんだよ。いいか?これが中国ので、これがイランので…」
一つ一つ全部指差しながら説明してくれる。
面白いけど、前見て運転してくれ。(汗
本当に興味深かったので、
「写真撮ってもいい?」とタイ語で言ったら
「はあ??」と一瞬考えて(タイ語が挟まるとは予想していなかったらしい)
「オッケー!100バーツね!」と冗談をとばす。
「ペーン!(高ーい!)」とリアクションしながらパシャパシャ。
「日本円がないね。残念だけど今私円持ってないなあ」と言うと
「んじゃあ、次回持ってきて!」
「次回ね!」
などなど、しょうもない会話で車内大盛り上がり。
俺の名前はYOだよ!

ラッパーですか。
YOさんは個人で観光案内もしているそう。
欧米人に大モテだろうなあ、こういうノリの軽いキャラ。
自国の紙幣をあげたくなるのも分かる。
英語も達者で、
「こんなに英語話す日本人珍しいよ。みんな大抵黙ーってるからね。
ジュータイとか、コンデルとか言って…」
日本語もいくつかたしなむ。(笑
ダッシュボード左奥には家族の写真が。こんなトコも欧米人にはいい人に映るかも。
「これが妻で、娘で…」
そんな話の合間にも、彼の紙幣解説は続く。
「これがエジプトの…」
「エジプトー!」10歳が吠える。
「この子はエジプトが大好きなんだ」と話すと
「ホントかい!? エジプトのお金まだあるからあげるよ!」
とビニール袋に詰まった紙幣の束を取り出す。マジですか?
嬉しいけど、前見て運転して欲しい。
「あ、前動いてるよ!」と客に言われてどうする?
ホントにくれました(汗


10歳は大喜び。私は茫然。バンコクのタクシーの運ちゃんにお金もらってしまった。
そしてYOさんは言った。
「携帯持ってる?俺、今名刺切らしちゃってるから、電話番号だけ言っとくよ。
用があったらいつでも電話して」
そんなこんなしているうちにアパートに到着。
56バーツの料金に60バーツ渡すとお釣りを出そうとする。
形だけだとしてもこんなタクシーも初めて。
普通はおつりなんてくれない。チップとして勝手に懐に入れる。
「いいからとっといて」と言うと、
律儀に「サンキュー!電話してね!」と笑い、去っていった。
大した営業技だと思う。
あれだけのコミュニケーション能力があればもっと他の仕事があるのではと思いつつ、
階級や学歴が物を言うタイで、これが彼の築き上げた職業形態なんだろうな。
実際儲かっているのかもしれない。何より、人間関係に縛られない自由さがいいのかも。
頑張れ、タクシードライバーYO!
楽しい時間をコープクン・カー