駒ヶ根市福岡の辻沢に庚申塔や甲子塔と一緒にごくふつうのお地蔵さんが立っている。隣に説明板が立てられており、そこには次のように記されている。
「ほうそう地蔵」とも呼ばれ「願主安誉宗心」の刻銘がある。
小さなミゴぼうきがあり、いぼの出来た人がこのほうきを借りて云って払い、いぼが取れるとお礼にほうきを倍にして返した。
常に、弱い者困っている人を、あるいはすべての苦しみから人々を救ってくれる地蔵和算の考えから、このような信仰が生まれたといわれている。
末尾の説明はともかくとして、「ほうそう地蔵」と言われ、ミゴぼうきが置かれていたことについて『長野県中・南部の石造物』(長野県民俗の会)に塩澤一郎氏が触れている。
近くに住むおばあさんによれば「いぼをとっておくんなんしょ」といって、お地蔵様の台座の辺りにある、昔繭から糸を取る時に使った、稲の穂を結わえたほうきを借りて来て払うと取れる。ほうきを作るわらなどどこにでもあるし、糸で結べばすぐにできるから、気のもんだで治ると作ってお返しするのだという。
ミゴぼうきは、現在は見られない。塩澤氏が撮影された写真には地蔵の前に幣束も立っていたようだが、それも見られず、信仰が廃れていることがうかがえる。ちなみに同書は平成27年に刊行されたが、原稿は平成一桁時代のものがほとんど。ようは30年近く前の様子が記されていると言ってもよい。
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