Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ススオッコ

2005-12-27 08:20:53 | 民俗学
 昔は年末になるとススハライということをした。今ではそういう言い方をする人はいないが、家で囲炉裏があった時代には、火を焚いていたから、天井や軒下にススがたまることがあった。それを払うからススハライである。長野県中、だいたいススハライかススハキという言い方のようで、若干違う言い回しのところもある。
 このススハライに興味深い習慣が、かつてはあったようである。
○ススハライのほうきはハザへ持って行って立てておき、適当な日に川へ納める(下伊那郡阿南町新野)。
○ススハキのあと、使ったほうきは庭先などに立てたと聞いたことがある(上田市別所)。
○12月末にススハキをした後、ススオッコを立てる。1月15日まで立てておく。暮れの納豆ができると、ススオッコに供える(下水内郡栄村極野)。
○ススハライのほうきをススオトコといって、庭先に立てておいた(北安曇郡美麻村二重)。

 これらは、ススハライをしたほうきの処理の方法である。事例としてはそれほど多くはないのだが、ほうきを庭先に立てておくというものが県内の山間地に見られる。ススオトコが訛ってススオッコというのだろうか。家のススをはらったほうきにも、なにがしらの神様が宿る、あるいは神様の拠りどころになるのだろうか。とくに長野県の北部の事例が多く、北信においては、長野市の西部、いわゆる「西山」といわれるあたりと、北の端にある栄村に見られる。栄村極野の事例は『長野県史 民俗編』第4巻(2)北信地方 仕事行事にあるもので、そこには昭和51年に撮影されたススオッコの写真が掲載されている。この記事をそれこそ、20年ほど前に読んだとき、大変興味がわいて、栄村に現在も行なわれているのか問い合わせたことがあった。その時の回答では、すでに行なわれていないと聞いた覚えがある。
 ちまたでは、ホームセンターが栄えていて、とくに掃除道具が盛んに売れているようである。近所を見回しても大掃除をしているような様子はうかがわれないが、掃除道具が売れているというのだから、どこかで掃除をしている人がいるのだろう。このごろは、こうした時期になると、雑誌でも「大掃除特集」なるものを大々的に扱っていたりする。はっきりいって昔より年末に大掃除をする人は減っているのだろうが、世のなかは雰囲気で「大掃除」を味わっているような気がしてならない。

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