ハリソンさんはカノ紳士 ーフランス通過編 ー(後半)

今は昔の18世紀欧州が舞台の歴史大河ロマン。

24-13 ここで危機が去ったなんて思っちゃいけない

2021年10月20日 | 第24話 悲運の商人アントニオと20個の卵の物語



 「南仏の地で私までもが…」とありますが、
この話が収録されている本の語り手・筆者であり、
編集・出版者でもある人物でした。

 数々の障害により、
マルセルが読み切る事ができなかった4枚の紙。
これは印刷初版の試し刷りで、
工房からクレールさんの家のドラッグストアへと
リサイクルされて来ました。
なので、片面刷りとなっているのです。

 この本は、実はつい最近、
印刷・出版されたものでした。
そして、語り手・筆者であり、
編集・出版者でもある人物が後書きで、
ハリソンさんを仰天させるトンデモない
文を書いている事を、
ハリソンさんは、ここで知る由もありません。





  妻は(これは家の中に入ってから
理由を聞いた方がいいのでは?)と思いました。
夫の話が進む程に、
妻の柔らかな表情が強張って行きます。
「何て事を…!こんなの物語の中でも歌謡の中でも
聞いた事が無い!税関の人達があなたに与えた罰は
素晴らしいわ!」
「夫の災難に、そこまで言うのか?!」
「町の人達は、あなたが雌鶏の真似でもしようとしたのか?
とでも言って笑い者にするでしょうよ!」
「税吏達は他言しないと言ったぞ。」
「いいえ、明日には町中の噂になってるって断言できます!」
「分かった分かった。お前にまで…そんな風に言われたら
私も辛い。私が悪かった。
頼むからそんなに怒らないでくれ。」
 夫に謝られると、妻は少々声と態度を和らげましたが、
この後に言った言葉が、
一番アントニオにはキツく響いたのです。
「私は大金持ちと幸せな結婚をしたつもりだったのに、
これからは、ズボン下に卵を入れて運んだ
ハレンチ男の奥方だと呼ばれなくちゃいけないんだわ!」


次回は10月24日(日)で、
24話の最終回。その後のアントニオが被る真の悲運とは?