夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

題詠:北風は歌う

2007-12-31 | poetry

  北風は歌う

 あたしは今まで独りで生きてきた。一人で買い物するのも、映画を見るのも、食事をするのもわりと平気だった。でも、あなたと会って街を歩き、展覧会に行き、お酒を飲むようになって、二人で時を過ごすことの楽しさを知った。引き換えに一人の寂しさも知ってしまった。
「ねえ、どっちが似合うと思う?」
 片足ずつ履いてみて、振り返りたくなるのを思い止まる。
「あ、そういうことなんだ」
 映画館の暗闇の中でうなずきを求めた言葉は宙に浮いて独り言になってしまう。
「おいしいね」
 言葉と一緒に飲み込むとパスタも喉に少しつかえてしまう。
 カラオケに行くとあなたは古い歌を唄い、あたしは新しい歌を唄う。お互いの友だちを紹介し合うように。あなたは悲しい歌を唄い、あたしは楽しい歌を唄う。歌に込めた感情が反対なのをお互い知っているのに。
 あたしが短い幸せな少女時代を過ごした町を歩きながら、あなたは『歌の終わりに』という歌を口ずさんでいた。
「変な歌ね」とあたしは笑った。
「おまじないだからね」とあなたが冗談のように言ってガードの下の黒い水を見つめていたから、少しせつないような気分になった。
 凍み込むように冬は真冬へと向かう。止むこともなく屋根の上を吹き抜けて行く北風はあなたの不在を思い知らせる。長い樹々の影さえも吹き飛ばし、平穏だった日々を繰り返し否定する。何も間違えないなんてどこか間違っていると叫ぶ声が大気を震わせる。


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なんかいろんなものがあるサイトです。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そういやそうですね (夢のもつれ)
2008-01-03 15:18:42
演歌っぽいかもしれませんね。女性の演歌ならまだましかな。

まあ、出来が悪いのはなんか息切れしたというか、この形式に飽きてしまっていたというか
返信する
ふうん… (ぽけっと)
2008-01-02 22:18:54
ちょっと演歌みたいでこれも新境地?
…なはずはないか、お嫌いでしたよね、演歌。
でも和で北風が歌っちゃうと、どうしてもこぶしが回ってしまうのかも知れませんね。

というわけで速攻ながら充実の4編、ありがとうございました。
新境地には新境地でお応えできるといいのですが。
きっと忘れた頃に…
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