パラダイムシフト

国家が国家として行った約束を、政権が変わったからと反故に出来るのか否かを論じるツモリは無い。外交は全て自国の国益の為にダケ行うベキなのだろうから、或る意味では錦の御旗としても良いのだろう。

今回のＧ８サミットでは管首相は、経済産業省に相談せずに１０００万世帯に太陽光パネルを設置すると国際公約した。現在の太陽光パネル設置世帯５４万世帯が、１０００万世帯になったら・・・約２０倍だから・・・、現在の我が国自然エネルギー比率は約１％なので・・・、太陽光発電パネル設置世帯が２０倍になれば・・・自然エネルギー比率２０％と云うツモリでは理系首相には流石に無いだろう。自然エネルギーは太陽光発電に限定されないだろうから・・・。

過去記事にも書いた筈だが、我が家ではシミュレーションの結果で太陽光発電パネルの導入は時期尚早として断念した。太陽光発電パネルを設置した家ってナンダカ良い人が住んでいそうなので以前から気にはなっていたのだが・・・。

シミュレーションの際に調べたが、（当時）平均的な太陽光発電パネル設置には約２５０万円掛かるが(当時）国からの補助金が１ｋW当たり48,000円であり平均的な設置世帯が受け取れる補助金は20万円程度だそうだ。太陽光発電パネルを設置すれば、電力会社は「電力会社の発電原価の約5倍の固定価格買取42円/ｋWh」で余剰電力を買ってくれる。シミュレーションでは年間20万円程度が買電出来る事になっていた。

今後、国際公約を守る為に、今と同程度の補助金を出し、今と同程度の固定買取価格で買い取るツモリなら・・・、恐らく２０倍には増えないだろうと思う。せめて補助金額だけでも増額する必要があるだろう。

現在と同じ補助金を出すとして、９５０万世帯×２０万円＝１兆９０００億円だ。これを２倍にすれば３兆８０００億円、３倍にすれば５兆７０００億円なので、この位の増額をしないと２０倍には増えないカモ知れない。これは赤字に喘ぐ国家の支出＝国民負担である。又、現在と同じ程度の売電価格が太陽光発電パネル設置した１０００万世帯に支払われるとすれば、年間２兆円となる。この年間２兆円は電力会社が負担すべきなのだろうが、営利企業である電力会社は原価の５倍での売電分は利用者に遍く負担させようとするだろうから、これも国民負担である。こうして、国民負担で５兆８０００億円也、７兆７０００億円也の国民負担を強いれば良いのだが、この５兆８０００億円也、７兆７０００億円の国民負担は消費税での国家税収の約３％になってしまう。キリの良い数字である消費税１０％への値上げ（？）に向けて、各省庁は鎬を削っているだろうが・・・。

こうして晴れて太陽光発電パネル設置世帯が１０００万世帯になると、果たして何基の原子力発電所が用済みに成るのだろうか？

我が家のシミュレーション時に貰った資料に拠ると、平均的な一般家庭の屋根に設置するパネルの発電量は４ｋWだそうなので、追加分は９５０万世帯×４ｋW＝３８００万ｋWとなる。原発１基を１００万ｋWとすれば、この国際公約を実現すれば、原発３８基分の発電が出来る事に成る？この数は（平時に於いて）定期点検等で停止中ではなく実際に稼働中の原発の数に近いので・・・、晴れて脱原発と成る？

・・・とは成らない。原発は２４時間営業だが、太陽光発電パネルは晴天の日中にしか発電しないからだ。我が家のシミュレーションの時に貰った資料に拠ると、年間設備利用率は「晴れの国岡山」では１４％だった。日本全国での平均値は判らないが、そのまま１４％を入れて見ると５３２万ｋWとなってしまい原発５基分にしか成らない。

深夜電力と云う制度は、２４時間営業の原発の深夜に余ってしまう電力を活用する為に採用されているので、太陽光発電が原発５基分を担う為には時間帯別電力料金制度の見直しが迫られるだろう。又、オール電化住宅と云う電力に特化した家庭のエネルギー確保の体制も見直してリスク分散を図る必要も在るのかも知れない。

計画停電が予定される地域でオール電化住宅に住む友人がパラレルワールドに迷い込んだ気分に成るのも肯ける。尚、パラレルワールド云々と云う過去記事に対して頂いた私信で、「3.11以降に価値観が180度変わった」と云う主旨の方が多かった。リーマンショックの際にも、そう云う御意見を聞いた事がある。蒙昧な私に想像できるのは太平洋戦争敗戦後の日本も当に価値観が180度反転したのカモ知れない。（こうして、何かの度に180度ずつ反転していると、何周もクルクル回ってしまいそうだが・・・）私には価値観が180度反転すると云う経験は無いのだが、価値観の優先順位が変わる瞬間なら何度も体験してきたツモリだ。

パラダイムシフト・・・ビジネスセミナーで習った言葉だが・・・３．１１に拠って「人々の価値観や指向等の時代の思考を決める大きな枠組み」が大きく変容したのは事実だろう。こんな時には賢いリーダーに導かれたいモノである。