Trips with my RV.

RVでの小旅行。

洗脳する薬・・・?

2010-02-10 21:49:27 | 独り言
そもそも「洗脳」とは、特定の主義・思想を持つように仕向ける事、又は、その手段の事だ。「洗脳」とは物理的手段、心理学的手段、化学的手段等々を使って・・・比較的短時間に行われる・・・のだそうだ。因みに、マインドコントロールとは、児童からの教育段階で偏った情報を与えて、一部の者に都合の良い思想や価値観を持たせてしまう等・・・時間を掛けて緩やかに行われるモノを指す。何らかの論理体系を与えて特定の方向付けや条件付けを行い自発的に特定の思考様式を持たせるのはマインドコントロールと呼び、例え既に成長し自分なりの主義・思想を持つ人間に働き掛けて、特定の主義・思想に・・・本人の意思に関わり無く強制的に・・・変更してしまう場合は洗脳に分類される。「洗脳」では、薬物の使用や過酷な環境下において、人間の精神が極めて受動的になる事を利用して行われる。。。のだそうだ。

「洗脳」では、先ず最初に、その人の価値観や記憶すら改竄しなければならない。その人の「人となり」は過去の経験や過去の気付きに基づいているからだ。古典的な手段では催眠術を使うのだそうだ。強い催眠下で強制的に書き換えるのだ。「元々のその人」の「元々の人となり」・・・と云うか「洗脳」前の人格を破壊する行為で殺人にも等しい所行である。

「洗脳」の際の心理学的手段とは、外部との隔離・不毛な尋問・処罰・暴力・巧妙な賞罰・徹底教化・原罪の形成(罪の意識を植え付ける)・自己批判等々で、催眠効果を高めるとされる薬物(自白剤・・・チオペンタールナトリウムやアモバルビタールの抗神経薬、スコポラミン・・・目薬にも入っていた血管収縮剤・・・の中枢神経麻痺剤や麻薬類のブレンド)で被暗示性を高めるのだそうだ。

だが、記憶そのものを消す効果は無く、自らの判断力を低下させ被暗示性を高めた上での催眠暗示で、自ら自身で記憶を消去するしか無かったそうだ。

ところが、記憶を消す薬が発見されたらしい。
http://www.telegraph.co.uk/science/science-news/3298988/Scientists-find-drug-to-banish-bad-memories.html
この記事に依ると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因となっている、悪い記憶を忘れさせる事が可能になったのだそうだ。その薬プロプラノロールは、日本ではインデラル錠として知られていて狭心症や不整脈の治療に使う血圧を下げる薬である。日本でも比較的多く処方されているのだそうだが、実はこの元記事以前にも、PTSDに陥りそうな出来事が発生した直後に服用すると、トラウマ的な記憶の強度を和らげられる事は知られていて・・・そう云う特殊な処方も知られていた事らしい。だが、その出来事がトラウマになってしまった後でも、その出来事を思い出した際の服用で、このような効果があることが報告されたのは、今回の研究が初めてだ。

PTSDで苦しまれる方は、フラッシュバックと云う体験に苦しまれるのだそうだ。フラッシュバックとは、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出され、それが今現在現実に起こっているかのような感覚が非常に激しいのだそうだ。痛みの記憶であれば痛み、悲しみの記憶であれば悲しみ、恐怖の記憶であれば恐怖、そのトラウマを形成した心的ストレスが、その時、そのままの強度で前触れ無く現れるのだそうで、その2度と体験したくないだろう体験を、同じ強度で何度も何度も体験してしまうと云う想像を絶する苦しみである。

PTSDを引き起こすのは大脳辺縁系の扁桃核と云う部位だと云われていて、側頭葉に蓄えられた記憶にインデックスを付ける作業をしていると云われている海馬と近い場所にある。扁桃核が高活動状態にあると近い場所にある海馬も高活動状態になり、そのPTSDに関連するインデックスから次々と側頭葉から記憶を引き出し続ける状態となり、それがフラッシュバックの正体だ。扁桃核はと云う部位は、アドレナリンβ受容体系の制御を受けており、アドレナリンの刺激によって活性化するそうだ。興奮状態の極みであるパニック障害はアドレナリン過多の状態なので、このアドレナリン作動性効果遮断薬がアドレナリンの受容体(β1受容体とβ2受容体)を遮断し、興奮し高活動状態にある扁桃核を沈静化させてPTSDのフラッシュバックを抑えるのだろう。

扁桃核は、記憶の出し入れには本来関わっていない。記憶の呼び出しは、前頭葉からの指示で海馬がインデックスを検索し、そのインデックスに応じた記憶が側頭葉から取り出される。本来的な扁桃核の役割は、不安や恐怖や拒否と云う「情動」の中枢だ。

不安や恐怖が無い人間って、強い人って感じだけど、不安や恐怖や拒否の情動が無い人間って、石橋を叩いて渡るどころか・・・どんな橋でも平気で歩くだろうし、怖いモノ知らずで向こう見ずだから・・・きっと長生きしそうに無いから・・・子孫を残せず淘汰されてしまったのだろう。不安や恐怖や拒否の情動って、そう云う根本的な人間の生存本能の重要な要素なのだろう。そうして過去に経験した不安や恐怖や拒否の情動が扁桃核に蓄積されていき、同じ様な体験をした時に、速やかに海馬を刺激して、過去の生存を脅かす不安や恐怖や拒否の原因となった記憶を超高速で引き出そうとする・・・生存の為の不可欠な作用だ。つまり、扁桃核は激しい情動を受けた時に速やかに記憶を呼び出そうとする加速装置として作用する。

呼び出された記憶は、そのまま側頭葉に残るのだが、そのPTSDに関わる辛い記憶のインデックスが、扁桃核が沈静化された状態(扁桃核大興奮と云うフラグを消した状態)で、海馬に上書きされれば、PTSDのフラッシュバックを引き起こさなくなる・・・訳だ。だから、フラッシュバックが起きた際にプロプラノロールを飲めば、プロプラノロールはアドレナリン作動性効果遮断薬で扁桃核のアドレナリン受容体を遮断した状態にする=扁桃核が沈静化された状態となるので効果が在るのだろう。

新たな薬効の発見で、人間の記憶に関するシステムが1つ判った訳だ。コンピューターのファイル・アロケーション・システムでも、呼び出したファイルの拡張ファイル属性を使用したアプリケーションとの関連付けを行う(自動で行う設定と、手動で行う設定があるが)人間の脳に於ける記憶の取り扱いも拡張ファイル属性を変えていると云う事が判る。そして、この場合ではコンピューターでは勝手に行わない拡張ファイル属性の「関連付け」も変更(消去)するのだ。

つまり、プロプラノロールでは、側頭葉に蓄えた記憶自体は消去しないが、海馬で付けるインデックスから扁桃核との関連付け(扁桃核大興奮フラグ)と云う拡張ファイル属性を消去する。

これでは「洗脳」には使えない?とお考えだろうか?「情動=感情」と結びついた記憶のインデックスから「関連付け」を消去するだけでも、記憶の重みが変わってくると私は思う。

扁桃核は、不安と恐怖と拒否だけではなく、人間の持つ情動全ての中枢である。因みに、情動と感情の違いとは、情動とは「比較的短期の感情の動き」の事である。人間の情動には、不安・安心、恐怖・大胆、拒否・受容以外にも快・不快や喜び・悲しみと云う情動があり、その瞬間的な情動から長期的な感情が生まれてくるのである。

だから、記憶インデックスから情動への関連付けが消えると、次回には呼び出す事が困難な些細な記憶になる。人の記憶は全感覚を網羅して全件記録されていると聞く・・・だが、大好きな奥さんとの初デートでの会話の内容や彼女の表情は覚えているが、彼女の着ていた服の色やバックで流れていた音楽や背景映像の記憶は・・・呼び出す事が出来ない。勿論、特別に奇抜な服を着ていたとか、大好きな曲が流れていたとか、情動に関するフラグが立っていると、その記憶にもアクセス可能だが、情動のフラグがナニも立っていないインデックスは読み出せない。(記憶術の名人は、この情動フラグを上手く使いこなしていて、意識的か無意識的にか、海馬で付けるインデックスに分類可能な印を付けていくのだそうだ。私自身の体験として、高熱を出す前に・・・未だ平熱の頃に「温かい熱帯の海をノンビリ泳ぐ」と云う本人は未体験のビジョンが見えるのだが、体が高熱に移行する際の何かの変化が海馬のインデックス検索機能を刺激して体験させるのだろう。)

例えば、悪を憎みショッカーと闘おうと思っていた仮面ライダーの記憶が、「情動=感情」との関連付けを失ったら・・・、正義感に裏打ちされた怒りすら「ま、そんな事も在ったけど、マ、良いか」と成らないだろうか・・・?

PTSDのフラッシュバックに苦しめられている方への福音ではあるが、この元記事を読んでこれは「洗脳」にも使われそうな危険を秘めている・・・と思う私は変だろうか?
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2 コメント

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これまた恐ろしい話で (ポル7)
2010-02-12 11:55:08
また、何とも興味深いお話で・・・・

記憶を消す、薄らげる効果があるのですか
それを聞いた瞬間に恐いと思いました

何でも長所と短所は表裏一体で、良い面があれば必ず悪い面も少なからずあると思うんです。

あの悪いドラッグの代表格の麻薬も、あれ無しで、手術や末期癌患者の痛みを和らげるのは困難だろうし、今題材の薬もPTSDで悩む人には願ってもない薬なのでしょうけど、絶対悪用する人が出てくると思うんですよね
フラッシュバックで苦しむ人は周りには居ませんが、それを知ったのはあの有名なドラマ、「眠れる森」を見てからです。

>不安や恐怖や拒否の情動が無い人間って、石橋を叩いて渡るどころか・・・きっと長生きしそうに無いから・・・子孫を残せず淘汰されてしまったのだろう。

これは小学生の時に思いましたね
どんなことにも恐れずに身体を張ってチャレンジするワンパク坊主っていたけど、いつも大怪我してましたからね。心の中で、こいつは長くないな。と思いましたもん
恐怖を学習したら慎重になりますよね
ただ、知識と想像力がすごいばかりに奥手になり、何事もチャンスを逃してしまう人生もいやです。

あと、この薬がカルトと呼ばれる新興宗教や犯罪、軍事に悪用されないよう、管理して欲しいと思います。
ホント、恐いです
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Re: これまた恐ろしい話で (軽薄な店主)
2010-02-12 12:33:24
ポル7さん、コメント有り難う御座います。

人間の情報処理が、現在主流のノイマン型コンピューターとは異なる非ノイマン型として機能していると耳学問していましたが、記憶管理に関してはゲーツ印のFATシステムに近い処理をしている・・・事に驚きました。但し、中央演算装置って観念ではなく複数分散処理なんでしょうけど・・・。

何れは、人間の側頭葉から任意の記憶を引き出せる様にも成るカモ知れません。

> あと、この薬がカルトと呼ばれる新興宗教や犯罪、軍事に悪用されないよう、管理して欲しいと思います。
> ホント、恐いです

私は知らなかったのですが、この薬はPTSDの予防に以前から使われていたそうで、比較的ありふれた処方薬で、個人輸入でも買えるそうですから・・・

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