「生涯引きこもり」と宣言された私の、超豪華オプション生活

 登校拒否となり、生涯ひきこもりであろうと決めつけられて四半世紀。社会人として生きる記録。#発達障害 #自閉症 #ニート

大原健士郎先生の診察

2015-04-29 15:02:46 | 引きこもりからの復活
 浜松医科大学付属病院を受診したのは、たぶんちょうど四半世紀前。母の運転する車で一時間ほどのところでした。朝の九時の診察開始と同時に待合室横の席で予診と文章完成テストを行い、すぐに心理検査室で矢田部ギルフォード性格検査と鈴木ビネー知能検査、それに内田クレペリン精神検査を行いました。
 ここで少し待ち、大原健士郎先生の診察がありました。直前の高校の制服を着た女の子は先生からびんたされていました。今なら障害者虐待と口うるさく言われますか。
 私の診察時間は約10分。検査結果を見て開口一番「あんたは病気じゃない。病院は病人の来るところ。こんなところ来てはいけない。」と、温かく厳しく叱られたことを覚えています。私が「大学に行き、将来は自立したいと思います」的なことを言うと先生は「思っているだけか。やらないということか。」と厳しく言葉を返されました。今でも自分の意思をしっかり表明するときは「~思います」というあいまいな表現をあまり使わないようにしているのはこの影響です。最後に「問題ない。今井先生のところでしっかり勉強しなさい。」と、押し出してくださりました。

 この診察をもって、私は自分が精神疾患の患者ではなく、このまましっかり勉強して次に進むべきなのだとはっきり自覚しました。また、心理検査担当の判定員の先生のことが気に入り、大学で心理学を学ぶという進路に導かれました。後日心理検査の勉強をして、この先生の手順に少々難があったことを悟りましたが、心理検査では何と言っても被験者とのラポール形成が第一であり、非常にラッキーでした。
 今井先生の迷いもなくなったようで、私のスランプ時にもどっしり腰を構えた対応になりました。

 大原先生は、私には厳しく追い返して今井先生のところでやらせた方がいいと判断されたのですが、私がいっしょに勉強していた思わしくない別の方には入院を宣告されました。ただし引きこもりの深刻なその方にとって入院森田療法は過酷だったようで、無断退院と治療拒否に至りました。

 当時は発達障害という言葉さえありませんでしたし、診断基準も現在とはかなり異なります。大原先生はすでに故人で、精神科診療は先生の主観的判断が全てです。なので現在の浜松医科大学付属病院では私の受診した25年前とは全く異なる対応になると考えられます。
 四半世紀も前のことで、今ほどの医療体制の充実はありませんが、それでも私はこのたった一度の診察を機に、引きこもりから社会人へと人生を転換させたのでした。
 それは精神科専門医でない人の治療ならぬ「受験指導」と、発達障害概念のない状況での最高度の医療機関での完璧ではない医療による成果の貢献するところの大きいものです。

 浜松医大受診の2年位前くらいから母は、名市大精神科や名古屋市内精神科有名クリニック、大妻女子大や中京大の心理相談室に足しげく通っていたり、家族療法が父の不参加で実現しなかったりしていました。私は何度か付き合いましたが、継続してカウンセリングを受ける気にはなれませんでした。
 家族の変化といえば、父が仕事の第一線から退き、定時に帰宅するようになつたことでした。これで母の心が少し落ち着いたと感じました。それくらいです。決して家族や社会が根本的に変化したわけではありません。にもかかわらず私は、引きこもり支援者の「社会や家庭が悪いとひきこもりから抜け出せない」という定説に反し、このような文章を書いているのです。

 今の児童精神医学会のけっこうな勢力の見解は、私のようなものが社会に出ることなど理論的にあり得ないことであり、某経済評論家のご子息と同じ運命であることが当たり前なのです。
 ずっと引きこもり、専門のケアワーカーが複数いないと日常生活が送れない。もちろん向精神薬を常時服薬し続け、時々閉鎖病棟に入院し保護室で安静になるのを待つ。治療目標は「家事をする引きこもり」。家の中で暴れないで、支援施設なのかでただ静かに過ごしてくれて、少し家事でも手伝ってくれれば万々歳。です。これがメジャーな発達障害専門医の描く私の本来のポジションです。

 そういう主流の人生を歩まないで、工場でパワハラに会いうつ状態になった時の主治医のいうところの「狭い道を探して通って」社会人を継続しているのです。
 大原先生の温かく泰然としたイメージをしっかりフラッシュバックさせ、「思っているだけでやらないということか。」「問題ない。しっかりやれ」と鼓舞させつつ、これからも生きていきます。
コメント (4)
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