パル判事の碑文 (靖国神社)
東條英機 宣誓供述書
軍紀の確立に関し私の執った政策
154
五・一五事件、二・二六事件の如き不祥事件の惹起は
軍人の政治関与及徒党的関係の派生を助長せんとする傾向にありましたから、
陸軍としては厳に戒心を加ふる必要を生じました。
二・二六事件の当時私は陸軍憲兵隊司令官を勤務して居りましたが、
この事件に関係ある在満在留邦人及駐満軍隊を通し其の関係者、容疑者を一挙に検挙し
軍紀の振粛と治安の確立に尽力しました。
二・二六事件の直後寺内陸相は特に軍機の粛正を断行し、
軍人の政治関与を厳禁すると共に軍内の派閥的関係の生起することを厳に戒むるの方針をとりました。
其後の歴代陸相は皆此の方針を継承したものであります。私も亦陸相として此の方針を堅持しました。
軍内に徒党的関係の発生するを防止するため人事行政に於ては個人的の親疎を以て人事に影響せしめず、
専ら個人の才能、経歴を重視し適材を適所に配置することに努めたのであります。
又軍の本質に鑑み組織の活用を重視しました。
即ち組織の中に於ける各職責を尊重し、命令系統其他業務系統を正しく運用することに努めたのであります。
又軍人の政治関与は厳に之を抑制しました。
特に私の内閣総理大臣に就任して後は
内閣の業務と陸軍省の業務とは裁然之を区別して厳に之を区別して両者の混淆を防止し、
苟も両者相互の干渉容喙なからしめました。
故に私の陸相及首相の間日本の政治体制は総動員又は総力戦体制であったのは事実であるけれども、
軍閥の政治支配又は指導ということはなかったのであります。