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下宿物語 第2話

2005-05-23 | 下宿物語
 下宿に入ると,めちゃくちゃにばあさんをしている大家であるばあさんが出迎えてくれた。挨拶を交わす間,その土地の方言と年寄りの言葉で何度も意味が分からないシーンがあって,お互いに戸惑うことがあったものの,ばあさんの優しい目が余計な言葉を必要としていなかった。

ばあさんの第一声,「けぇー!」と云う言葉だった。

何の意味か分からないでいると,もてなしにと,いきなり漬け物,茶菓子,ビール,ぼた餅が目の前に並べられた。どうやら「遠慮せず食え!」と云う意味だったらしい。 その下宿のばあさんの名は「セン」と云い、すでに他界して、もう決して会うことは叶わない。彼女との出会いは、かれこれ25年ほど前になる。明治37年生まれの矍鑠たるばあさんであった。子供の頃は,おしんのドラマさながら,子守をしながら小学校の教室を覗き,16歳で戦前死別した旦那の元へ嫁入りした。20歳過ぎからリウマチを患い,病気と闘いながら妻と母を両立させ,辛い時期を経て,その後旅館の仲居をしながら生計を立てて子供を育てあげた苦労人である。激動の世界を生き,満足に小学校すら出てはいなかったため,簡単な漢字とカタカナしか書くことはできなかった。でも,ばあさんは,その簡単な漢字とカタカナを駆使して,多くのやさしい手紙や伝言を書いていた。電話帳,置き手紙,特に印象的だったのは,バレンタインの時のメッセージ,これはまた後日詳しく話すことにします。

(つづく)
コメント (1)
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