昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十四)の二

2011-08-23 21:41:18 | 小説
「怒りが収まらないようだったら、これを見せて。」と、小夜子から手紙を預かっている。
「茂作さん。小夜子さんから、これを預かってきました。」
小夜子、という文字を見た途端、茂作翁の表情が一変した。柔和な表情で、
「そうかそうか、小夜子からわしにのう。うんうん、小夜子の文字じゃのう。」

お父さんへ
ありがとう!お父さん。小夜子、とっても嬉しいの!
お父さんのおかげで、ステキな体験をしています。
ステキなモデルさんとお友だちになれました。
お父さん、大好き!            
小夜子

読み終えた茂作翁から大きなため息が洩れた。
「そうか、喜んでいるか。
そんなに喜んでいるのか・・。
正三!ほんとに大丈夫なんじゃな。
何かあったら、責任取らせるぞ。」
「大丈夫ですよ、茂作さん。
えっ!?責任?責任取ります、取らせて貰います。
ありがとうございます。」
床に頭をこすり付ける正三に、
「ちょっと待て。
何かあったら、のことだぞ。」と、茂作翁が念を押した。
「大丈夫です、きちんと責任取りますから。」
「だから、何かあったらだと言ってるだろうが。」
しかし正三の耳には、入らなかった。
「そうですか、責任をね。
それじゃ、そういうことで。」と、上の空で辞した。
「まぁのう、佐伯本家の跡取りでもあるし、良しとするかのう。
しかし小夜子にも困ったものよ。
チャラチャラした娘にならんけりゃ、いいんじゃが。」


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