昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十四)の三

2011-08-24 21:16:14 | 小説
「ただいま、お父さん。楽しかった、ありがとうね。
今度はね、お父さんもご一緒にどうぞだって。
来年の早い時期に来れるようにするからって。
あたしは、絶対英会話が出来るようになってなきゃ。」
キャッキャッとはしゃぎ回る小夜子に、茂作翁はにこやかな表情を見せるだけだった。
昨日までの、いや小夜子が帰って来るまでの憔悴しきった顔が、
「ただいまぁ」の声と共に、消え去った。
一気に生気が戻った。
小夜子にはこの三日間の、茂作翁の苦悩が分からない。
寂しさ、苛立ち、不安、怒り、そして、そして、怖れ。
“このまま帰って来ないのじゃ?澄江のように、このまま・・。”
小夜子の声を顔を見た途端、その怖れが消えた。
「小夜子、小夜子、よぉ戻ったのぉ。」
初めて見る気弱な茂作翁に、奇異な感じを受ける小夜子だった。
「どうしちゃったの?帰るに決まってるでしょうが。
正三さんから聞いてくれたんでしょ?変なの。」


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