昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[アンサー] もう一つの、愛・地獄変

2012-07-14 16:55:34 | 小説
ある出版社の編集者にご指摘を受けました。
「妙子の父親は、誰?」
「秘密のままに終わらせるのもいいけれど、真実を暗示するエピソードを残すのもありでは…」

なるほど、と思いつつも、これ以上の加筆はためらわれて。
で思いついたのが、[アンサー]でした。

元々、小夜子の立場からの「愛・地獄変」もありか、と考えていたのです。

ようやく大まかなストーリーが出来上がり、とりあえず導入部を書いてみました。
どんなんでっしゃろか?

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僧侶の読経が終わり、少しばかりの説教話があって、松夫さんのお礼の言葉が始まりました。

「本日は、とんだ飛び入りのお客さまがありまして、皆さまには大変驚かれたことと思います。
認知症のご老人の言葉ですので、どこまで信用して良いのか分かりません。
がどうぞ、他の場所でこの話はなさりませんよう、お願いいたします。
どこからご当人やらご家族の耳に入らぬとも限りません。
そしてそのことで、どのような災いが降りかかるやもしれません。
どうぞ、ご他言なきよう、お願いいたします。
さて、改めまして、
本日は坂田松太郎七回忌法要にご参列頂きまして、まことにありがとう存じます。」

「松夫。もういい、挨拶は。
時間が遅くなっておる。お開きじゃ、お開きじゃ。」

大叔父の善三さんが、声も大きく言われます。
皆さま方も、うんうんと頷かれておいでです。
かく言う私にしましても、この後に予定があります。

「では皆さん、本日は、まことにありがとう存じました。」

深々と一礼を、松夫さんがされました。
私たちも「それじゃ、これで。」と、互いに声を掛け合いながら腰を上げました。
と、その時です。

薄暗い縁側に、ぼーっと浮かび上がった女性らしき方が、座っておられるのです。
白いお着物姿の女性で、まったく見覚えのないお方でございます。

「はて、どこのお人でしょうか……」

皆さん、口々におっしゃいます。

「皆さま、先ほどは大変失礼いたしました。
もしよろしければ、あたくしの話も聞いて頂きたいのですが。
申し遅れました、あたくし、梅村小夜子と申します。
はい、先ほどの正夫の妻でございます。」


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