昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (四)結局のところ

2024-10-12 08:00:29 | 物語り

結局のところ、わたしのプライバシーは丸裸にされてしまった。
そしてその結論が
「キチンとした方ねえ。行くいくは、自治会の役員さんね」となり
「この棟一番の、お洒落さんよ」と決めつけられてしまった。

ネクタイを締めているからということで、お洒落しているということになってしまった。
前のアパートでは、熱い夏のさかりなどはトランクス一枚で過ごしていた。
窓を全開にしドアもすこしだが開けて、風の通り道を作っていた。
だから部屋のなかは、外から丸見えだ。しかしなにも気にすることはない。
となりの住人も上下階の住人も皆、男ども皆がそのスタイルだったから、それが当たり前となっていた。

ここだけの話、夜などは、♪風に吹かれて、ぶーらぶら♪状態だ。
じつに気持ちがよく「良くぞ男に生まれけり」と、男の特権を満喫していた。
それがここに移り住んでからは、行儀よくせねばならない。
もういちど前のアパートに戻りたいと思わぬでもない。
しかし、低家賃だから、とおのれを納得させた。

話をもどして、早朝のドアをたたく音のことだ。
「どなた? どなた?」
二度ほど声をかけてみたが、なんの返事もない。
ドアスコープからのぞいてみたが、ひとが立っているようすはない。
やむなくロックをはずして開けてみた。やはり、誰もいない。

ドアの郵便受けに回覧板を見つけた、どうやらおとなりさんだたようだ。
いちいちドアをノックしなくても良さそうものなのに、と少々苛立った。
たしかに「互いに声をかけあいましょう」と、自治会で決議されはしたけれども。
大げさなことをと思いはしたが、役員連の真剣さに気圧されて賛成してしまった。

しかしそんなことにいちいち目くじらを立てていては、この団地で平穏な生活などできはしない。
隠忍自重、いんにんじちょうと、ことあるごとにおのれに言い聞かせている。



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