長編恋愛小説 ～水たまりの中の青空～（十七）はあーい、先生おやすみい

「お先でした。あゝ、良いお湯でした。でも、湯冷めしそうねえ。もう一度入り直しますわ、後で」
「ふうぅ、あつい‥‥」

母親の後ろから、パジャマ姿に着替えた由香里が出て来た。
パジャマを通して、湯気が出ている。
肌が少し赤くなっているところを見ると、相当に熱い湯だったのだろう。

母親もまた、上気した顔をしている。
厚手のバスローブで、胸元をしっかりと合わせている。
彼の前と言うだけでなく、寒さ対策といった風だ。

「良いなあ、お母さんは…。バスローブの上からでも、しっかり分かるものね。由香里なんかパジャマなのに、こんな‥‥」
母親の胸を見ながら、しみじみと言った。
「何ですね、この子は。先生の前で」
困った顔を見せながら、由香里を軽く睨んだ。

「だってホントだもん。お父さんも、そう思うでしょ？　幸せものね、お父さんは。こんなステキなお母さんで」
「ハハハ、その通りだ。でも、それだけじゃないぞ、料理も天下一品だ。
由香里も旦那さんに、美味しい料理を作って上げるんだな。」
破顔一笑で、父親が応じた。

「はいはい、分かりましたよ。お世辞のお礼に、ビールの追加ですね？」
「さすが母さんだ、話が早い！」
「由香里ちゃん、もう寝なさい。湯冷めして風邪ひきますよ」
「はあーい、先生おやすみい」
「お休み！」