昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)口々に歓迎の声が上がった

2015-11-26 09:03:39 | 小説
車のライトの中に、佐知子の姿が浮かび上がった。夫を心配する、新妻そのものだった。
「あいつ、こんな寒空に‥‥」
木は、車のスピードを上げた。佐知子の前で急停車して、
「何で、外に出てくるんだよ。風邪をひいたらどうするんだ!」と、怒鳴りつけた。

「だって‥‥」
「あゝ、分かったよ。ほら、中に入れよ」
続いて車から降りた彼は、佐知子に声をかけた。
「申し訳ない」
「久しぶり。待ってるわ、みんな。さっ、入って」

恋人を待ちかねたように彼の手を取ると、彼を中に引き入れた。
その手の冷たさに、この寒さの中で待ち続けていた時間が感じられた。
〝これが牧子さんだったら‥‥〟
思わず、抱きしめたいと思ってしまった。

「着いたわよお、みんなあ」
佐知子の声に対し、口々に歓迎の声が上がった。
「おおー!」
「おそーい!」
「あなた~ん、はやくうぅ」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿