昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三)

2010-10-28 22:45:19 | 小説
針のような鼻毛を抜きながら、
しゃれこうべの積み上げられた椅子に、
閻魔大王が腰をかけているのでございます。
そしてその横には、
勿論
赤鬼・青鬼とが立っております。

何しろ薄暗い洞窟の中のことでございます。
ろうそくが一本だけなのでございます。
が、
そのろうそくにしましても
目が慣れてくるに従いまして、
・・・いかにも赤いのでございます。
そして、
燭台の色が
黒みがかった紺色に
見えてくるのでございます。

更に目をこらしますと、
あろうことか
蛇になっているのでございます。
そして、炎が、
真っ赤な炎だと思っていたものが、
実は蛇の舌だったのでございます。

私はたまらず、
天井に目を移しました。

と、
コウモリとも猿とも似つかぬ獣が、
口を真っ赤に濡らし、
又異妖な純白色の牙を
覗かせているのでございます。

そしてその獣の目といえば、
爛々と輝き
今にも飛びかかってきそうにも
思えるのでございます。

背には赤黒い羽根をたたみ、
同じく赤黒い尾を、
岩の裂け目に
突っ込んでいるのでございます。

一匹ではございません。
数知れなくでございます。

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