昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ボク、みつけたよ! (二)

2021-09-11 08:00:35 | 物語り
「実は……。もう一点、4Kチューナーをご購入して頂くことになります」。
おいおい、話が違うだろうが。で、いくらするの? という話ですが、これまた五桁の金額で。
心が折れました、大きな音が頭の中で響きました。
まだ残暑の名残りが残っていたのですが、ピューピューと身体の中を木枯らしが吹き荒んでいる感じです。
多分肩を落として、背中が15度ほど曲がった状態で店を出たと思います。

 話が違うじゃないか、というご指摘、ごもっともです。
「買い求めた」と、冒頭でお話ししました。ですので、少し補足をしなければなりません。
このエピソードは、数年前の秋の十月の話です。買い求めたというのは、昨年末のことです。
悩みに悩み、うじうじと考え続け、コロナ禍のおかげで外に飛び出すことも出来ずに、とうとう……。
清水の舞台から飛び降りたのは事実です。

 幾ばくかの年金と、半日仕事の派遣仕事による収入です。
預金も、先日飛び出した二千万円などには到底及びません。
桁が一つ違います。ですので、まだまだ働き続けねばならないのです。
本来は無理な買い物なのです。分不相応だとは分かっています。
頂く給料の6ヶ月分が飛んでいきます。
分割? 出ていく金額が金利の分だけ上がるじゃないですか。
通帳における現金不足というわけではありませんので。

 そもそもが、そんな高精細な画像など不必要なことでしょう。
現在のハイビジョンテレビでも十分にきれいな画像なのですから。
あと何年生きられるやらも分かりません。
同僚には「手相によると百歳越えするんじゃ」と豪語していますが。
というのも、生命線当たる筋が手首にまで達して、手のひらの端っこにまで達しているのです。
占い師によってその説明は若干違いますが、生命力が強いということが書かれています。

 完全リタイヤ後も、少なくとも20年は生き続けるわけです。
年金だけではとてものことに生活を維持することは出来ませんからねえ。
ですので、毎月幾ばくかの金員を、この年になってまでも貯蓄せねばならぬのですよ。
なのに、なのに……。わたしの非常識さが、このことにもその一端が出ていますね。
がしかし、どうしてもあの精微な画像を忘れることが出来ず……。
美術館巡りにお金を遣うことを考えれば、と決断したわけです。

 他には……、やはりないですね。
わたしが遺したいと思うものは、趣味で書いている小説やら詩などは、今はネット世界というありがたい代物もありますしね。
いつまでネット世界で生き続けてくれるかどうかは分かりませんが、
誰か一人でもわたしの作品を気に入ってくれて記憶に留めてもらえれば、
それで十分だという意識もあります。
無論、それがより多くの人ならば、それにこしたことはありません。


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