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活動写真放浪家人生

活動写真を観ながら全国放浪の旅ちう

ヨコハマメリー

2006年06月06日 22時00分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Photo_32 <テアトル梅田>

映画には「ドキュメンタリー」というジャンルがある。このジャンルの大変さは、撮り終えてから構成、台本を書くことである。順番がテレコにされると、構成は気がおかしくなるほど、考えあぐねばならない。私はこの経験を何度か体験している。膨大な撮りテープ、何千枚の写真、一人2時間で何十人のインタビュー。これをそのままつなげると、長い場合、100時間をこえる。構成、台本、テロップ、そして最も頼るべきは編集技術である。編集者のセンスを必要とする。編集するエディターのセンスで、折角の秀作を凡作にされることもあるし、凡作だと思っていたものが輝きを放つこともある。

私は「チラシ」のデザインと裏の解説を読み「変なもの見たさ」で映画館に向かった。動機は不純だが、それでいいと思っている。「怖いもの見たさ」「他人の一生を見てみたい」「変な世界を覗きたい」・・・映画を観たいと欲するのは、そんな単純な動機であるはずだ。それは「反戦映画」でも「愛や死をみつめる映画」でも「感動的なエンディングが待ち構えている映画」でも同じことだ。「なぜ、それを観るの?」と聞かれれば、総じて「面白そうだから。」と言うしかない。「暇つぶしに」もあるし「目的の映画を観る時間までのつなぎ」なんてこともある。観る動機に正当性なんていらない。不純であるべきで、面白そうだから、でいいのだ。観る動機に、なぜ観るのか、理屈を述べる人もいるが、聞くのに時間の無駄だ。そして私は「変なもの見たさ」でレイトショーへやってきた。

一週間ロードが、二週間になっている。・・・ケチのつけようがない、ドキュメントの秀作である。どれくらいのテープが回ったのかわからないが、何年も撮りためたものをわずか80分に編集している。私はこの80分を食い入るように観た。DVCAMで撮られており、4:3比率のテレビサイズだが、そんなことも忘れる凄い映画だ。「凄い」「観てよかった」「感情がゆらゆら揺れ動いた」・・・端的に言えば、そうなる。ただ、80分とは短い。短いからワンカットも無駄がないが、もう少し観たい。20分・・・いや、10分でも構わないから、もっとこの世界に浸りたい。ドキュメンタリーというジャンルの中で、そう思わせる作品は、私にはこれまで無かった。「ヨコハマメリー」という人物をもっと掘り起こすことはできないか。掘ってほしい。DVDで長尺のディレクターズカットが出ないかと思うが、無理だろう。DVDにもなるかどうか。観たい。もっと観たい。いい素材を掴み、ドキュメンタリーにしてくれた。現在の「メリーさん」を写し出したことは奇跡のようなエンディング。満点をつけたいが、もっと観たいと思っているうちにエンディングとなった。もっと観たいのに終わるなんて。私は、金魚のフンになった気持ちで家路に着いた。書いている今も金魚からフンは離れない。<90点>

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かもめ食堂

2006年04月20日 23時00分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Kamomeshokudoh_1 <梅田ガーデンシネマ>

Kamomeshonicht_1 ←かもめ食堂舞台挨拶初日風景。徹夜組もいたという。(青木美奈子女史提供)

私は監督の前作「バーバー吉野」「恋は五・七・五!」をまったく評価していない。「バーバー吉野」は奇抜なアイデアだが、もたいまさこの存在に助けられただけの凡作だった。楽しみにしていたから尚更、がっくりきた。「恋は五・七・五!」はそれを下回る青春映画だ。評価のしようがない。 だから、本作も観るつもりはなかった。よくまあ、第二回監督作品にありつけたものだと思っていた。初日の舞台挨拶は、朝の8時30分からチケット販売だというのに、行ってみると、観客が映画館をぐるりととりまいていたという。初日の朝10時には夜の回まで売り切れ。単館としては異例だ。「ホテル・ルワンダ」も異常だった。口コミで広がった「ホテル・ルワンダ」だが、本作は、初日なのに満員御礼。私にはわからない。

「バーバー吉野」から荻上直美に何があったのか・・・180度、違った。「かもめ食堂」は、違う監督が撮ったのではないかと思う程の秀作だった。目には見えないが、スクリーンにそよぐ心地良い風を感じる。その風が2時間、そよぎ続けた。まだまだ2時間くらい観たかった。熱っぽく最悪の体調だったが、観ている間、それをも忘れた。小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの個性も損なうことなく、いやそれ以上に個性を出し合い、その上、潰しあってない。生きている。優れた女優陣が、もっと優れている。片桐はいりを久しぶりに見て、昔、そういえばインタビュー取材をしたことを思い出した。あれから20年近くになる。まだかけだしの女優だった。一度見たら忘れない顔立ちだ。 脚本も優れていることが観ていて読み取れる。また、台詞も気が利いている。いい会話だ。台詞はいいのに構成がダメ、構成はいいのに台詞がダメという映画はいっぱいある。「かもめ食堂」は、そのどちらもが上手く、巧みだ。 黙ったままで働く姿から会話までの間、タイミングも心地がいい。そして、カメラをフィックスとしたワンカット仕上げも多く出てくるが、シーンによってハンディを使う。時間や心理や状況にあわせてカメラワークを使い分けている。さらに、ラスト近く、1シーンのみ画の色がブルーになる。極端に変わる。知られずにエピソードを語りたいのだろうが、はっきりわかる。これによって、観るものに緊張感を与えているのだ。 しかし、単調な内容なのに、ここまで観るものをひきつける邦画は、最近、見ない。とんでもなく素晴らしい映画だった。「バーバー吉野」は広いロケ地で閉鎖的な作品だったが、「かもめ食堂」は狭い空間で開放的な作品だ。まさに対照的。

しかしもうゴタクは言わない。拍手するのみ。観ないで死ななくてよかった。<90点>

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プロデューサーズ

2006年03月28日 23時50分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Producers_1 <試写>

ブロードウェイであろうがオリジナルであろうが、久しぶりのミュージカル映画がやってきた。試写は好きではないが、「ネイサン・レイン」と聞いて、どうしても浮き足立ってやってきた。

ストーリー、構成、キャスティング、ふんだんな笑い、スピーディな進行、そしてミュージック。どれをとっても文句のつけようがないエンターテイメント作品に仕上がっている。それにしても、作品の質を損なわないようにする為にも、字幕は大変な作業だったろう。ネイサン・レインはなかなか映画に出てくれないが、出る作品は間違いないと思っているので、上映前から安心していた。しかし、その期待を良い意味で裏切る作品になっていた。自分、仕事、時をわすれさせてくれる。これほどのエンターテイメント映画は昨今、ないような気がする。目いっぱい、観客を楽しませてくれた。 エンドロールスーパーが流れた後、再び、ミュージカルカットが出てくる。最後の最後に美女に囲まれた本作のプロデューサー「メル・ブルックス」が『もう終わりだ。帰ってくれ。』という。本物のプロデューサーが最後に出てくるなんて、なんとも粋な終わり方だ。

「メルブルックスの世界史-十戒」なんて、もう誰も知らないだろう。<一枚の石板に十戒が書かれている。二枚で二十戒が本当なのだ。歴史では二十戒だったのに・・・十戒を書いた二枚の石板を用意したが、一枚床に落としてしまって・・・二十戒のうちの半分が砕けて散った。もう、やめた。このさい、十戒にしよう!二十戒だったなんて、誰にも言ってはならぬぞ。>なんて、とんでもないブラックジョークを思い出す。その頃から・・・もう30年になるか・・・。メル・ブルックスはおじいちゃんになったなと思ったが、最後の最後に一笑いさせてくれる。まだまだ現役だ。<90点>

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グッバイ、レーニン!

2006年03月10日 23時00分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Photo_1 <タナベキネマ>

2年前に観た作品である。私は第3位に本作を選んだ。もう一度観たいと思っていた映画だったから、二番館に迷わず出かけた。・・・思えば二番館も少なくなった。ひと時に比べたら、ほぼ絶滅といっていい。こんなにいい映画を多くの人が観ないで過ぎていくのが残念だ。映画ファンは東京、名古屋、大阪の大都市だけではない。地方都市にも単館を増やしてほしいが、大都市でも潰れてしまう、休館してしまう単館が多い中で、厳しい問題だ。 いい映画だ。二年ぶりに返り咲いたのは奇跡のようだ。余っていたのか、安く仕入れたのか・・・理由はどうでもいい。もう一度、出会えたことに感謝したい。 <90点>


イノセント・ボイス 12歳の戦争

2006年03月03日 23時00分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Inocentesvoice_1 <梅田ガーデンシネマ>

恥ずかしながら、私はエルサルバドルの内戦を一滴すら知らなかった。1年で30万人の少年兵が生まれる世界を。 ただただひたすらに、息を殺してスクリーンを見つめた。美しい風景の中に飛交う弾丸、バズーガ砲、手榴弾・・・少年たちとその家族と周りの大人たちの目を見て、言葉をじっと聞いていた。人の緊張感の持続には限界があるが、2時間、緊張感は続いた。 主演少年の輝く瞳が印象的であり、それに反して、内戦の惨状を隠さずに出している。子供たちは惨状の中、それでも輝いている。 ところがこれは、よくある反戦映画ではないことに気づく。真実の物語として、ただ、世界中の人に知ってもらいたいという脚本ではないか・・そう思った。反戦、反戦と押し付けがましくない姿勢が伝わってくる。だからこそ、瞬きも忘れて戦争の恐ろしさを頭に叩き込まれた。 また、作風が変わっていて、子供たちの目線から描かれている。とても丁寧に描かれている。表現のしようがないが、私としては、体のいろいろなところを針で突付かれながら観ている気がした。観てよかった。観なければ、死ぬまで現実を知らなかった。 落ち着いた撮り方とハンディ(カメリハではないかと思わせるカット)の撮り方が交じり合って、編集によって緊張感を高めている。美しく恐ろしい映画だ。(90点)


疾走

2006年02月18日 23時23分45秒 | 90点以上(2006.2007)

Shissou_1 <ホクテンザ2>

見逃した映画を二番館で上映してくれた。天六ユウラク、ホクテンザ1、ホクテンザ2は、昔からA級、B級、どこからもってきたのかわからないような作品など、独自の配給をしてきた。それも、どの映画館も二本立てが主流だった。この3年ばかり一本立となり、この1年ばかり番館落ちが主流になっている。この日の3作品は「疾走」「ALLWAYS三丁目の夕日」「ファイナル・カット(2004)」の一本立で、単館として独自に上映しているのは1作品のみだ。実に寂しい。番館落ちも嬉しいが、系列の国名小劇も無くなったことだし、独自の路線は守ってほしかった。 原作がしっかりしているからか「疾走」は見ごたえたっぷりだった。肩に力を入れ、息を殺し、スクリーンをじっと見つめ、瞬く間に二時間が過ぎていった。ゆっくりした調子であるのに展開が速い。自ら、他者から人生を左右する出来事が、スクリーンいっぱい、矢のように降ってくる。しかし、カメラは冷静にみつめる。構成もシナリオも・・・上手いと思う。観終えた後、しばらく喋りたくなかった。大事に心の奥に刻み付けたい気持ちになった。<90点>


白い巨塔(1966)

2006年02月04日 23時47分00秒 | 90点以上(2006.2007)

006_2_1 第一回おおさかフィルムフェスティバル<大阪市立鶴見区民センター大ホール>

昨年、ドラマ化されたが、この映画が発端である。田宮二郎は、後、テレビ版でも同じ役を演じ、撮影アップを待ち、オンエアが終わらぬある日、自殺をした。テレビ放送中、テレビ画面に「田宮二郎さんのご冥福をお祈りいたします」と、テロップが出たのを、子供ながら衝撃を受けた記憶がある。 どの作品にしても、リメイク、テレビ版が上回ることはない。前年に放送された「砂の器」は、あまりにもひど過ぎた。視聴率さえ良ければいいのだろうが、松本清張も天国で奥歯をかみ締めているのではないだろうか。 1966年に制作された「白い巨塔」は、観客に息をさせてくれないほどの見事な作品である。医学会のどろどろした人間模様が、ハイスピードで展開する。途中、トイレに行きたいことに気づいたが、席を離れるわけにはいかなかった。登場人物が多いが、上下関係、仲間も混乱しないように工夫してある。高い質の脚本にもあるが、演じる人、それぞれに個性があり、迫力があり、なりきっている。本当に・・・日本の俳優はどこへ行ってったのか。<90点>


いつか読書する日

2006年01月07日 22時00分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Itukadoksyosuruhi_1 <第七藝術劇場>

この頃の田中裕子主演映画は秀作が多い。中でも本作は「愛らしく」「切なく」「淋しく」「爽やかで」「温かい」。淡々とした前半部分も冷たくピンッと張った空気を流してくれるし、徐々に明らかになる二人の恋には、他の作品には見られぬ緊張感が漂う。岸部一徳も仁科亜希子もいい。そして、本当にいそうな生活観のある牛乳屋の左右田一平もいい。おじさんとおばさんの長い長い恋物語だが、私は緊張感からか、手をコブシにして、懸命に握り締めて観ていた。汗ばんだ。 こういう映画こそ、全国一斉封切にしてもらえばと思う。あまりにも興行成績にこだわりすぎて、配給会社と映画館(単館)との考えのギャップが大きすぎる。<90点>