28万人都市の下関市(人口はどんどん減っている傾向にあり)は映画館が1つ、2スクリーンしかない。だが、そんな下関からわずか500m、海を隔てた98万人都市の北九州市(人口は穏やかに減っている傾向にあり)には、4つのシネコンがと1つの名画座がある。スクリーンの総数は38である。人口に対するスクリーンの割合は、下関市が14万人に1つのスクリーン、北九州市が2万6千人に1つのスクリーンということになる。下関市にはポルノ映画館が消え、北九州市にはいくつかは残っているので、それを足せば、いや足さなくとも、もう、下関市の映画館の灯りは、線香花火が落ちる寸前のチョロチョロだろう。
私がいつも通う「小倉」から、鹿児島本線でわずか10分足らずの「戸畑」駅前に、『ワーナーマイカルシネマズ戸畑』があることは知っていた。知ってはいたけど、なかなか足を運ぶ機会がなかった。このシネコンは、全国系の封切館で、わざわざ足をのばさずとも、小倉で鑑賞できる作品ばかりがかかっているからだ。しかし、今日は別の所用があり、この駅に降り立った。門司で乗り換えると、快速で15分だ。快速は途中駅を通過するので、小倉から2つ目の停車駅だった。こんなに近かったのかと思う。ホームに降り立つと、若戸大橋が見えた。古くは「神様のくれた赤ん坊」、最近では「サッドヴァケイション」に登場する朱塗りのつり橋だ。私は観ていないが、「おっぱいバレー」にも出ているかもしれない。この辺りが舞台になっている。昔はこのつり橋を歩くことができたが、交通量が多くなり、歩道を車道に変更し、今は歩けないのだという。「神様のくれた赤ん坊」のラストで、渡瀬恒彦と桃井かおりが歩くシーンがみられる。
以前は、古びて寂れた印象のある駅前だったらしいが、現在の戸畑駅前は、洒落た感じの建物が並び、清潔感がある。・・・さて、映画館は?と探す間もなく、サティが目に入る。駅舎とほとんどくっついている。ムービーウォーカーには、駅から徒歩1分と書かれていたが、サティの建物内に入るだけだとすれば、20秒もかからない。徒歩1分を計って歩いてみると、意外と距離があるのに気づくが、この場合、歩く時間を与えていない。もしかすると、改札口からテケツまでの距離かな?と思う。
ワーナーマイカルなので、巨大なサティの中に鎮座するハズだ。ビルは4階建てなので、4階部分にあるのだろうと、駅から最も近いエレベーターで上がる。エレベーターの扉が開くと、目の前にシネコンが現れた。私はとても意地が悪いので、ここまでの正確な時間を計る。ロビー前まで1分かからない、50秒だった。親切すぎて、逆に損をしており、こんな書き方では、不動産業はつとまらない。
テケツは4つあるが、客が少ないので、1つしかあいてない。意味なく、ロープが張られ、クネクネとテケツまで歩かされる。バカらしくて時間は計らないが、このクネクネを入れたら、テケツまで1分かも知れぬ。お車は?蔦谷のTポイントは?と訊ねられる。蔦谷のTポイントとの提携は6月で終わり、以降は、ワーナーマイカル独自のサービスでいくらしい。ここでも蔦谷のカードを作ってもらえるが、期日も迫り、下関には残念ながら蔦谷がないので、持つ必要もない。
戸畑駅の改札からサティ内へ、エレベーターで4階へ上がり、テケツに寄り、ロビーへ入ったが、ほとんど人を見かけなかった。ロビー内も閑散としている。アルバイトの数の方が上回っている。平日の地方都市のシネコンはどこでもこういう光景で、先が危ぶまれている。ここ数年、オープンするシネコンもあるけれど、撤退するシネコンも目立つようになってきた。生き残りをかけて、どこもサービスディを充実させて、させすぎているものだから、まともな鑑賞料金1,800円の日を観客は無視している感じがする。シネコンが近くにあるから、シネコン同士が潰し合いをしている観もある。
毎月1日、水曜のレディーディ、シニア、夫婦50、高校生3人1,000円は当たり前になったが、地方のシネコンではどこも、独自の曜日でメンズディを設けている。それにプラスして、カップルディ(シネコンによっては男同士もOK)、毎週何曜日かは会員ならば1,000円、シネコンが決めた毎月何日かは1,000円・・・これがシネコンによってバラバラで、正規料金の1,800円の日がとても少なくなってきた。思えば、1,500円だった前売り券は、いつの間に1,300円でオマケ付になったのだろう。・・・・・このワーナーマイカルシネマズ戸畑は、北九州市のシネコンではどこもやっていない18:00以降の上映は毎日1,000円という観客にとっては有り難い、他のシネコンにとっては迷惑極まるサービスをやっている。会社帰りの18:00以降が最も集客を望めるはずなのに、どれを観ても1,000円である。所用で来たのだが、もうすぐ18:00・・・これは観なければなるまい。映画料金になんの抵抗のないハズの私なのに、サービス合戦を見ていると、どーしても1,000円の日や時間を意識してくるようになった。まともな土日に足が向かなくなり、どうもセコイ。
サティを一周すると、裏手の駐車場入り口にワーナーの看板が立っていた。戸畑駅側は地味であるのに、駐車場側は、映画館はこちら!という意識ある看板だ。今や二酸化炭素をばらまく車社会。玄関は、電車でやってくる客の方を向いてくれない。 駅前から歩いても人影はまばらだったが、こちらは車がひっきりなしの入出庫状態である。警備員も忙しい。
サティ内の中華屋で、ラーメンと餃子とチャーハンの夕食を済ませ、「お買い物中毒な私!」の上映時間5分前に着席した。人の多いときには全席指定なのだろうが、私のいただいたチケットには「自由席」と記してあった。観客は私を含めて5人だった。5人だから、この上映の売り上げは5,000円である。
<ワーナーマイカルシネマズ戸畑>
33歳のアイラ・フィッシャーが、破天荒でキュートな25歳の重度のお買い物依存症の女性を演じている。若いなと思う。15枚もカードを持ち、欲しい物は何でも買ってしまう。とても支払えない毎月の返済で、逃げ回る日々。これを断ち切ることができるか?・・・そこに興味がいくが、結末は読めてしまう。加えて、仕事や親友や恋、人間関係のややこしい問題など、いっぱいこまかなエピソードが雑多に出てくるけれど、どれも消化不良気味で、平坦で味気ない。快活に生きる女性を描くコメディとしては、冴えた映画ではない。原作は評判で、ベストセラーらしいから、脚本が下手なのか、演出が下手なのか、映画だけでは何の魅力も感じない。
同じ脚本で映画とするならば、アイラ・フィッシャーが、若かりし頃のゴールディ・ホーンだったらどうだろうか?と私は思った。この役は、ゴールディ・ホーンが適役だ。計算しているつもりでもバレバレで、うまく騙したと思ってもすぐに見破られ、破天荒極まり、それでいてキュート・・・ボリュームある金髪と屈託のない笑顔がさらにそれを際立たせる。現在のハリウッドには、そんな女優はいないかな?いくら頑張ってみても、アイラ・フィッシャーの賢さが伝わってきて、演じている観があるのが、残念であった。 <40点>
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