桂木嶺のGO TO THE THEATER!~Life is beautiful!~

歌舞伎中心とした演劇・クラシック音楽・美術展・映画など芸術全般のレビューを書きます。優れた芸術は応援します!

名優の面影、かつらぎ篇 ~(その2)森繫久彌さん~

2017-05-09 00:21:14 | 芝居のエッセイ

もう、いわずもがなの名優中の名優でいらっしゃいます。

森繁久彌さんですね

わたしが小さいころからもう大スターでいらっしゃいましたし、

私がとある映画会社に入ったころには、

超~~~~雲の上の存在で、「森繫先生」とみなさん呼んでおられたくらい、

尊敬を集める存在でいらっしゃいました。

 

映画・演劇・テレビ・ラジオと輝かしい功績を残されていますが、

わたしが森繫さんの舞台を初めて拝見したのは、

12歳のとき、1981年正月の帝国劇場の「華麗なる遺産」でした。

山田五十鈴さん、西郷輝彦さんとの共演で、

もうワクワクしながら見に行ったものでした。

 

じつは小さいとき、西郷輝彦さんが大好きでした(^^)

「江戸を斬る」という時代劇が大変人気を博していて、

西郷さんが遠山の金さんで、森繫さんが水戸斉昭公を演じておられました。

それで私は森繫さんの存在を知ったのですが、

とにかく西郷さんが見に行きたい一心で、

お正月のお年玉をためて、自分で帝劇のチケットを買いに行きました。

 

で、この舞台が小幡欣治さんの傑作だったわけですが、

「日本のまつり」をテーマに、失われつつある「まつり」のよさをまもる

男と女を演じたのが、森繫さんと五十鈴さんでした。

お目当ては西郷さんだったのですが、緩急自在、あうんの呼吸で繰り広げられる

森繫さんと五十鈴さんの演技合戦に、すっかり感激してかえってきたのを思い出します。

 

その後は、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「佐渡島他吉の生涯」などなど

多数の名舞台を拝見させていただきました。

特に「屋根の上のヴァイオリン弾き」は何度も見に行きましたし、

テヴィエといえば、やはり森繫さんだなぁという気がいたします。

流浪するユダヤ系ロシア人のかなしみが、

終戦後混乱する日本人の姿と重なりあうようで、胸が熱くなりました。

(もちろん、市村正親さんもすばらしいのですが!!)

サインも人づてにいただいたことがあるのですが、

あまりの達筆ぶりにビックリした思い出があります。

 

映画のほうでは、かれの代表作でもある「社長」シリーズは・・実はあまり印象になくて、

会社に入ってから見たのですが、「こんなにのんきな社長でこの会社よくつぶれないなぁ(笑)」と

クールにみていたものでした。

むしろ「海峡」とか「流転の海」、「小説吉田学校」の吉田茂宰相など、

スケールの大きな役も堂々とこなせてしまう演技力にすっかり脱帽していました。

 

実際、ナマの森繫さん(というのも勇気がいって、やっぱり森繫先生とおよびしてしまうのですが)を

お見掛けすることができたのは、会社にはいってからで、

とある映画の完成披露試写会と、日本アカデミー賞授賞式だったように記憶しています。

もうそのころは、あまりにも巨匠でいらして、

付き人の方が何人もおられ、話しかけるなんてとんでもない雰囲気でした

 

私はまだヒヨコ宣伝マンで、お茶くみ係をしていたのですが、

おそるおそる近づいて、「なにを飲まれますか?」と尋ねるので精一杯でした(苦笑)。

でも、とてもおだやかな笑顔で「ホットレモンティーでいいよ(^^)/」とおっしゃってくださり、

それだけで、すっかり感激しておりました

こんなヒヨコ宣伝マンにも、やさしく、いろいろ気遣ってくださる方でした。

感謝しております。

 

歌舞伎を私はいまはもっぱら見ていますが、

ある意味、一時代の映画・テレビ・演劇・ラジオの良心ともいうべき存在でいらっしゃったので、

とても尊敬する俳優さんのひとりです。

こういう気概をもつ精神を、若い役者さん、演出家さんたちがうけついで、

よりよいお芝居・ドラマ・映画・番組を作っていただきたいと願っています

 

 



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