桂木嶺のGO TO THE THEATER!~Life is beautiful!~

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名優の面影、かつらぎ篇をお届けします。~(その1)中村富十郎丈~

2017-05-08 23:12:04 | 芝居のエッセイ

見巧者の方はきっと、「え~、かつらぎさん、まだその世代なんだ!」と思われると思うのですが、

歌舞伎を見始めたきっかけが当代の吉右衛門さんでした。以来29年ということになりますが・・・。

 

わたしの世代で「思い出の名優」となりますと、リアルタイムでぎりぎり見られたのが

六代目歌右衛門丈、十七代目羽左衛門丈、五代目富十郎丈、四代目雀右衛門丈、七代目芝翫丈といったあたりになります。

十七代目勘三郎丈、七代目梅幸丈、初代白鸚丈、二代目松緑丈などは、テレビで拝見していても、

実際には舞台をみることはかなわなかったので、

もっぱら映像で追体験していますね。

 

とりわけ私の中で、とても素敵な思い出として残っているのは、

やはりこちらの五代目富十郎丈ということになろうかと思います。

 

 

本当に、いまだにお亡くなりになったのが信じられないような気持ちです。

五代目富十郎丈(1929年~2011年)は、芝居の口跡はそれはそれは見事でしたし、踊りもすばらしく、お人柄も明朗でした。

特に、矢車会というご自身の会で、吉右衛門さんの富樫を相手に演じられた弁慶は、

なんとも芸容が大きく、立派でいらっしゃいました。

 

論文にも書きましたが、歌舞伎座さよなら公演の「熊谷陣屋」での弥陀六の滋味あふれる演技も忘れ難いですね。

また、喜劇もよくされ、2000年4月の「髪結新三」の家主長兵衛などは大変よく覚えております。

たのしく勘三郎丈(当時勘九郎丈)を諭すのですが、

なんとそのときに、私が一番前の席で見ていたら、

盛んに私にウインクをしていらっしゃるではないですか!?

 

私がその当時、メモをとりながら見ていたからなのですが、私がメモを取る手をやめて、

きょとん?・・と富十郎丈の顔を観たら、にか~っとあの笑顔でわらって、

「かつおは半分もらったよ!!!」と嬉しそうに高らかにおっしゃったのを思い出しますね

すばらしい、とても洒脱で、わたしのような駆け出しのヒヨコ劇評家にも大変やさしくて、

立派な役者さんでいらっしゃいました

 

また平成14年2月の「菅原伝授手習鑑」の通しの、武部源蔵も見事でありました。

「筆法伝授」「寺子屋」が素晴らしかったですね。

やはりなさぬ仲で女房・戸浪と結ばれた役なので、えもいわれぬ色気があふれていました!

さすがだなと思いますね。

 

四代目雀右衛門丈とのコンビも素晴らしかったですね。

「二人椀久」なども絶品でした。

舞踊では「うかれ坊主」なども傑出しており、

名舞台を数多く生み出してこられて、本当に大好きな役者さんでした。

 

ご長男の鷹之資さんが成長されて、りっぱに先日俳優祭の「二つ巴」で

大星力弥を演じておられましたが、

「筆法伝授」で富十郎丈に抱かれた菅秀才の役を演じられたのですが、

それからもう十数年たったのかと思うと感無量です。

お父様のようにりっぱな俳優さんになっていただきたいですね。

 

名優の面影、第1弾ということで、中村富十郎丈の思い出を語らせていただきました。

若い歌舞伎ファンの方も、ぜひ映像などで

富十郎丈の在りし日の舞台姿を見てみてください!

 

 

 

 

 

 

 

 



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