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『プレゼントをあげる⑤』 はるレイ?

2006-01-27 21:18:40 | 創作・はるレイ
その頃。
「えー?!あそこに?!」
暇を持て余した美奈子はみちるの家にいた。普段あまりここへ遊びに来ることはないけれど、ここにいればはるかさんの飼い主から何か情報を仕入れることができるかもしれないから、と。ちょうどほたるちゃんとせつなさんは出かけていて、みちるさんがいたのをうまく捕まえたのだ。
「そうよ」
「私でさえ、レイちゃんと行ったことないのに」
「でしょうね」
うらやましい。ゆるせない。なんて悔しそうに呟きながら目に炎が映る。
「レイって、遊園地とかそういうところ行ったことあるなんて聞いてる?」
「え?うーん。聞いてない」
「レイの初体験をはるかが奪っちゃったのね」
挑発だ、挑発。美奈子はガラスのテーブルを叩いて、くそー!と叫んだ。
「あぁ、むかつく。どうしてやろう、天王はるか」
「落ち着きなさい」
「うー…」
「美奈子、あなたレイとどうして行かなかったの?連れて行ってあげればいいのに」
「うー…。あ、そうだ。行こうと誘って断られた!」
なぜ?自分が断られたのに、はるかさんにほいほいついていくなんて。思い出してますます腹が立つ。
「断ったの?」
「うん」
「苦手なのかしら、あぁ言うところ」
レイちゃんの好きそうな場所ではないだろう。あの性格からして浮かれた人間がたくさんいるところに好き好んで行くようには見えない。
「うーんと、乗り物酔いするって言っていたような。あー、でもなんだっけ?」
「思い出せないの?あなたそれ、はるかが知らずにやってしまったらどうするのよ」
人ごみ?それもある。ジェットコースター?いや、乗ったことないだろう。高所恐怖症?まさか。ビルのテッペンでも平気な顔でいる。
「みちるさん、やばいわよぅ!レイちゃんが死んじゃう」
なんだかよく思い出せないけれど、美奈子は涙目になった。車のトランクに乗り込んででも尾行するべきだったと後悔する。
「死なないわよ。ジェットコースターで死ぬなんて、あの子がそんな間抜けな子だったらとっくにもう死んでいるわ」
笑って良いのか悪いのか。美奈子はホホホと笑うみちるさんにハハハと笑い返した。


腕を組んで歩こうといわれたから、腕を組んだ。大きいバケツみたいなものに入ったポップコーンを買ってくれたから、少しだけ食べた。周りも同じようにみんなバケツを首からぶら下げているから、ここではそれが定番なのだろう。レイにとっては別にどうでもいいことだけれど、隣のはるかさんはそういうのを楽しんでいる。あと少ししたら猫耳のついたキャップをかぶりだしそうな勢いだ。それだけは勘弁して欲しい。この空間を楽しむことがテーマパークの目的なのだろうから、一歩外の世界ではありえないことでもここでは楽しいことらしい。たとえば熊の手みたいな大きい手袋をしたり、顔にペインティングをしてもらったり。
「レイ、まずはあそこなんてどう?」
レイは素直にこのテーマパークは初めてだと伝えた。遊園地というものそのものが初めてなんて今更言えないからだ。パーク地図を片手にはるかさんは返事なんていらないといった感じでぐいぐい引っ張る。
「はるかさん、ずいぶん楽しそうね」
「そう?デートは楽しまないと」
「それもそうだけれど」
結構人は多い。特にカップルが。行列に並んでまでジェットコースターなのね、と心の中で思っていると、腕は列じゃない方へと引っ張られた。係員に何かチケットを見せている。
「いこう」
「え?順番抜かし」
「優先券みたいなものだよ。売っているんだ」
「時間をお金で買うっていうやつなのね」
狭い通路をクネクネと進んでいく。これから二人はどこへ向かおうとするのだろう。確かジェットコースターっぽい乗り物だったはずなのに。
「まぁ、違うとは言わないよ。並ぶっていうのも楽しいときは楽しいよ。今日は特別」
「なぜ?」
「レイはそういうの、好きじゃなさそう」
並ぶことそのものより、わざわざこういうのに乗ることのほうが嫌とは思わないだろうか、普通。
「何?」
「…いいえ」
“プレゼント”をしているほうが文句言えない。遠くから聞こえてくる女の子の叫び声を過敏に聞き取る自分が情けなかった。

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