愛、麗しくみちる夢

おだやか
たゆやか

わたしらしく
あるがままに

『プレゼントをあげる④』 はるレイ

2006-01-27 21:16:16 | 創作・はるレイ
「レイ」
助手席に座るレイはさっきからずっと窓の外を見ている。珍しく髪をアップにして今日はやけに決まっているじゃないか。
「何か聴く?みちるのCDとかJAZZとかしかないけれど」
「別に…、あ、じゃぁみちるさんのCDを」
「OK」
ボックスを片手で開けると、レイが進んで選んでくれた。会話しないための手段とでも思っているのだろうか。
「レイって、みちると知り合って結構長いんだよね?」
「えぇ、まぁ」
一番古い、みちるが中学生のときのCDを選んだレイは、慣れない手つきでCDをプレイヤーにセットする。音が流れ始めると明らかにほっとした感じだ。
「どれくらい?みちるは、あんまり話してくれないんだよね」
「幼稚園…かしら。同じところだったから」
そりゃまたずいぶん長い付き合いだこと。はるかは逆算しつつ10年以上、というアバウトな数字で切り上げた。12,13年も変わらないからだ。
「へぇ。幼馴染ってやつだ」
「一応。でも、みちるさんは中学からイタリアに行っていたし、高校はTAには戻らなかったから。幼馴染って言うほどお互いよく知っているっていうわけじゃないの」
「へぇ。なるほどね」
会話はほとんどみちるの話題ばかりになりそうだ。本人にばれたら怒られるだろうとかって言う心配よりも、レイのことを聞き出すタイミングがなかなか取れない。
「はるかさん」
「ん?」
集中して運転していますアピールをしていたら、戸惑った声が聞こえてきた。
「今日、どこへ行くの?」
「あぁ。巨大テーマパーク、かな」
恋人同士で行くと別れる、なんてジンクスがあったりもする誰もが憧れのテーマパーク。今日は日曜日だし少し人が多いだろうけれど。チケットは簡単に手に入ったから、入場制限をやるほどじゃないだろう。冬だし。乗り物の優先券なんていうのも、裏から手を回して人気のアトラクションはすぐに入れるようにもしてある。まぁ、それはみちるにお願いして無理にゲットしてもらったのだけれど。そういう有名人ぽいこともあまり好きじゃなくても1日しかないんだから、限りある時間は有効に使うべき。仕方がない。
「つまり、遊園地?」
「広い意味ではそうなるかな」
「…そう」
高校生の癖に喜ばないなんて珍しい。いや、レイ自身珍しいんだけれど。
「もしかして、嫌?」
「えっ?そんな」
「だよな。行きたくないところは、特にないんだろ?」
「えぇ」
「よかった。僕も忙しくてそういうところって最近行ってないんだ。ほたるにはまだちょっと早いだろ?身長制限とかあるし、怖がっちゃうし」
話題をみつけたはるかは、しゃべりに調子が出てきた。楽しそうにこれから向かうテーマパークの説明をしてくれる。
『言えない…』
一度もジェットコースターに乗ったことがないなんて、言えるわけがなかった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『プレゼントをあげる③』 は... | トップ | 『プレゼントをあげる⑤』 は... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

創作・はるレイ」カテゴリの最新記事