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『プレゼントをあげる①』  はるレイ?

2006-01-27 21:10:53 | 創作・はるレイ
「はるかさん。誕生日、何が欲しい?」
「え?」

まさか、レイにそんなことを聞かれるとは思ってもみなかった。


「そう?あの子だって16歳の女子高生よ?知り合いが誕生日を迎えるなら、プレゼントだってあげるでしょう?」
たまたま六本木の近くを歩いていたはるかに声をかけてきたレイは、天気の話をするように誕生日のことを話してきた。
正直、自分がもうすぐ誕生日を迎えることなんて言われるまで気がつかなかった。誕生日までちょうどあと1週間だけれど、あまり興味がないというのも本音。1つ年齢が増えたとしても、何かが変わるわけじゃない。みちるとせつなとほたるとだって、まだまだ一緒の生活は続くし、ありふれた日常を守っていくことに変わりはないし。
何か人からプレゼントをもらわなければならないほど、大それたことじゃないはずだ。
「いや、そうだけど。レイっていうのが意外だったから。美奈子とかお団子あたりならわかる気もするだろ?」
「たまたま、あなたを見かけて思い出したんでしょ」
「あいつが?人の誕生日なんて、それこそ覚えているようなタイプじゃないのに」
レイとはあまり会話をしない。知り合って1年以上経っているし、仲間と何度か食事やパーティなんかをしたりする機会はこれまでに数え切れないほどやってきたけれど、不思議とレイと何かをしたという記憶がないのだ。自発的に発言するのを面倒臭がるタイプらしいし、集団がお気に召さないお嬢様っぽいし、そもそも人と会話をするのが好きじゃないといった感じだ。それら全部はるかの想像にしか過ぎないけれど。
「そう?せつなはピアスか何かをもらっていたわよ」
みちるは相変わらず何か知っていて隠すような微笑を向ける。話題に名前が挙がったせつなはそうだったわねと横で軽くうなずいて、それからまたノートパソコンに視線を戻した。
「聞いてないな、そんなこと。第一せつなの誕生日パーティにあいつは来なかったんじゃなかったのか?」
「おじぃさまがご病気で神社が忙しかったそうよ」
代わりにみちるが応える。ふーん。と興味なさげにしながらもまだレイの正体をつかめないといった感じ。
「プレゼントかー。まぁ、どうせ1週間もすれば忘れているだろうな」
「そんな、うさぎじゃあるまいし。せっかくだからリクエストしたら?」
みちるはまるで他人事。この3人の中でみちるが一番レイのことを知っていそうなのに。確か父親同士の付き合いが古いとかで、接点があるはずだ。
「リクエスト?別に欲しいものなんてないよ。安いものをリクエストしたら、自分はその程度の人間なのかって思われたら困るし、高価なものなんて僕は働いてお金を稼いでいるんだから学生に言うなんて常識はずれだろ?そこそこいいものなんて僕には思いつかないし、欲しいものがそういうところの値段にあるかどうかなんてわからないし」
一般論として屁理屈を言うんだから。仕事をしながらみちるの横で聞いていたせつなは小さく笑った。
「はるか、お金で買えないものもあるでしょう?」
「そうよ、はるか」
二人は馬鹿ね、といわんばかりの顔だ。何となく面白くない。
「たとえば?」
「自分で考えなさい」
そこまで言いながらそういうことを言うか、普通。ふてくされてソファーに横になり足をぶらぶらとさせた。はしたない、というみちるの注意なんて無視。
「買えないものかー。みちるは何をくれるの?」
「さぁ?」
「せつなは?」
「別にプレゼントなんて欲しくないみたいな顔をしているあなたに、何かプレゼントしても仕方がないわね」
そう来たか。それもそうね、なんて頷いているみちる。
「ちぇ」
はるかは天井に視線を向けて、小さく舌打ちした。


本当に何が欲しいんだろう。何も欲しくないわけじゃないけれど、やっぱり具体的に何といわれても思いつかない。物じゃないものでレイからのプレゼントなんて。
だいたいだ。
プレゼントのリクエストを聞くというのもどうだろうか。驚かせたいならば当日に渡してくれたほうがいい。それなら何であったとしても嬉しいに決まっている。
まさかわざと?
冷めているようで案外そういうところがあるかもしれない。
だったらここはひとつ、難しいプレゼントを要求して困らせるのもいいかもしれない。
普段なんでもそつなくこなして、つんと澄ましているお嬢様の困った顔を拝めるのは楽しそうだ。
はるかはカレンダーを見た。
誕生日は平日か。
過ぎてしまうけれど28日の土曜日はみちると一日デートの約束をしている。せつなたち家族はきっと、27日の夜に豪華な料理を作ってお祝いしてくれるだろう。何も知らない振りをしながらも、家族ってそういうものだから。
「となると、29日の日曜日か」
今のところカレンダーに何も記しはない。
「さて、レイお嬢様はどぅだろうかな」
はるかはひとりいい気になりながら携帯電話を開けてみる。
「あ…」
だけれど、レイの番号もアドレスも登録さえしていないことに今更ながらに気がついた。
「まずは、携帯のアドレスを貰うことだな」
みちるに後からバレて変に嫉妬されるのも嫌だから、先にアドレスを教えてもらうついでにデートの許可を貰おう。みちるという存在がありながら、すっかりレイを困らせることを楽しみにしているはるかは、その後呆れたみちるの説教をたっぷり30分は聞かされることをまだ知らなかった。

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