大工の学校 

築き人(きづきびと)を志す、職業能力開発校の徒然日記
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読書感想文22「パラドックス13」

2011年11月06日 | 読書感想文
さてさて、2年いや3年ぶりとなる読書感想文。

今回は「パラドックス13」東野圭吾著です。
「世界が変われば善悪も変わる。
人殺しが善になることもある。
これはそういうお話です」東野圭吾

運命の13秒。人々はどこへ消えたのか?
13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った“P-13 現象”とは何か。生き延びていくために、今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!
張りめぐらされた壮大なトリック。論理と倫理の狭間でくり広げられる、究極の人間ドラマ。“奇跡”のラストまで1秒も目が離せない、東野圭吾エンターテインメントの最高傑作!
amazonより抜粋!



東野圭吾といえば、「容疑者Xの献身」や「白夜行」 さらには以前感想文を書いた「手紙」など、もう大作家中の大作家ですね。


じつは先週東京に出張に行ったとき、移動の際 東野圭吾の初期の作品「11文字の殺人」を文庫で読んで、とても読みやすく、やっぱり面白いなぁ~と再確認。

で、先日図書館に行ったときに、東野圭吾のコーナーにて娘(4歳)が「お父さんのはこれ~」といって選んでくれました。(最近僕に選択権はありません・・・)

しかし、娘GJ いい仕事してくれました。

ということで本題、この「パラドックス13」は作者の代表的なフィールド=推理小説ではありません。

簡単にいいますと、東野圭吾版「猿の惑星」というか「漂流教室」です。そうですSFなのです。


きっかけは地球の近辺にブラックホールができ、3月13日の13時13分からの13秒間だけ特殊な現象が起きる、その間に「あるコト」をしたものだけが別世界に転送されるといったものです。



主人公の所轄の平警官 久我冬樹と兄で警視庁の幹部 久我誠哉は銀行強盗の犯人を追っていたが、冬樹の身勝手な行動で、兄誠哉とともに銃で撃たれてしまいます。

その衝撃で気を失い、冬樹が気がつくと無人状態の東京都に一人、アイアムレジェンドな状態でいたのです。


その後仲間を探し、兄 誠哉や女子高生明日香など似たような現象に合った仲間と出会い安住の地を探しにでます。

しかし、東京は地震、大雨などで壊滅的なダメージをうけ、ライフラインは無くなり、道路も冠水により移動が困難となっていくのです。

食料を探し、移動している中で幼い赤ん坊や暴力団関係者などとも合流するが、悪性のインフルエンザに見舞われたり、個人の秘めた感情がだんだん表にでてきて、さまざまな軋轢なども生まれます。


そうした中で、10名程度の男女が助け合い、極限状況の中での善悪とは何か?というこれまでの倫理感を超えた選択を次々と迫られていきます。

兄の誠哉はさすがエリート公務員というような、言動と行動で人々をまとめ、生きるために皆を導きます。


しかし、時にそれは役人的な考えで、人の心の部分を考えていないような、冷たい選択を皆に強いる事になるのです。




一方弟の冬樹は自分の軽率な行動で兄に迷惑をかけたことで、兄に負い目を感じてますが、情熱的な感性の持ち主で、突発的で無茶な行動が皆を救ったりもすることもありました。


そうして、皆は安全と思われた首相官邸に付き、すべての謎が明かされます、パラドックス13とは何なのか?なぜ冬樹たちだけがこの世界に存在しているのか・・・・そして壊れていく首都は


とまぁ、これ以上はネタばれなのでやめますが、「なぜ彼らだけがこの世界に存在しているのか?」といったところがキーワードでしょうか?



今までの東野作品同様、色々なところにヒントが隠され、登場人物などにもあれ?と思わせるような行動が見受けられます。


そして、それらが一つの方向に集まり、すべての謎が明かされたとき「ああぁやっぱり」という推理小説の犯人当てのような爽快感のも感じることができ非常に読み応えがあり、面白かったです。



フィクションと現実の姿を重ねるのは不謹慎ですが、5日前に歩いた東京が壊滅的な被害を受けていく描写は3.11やタイの大洪水などで頭の中で容易に映像化でき、今生きている日常が実はSFの世界のようになっていることに気付かされます。


「本来、人間が生み出したはずの科学が、ひとり歩きし始めようとしている現代-科学が、神や哲学に取って代わり、うみの親である人間の頭を押さえこもうとしている今の時代」  先の「11文字の殺人」のあとがきに書いてあった、宮部みゆきさんの言葉です。こうした言葉は原発事故で悩まされている、日本ではなおのこと現実味を帯びてきています。


それでも物語で奇跡を起こすためには、どんなに絶望的な状況でも希望を持ち続けることだということをメッセージとして送られているような気持ちになります。



「諦めたら、そこで試合終了だよ。」の気持ちで頑張ろう日本!









 



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