快読日記

日々の読書記録

「アルプスの少女ハイジ」ヨハンナ・シュピリ

2009年03月25日 | 翻訳小説
《3/24読了 関 泰祐・阿部賀隆/訳 角川文庫 1951年刊・2006年改版 【翻訳小説 スイス】 Johanna Spyri(1827~1901)》

ハイジがおじいさんのところに来た理由が意外とシビアだったり、
アニメではおいしそうな食べ物ばかりが目立った山の生活が、結構きびしく描写されていたりして、
さすが原作はリアルでおもしろいかも。
ハイジという無垢で透明なものを中心に置くことで、周囲の人物の陰影が際立つ、そんな歯ごたえのある小説なのだろうと期待が高まりました。

ところが、後半に進むに連れて雰囲気が変わり、
気がつくと、話はキリスト教信仰に集約されていきます。
だからハイジの浅はかな叔母さん、おじいさんの暗い過去の真相、堅物ロッテンマイヤーさんの隠された胸中など、楽しみにしていたほとんどがスルー。
クララのおばあさんのありがたい説教だって、信仰も知識も持たないわたしにはなかなか入り込めません。
羊飼いペーターが、呆れるほどの愚者として描かれていることや、
ハイジが盲目のおばあさんをあんなに気に掛ける理由が「同情」以外に見当たらないことも、
キリスト教のベースがあると理解できるのかも知れません。

主題・メッセージがまずあって作られた話みたいで、
ツルツルと楽しく読んだわりには残る印象がよくないという不思議な本でした。