快読日記

日々の読書記録

「沖で待つ」絲山秋子

2020年08月29日 | 日本の小説
8月29日(土)

「沖で待つ」絲山秋子(文春文庫 2009年)を読了。

短編集で「勤労感謝の日」「沖で待つ」「みなみのしまのぶんたろう」の3つが収録されています。

真ん中の「沖」は芥川賞作品でたしかにおもしろい。
主人公の女性がいいかんじに薄汚れているのもい。
小谷野敦が褒めるのも納得。文句なし。

なのにふと、候補になりながら惜しくも逃した何人かの作家を思い出してしまいました。
もちろん絲山秋子は筆力も洞察力もあって受賞は当然だと思うけど、
例えば若合春侑や大森兄弟みたいな作家が負けてるとはどうしても思えない。
そして、そういう作家はけっこういますよね。
運とかタイミングとか言われちゃうと、そうかもなあ……とも思うんですが、
もし、受賞してたら今でも彼らの新作がばんばん(じゃなくてもいいけど)出てたのかなあと想像してしまうんです。

文学賞というもの自体にはそんなに価値を感じないけど、
やっぱり受賞すれば作家の寿命は延びますよね。
だから、今村夏子が受賞したときは、「おお!これでこれからも今村作品が読めるぞ、うひひ」と喜んだものです。
そういう意味で、賞をとるって大きいことですね、作家にとってはもちろん、われわれ読者にとっても。