快読日記

日々の読書記録

「彫刻家の娘」トーベ・ヤンソン

2009年04月12日 | 翻訳小説
《4/9読了 冨原眞弓/訳 講談社 1991年刊 【翻訳小説 フィンランド】Tove Jansson(1914~2001)》

岸田今日子のエッセイで話題になっていたヤンソンの自伝的小説。
章の扉を飾る幼児期の写真からしてたまりません。
まっすぐに切られた前髪、意志が強そうな太い眉。
その下の目は、とてつもなく不可解で巨大な"世界"を全身の力をこめて睨み付けています。
「子供」という種族がここにいる!と確信させる面構えです。
正面切って世界と格闘する「子供」は凛々しくてかわいくてちょっと怖い。

ボユー(おそらく近所に住む友達)の家のカーペットにはヘビが大群を成してウヨウヨしている、明るい部分を歩いているうちはいいが、茶色い箇所を踏み外すと一巻の終わりだ、とか
大きな石を悪戦苦闘しながらも家に持ち帰るんだ、とか
初めて見た流氷を自分だけのものにするために、絶対にそれを言葉にしない、とか
なんだか懐かしいこの「子供」はわたしであり、あなたであるはずです。

「子供」にとっては、どんな困難も苦悩も「冒険」なんだ ―― わたしも今日からそう考えることにします。