快読日記

日々の読書記録

「検証 ワタミ過労自殺」中澤誠 皆川剛

2015年02月10日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《☆☆ 2/5読了 岩波書店 2014年刊 【ノンフィクション ワタミ】 なかざわ・まこと(1975~) みながわ・つよし(1981~)》

現在はどうかわかりませんが、ワタミは「父」渡邉美樹以下全社員・バイトが「家族」だから、組合を作るという発想がなかったそうです。
「労使一体」といえば聞こえがいいけど、なんだかすごいですね。
だから、社員の過労自殺をめぐるこの事件は、“加害者も実は被害者であって、被害者もまた加害者になる”という地獄みたいな話でした。
「24時間死ぬまで働け」
「一生懸命働いて何が悪い?」
そうやって、1日18時間労働(!)を強いたワタミのシステムが明らかになります。
労基法オーバー分はもちろんサービス残業。
渡邉美樹のポエムを読み幹部の講演を聞いてレポートを書く、他店の応援をする、ボランティアまでする、これを全部「休日」にやれっていうんだから、凄まじいです。

筆者は、新聞記者らしい控えめな筆致は冷静でいいんだけど、雇用問題としてだけとらえているのがちょっと不満。
“カリスマ”経営者のもと、そのポエムに心酔し、思考を停止して、自我を捨てどっぷりはまるのは、人によっては一種の快楽かもしれない。
若い人が“仕事ってのは、させていただくもの。お金じゃないんです”なんて目をキラキラさせて言う国は、どうかしている気がする。
これは、心を支える宗教を持たず、他人と交渉する言葉を持たない現代日本人独特とも言える社会病理なんではないか。

感情的な「ワタミ・渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター」に比べると、“会社側”につく社員の声も読めたり、細かいデータも見られて、そこらへんはよかったです。

最後はワタミがどう変わるかっていうかんじで終わるけど、どうなるんでしょうか。
最近、バイト出身者を社長にしたり、赤字を出したりしてますが、働く環境がどのくらい改善したのか知りたいです。



/「検証 ワタミ過労自殺」中澤誠 皆川剛