快読日記

日々の読書記録

「やりなおし高校国語」出口汪

2020年07月20日 | 言語・文芸評論・古典・詩歌
7月20日(月)

「やりなおし高校国語」出口汪(ちくま新書 2015年) を読了。

「こころ」「舞姫」、「水の東西」、中原中也の「サーカス」など、高校国語定番作品の“授業”。

個性とか“ありのままの自分”とかいう素敵な価値観が蔓延する昨今ですが、
そうした“自分なりのとらえ方でいいのよ”みたいなやり方を蹴散らし、きっちり正確な読解に導くこの講義には目が覚める思いです。
そうだ、読解力があれば「正解」にたどり着けるんだ!評論作品はもちろん文学作品の解読にも「正解」はあるんだ!と思いました。
「鑑賞」はその上にしか成立しない。

特に「こころ」。
Kと先生、二人が死を選んだそれぞれの理由と、それを真っ正面から読み解く出口先生に圧倒されます。
Kは失恋、先生は罪悪感が自殺の原因、と思っている人にはぜひおすすめしたいです。
(でも、鯨統一郎とかおもしろくてつい読んじゃいます。)


根底にあるのは、
その時代を生きる人たちにはその時代なりの価値観や考え方があって、
その中には今の我々とは相容れないものや、理解しづらいものや、予想外のものも多いということ。
それを知ることが教養であり、我々の今の価値観だって100年後の人から見たら理解不能と言われる可能性も充分あるわけです。
過去のものを読むときは特にそこらへんを肝に銘じたいと思いました。