IBMが2nmプロセスを開発
IBM、世界初となる2nmプロセス。バッテリ寿命4倍に - PC Watch
IBMが開発した2ナノメートルの半導体技術が、米国にもたらす大きな価値 - WIRED.jp
IBM Unveils World’s First 2 nm Chip - EE Times
先週の記事だが、Wiredの記事があまりにミスリードを誘う記事に読めたのでコメントしておこうと思う。
IBMがリリース中で述べている、ナノシート技術を利用することで高度な半導体スケーリングを可能にしたという新技術は称賛されるべきだが、それ以上でも以下でも無い内容である。
研究開発レベルでは実用レベルの製品をスペック的に遥かに上回る試作品を作れる場合がある。それ自体は研究開発・将来の実用化までの一歩ということで重要なステップだが、それが製品化されるとは限らない。製品化されるには歩留まり(良品率)や量産方式の確立やコストなど様々な要因が関わってくるため当然である。
Wired誌の記事はあたかもIBMの技術で数年後には米国企業が2nmプロセスで製品を製造可能になると言わんばかりだが、そんな単純な話では無い(※注:1990年代のWired誌は他誌とは異なるテーマを扱った優良な記事が多数あったが…決して技術的に優れたライターが記事を書いている雑誌ではない)。実際、IBMは2017年に5nmプロセスのテストチップを開発しているが米国で5nmプロセスを製品を大量生産している企業は2021年5月現在で一社も存在しない。
もっとも、個人的に興味深いのはこの試作品の製造が何処で行われたかである。
EETimesの記事によるとIBMのNew York州AlbanyにあるR&Dセンターで製造されたそうだが、Hisa Ando氏は300mmウエファなのでPowerやZを作っているファブでの製造と推測されている。しかし、POWER 9やz15を14nmプロセスで製造を担当しているGlobalFoundriesは既に先端プロセスから撤退済のため筆者としては懐疑的である。
筆者が今回関与している、あるいは今後関与すると考えているのはIntelである。Intelは3月にIntel Foundry Servicesを発表したが、その際にIBMとプロセスルールやパッケージ技術の開発で協力するとしていた。
そもそも、2014-15年にIBMが自社ファブをGlobalFoundriesに売却した際には10年間のIBMサーバープロセッサーの排他的な製造権・IBMの持つ数千の特許や知的財産・将来のIBMの研究成果を利用できる権利が売却内容に含まれていた。言い換えればGlobalFoundriesが2014年から10年間のIBM POWER・Z CPUを製造するのでIBMが半導体技術開発を支援することになっていたわけだ。ところが、現実にはGlobalFoundriesは2018年に先端プロセス開発を無期限で凍結してしまった。製造ファブを持たないIBMが先端半導体技術の研究開発を続行しており、IntelとIBMとプロセスルールやパッケージ技術の開発で協力するということは、IBMが恐らくIntelに技術を提供しIntel工場で将来のPOWER・Z CPUを製造することを示唆していると思われる。
GPD WIN Max 2021
GPD 初のRyzen 7 4800U採用ゲーミングUMPC「WIN Max 2021」- PC Watch
CPUをIntel "Tiger Lake" Core-i7 Core i7-1165G7/1185G7またはAMD "Renoir" Ryzen 7 4800Uに換装したGPD WIN Max 2021が登場するのだという。
Intel CPUとしてはハズレ世代と言っても過言ではない"Ice Lake"搭載版WIN Max (2020)ユーザーとしては複雑な心境ではあるが、PC Watchの記事によると、既存のWIN Maxユーザーはクラウドファンディングを介しマザーボードだけを入手してアップグレードできるようにするのだそうだ。配慮は素晴らしいところだが、当然ながら自作PCと違い余剰部品を使ってもう一台組めるわけでもなければ、Ice Lake→Tiger LakeにしろIce Lake→Renoirにしろ性能向上幅は限定的なので悩ましいところではある。
もし安価にアップグレード可能なら交換したいところだが、メインボードには$400前後するCPU(1165G7, 1185G7, 4700U)・LPDDR4Xメモリー・Ethernet(Wired・Wi-Fi)がハンダ付で搭載されていることを考えれば最低でも$500以上すると見るべきだろう。筆者はWIN Max (2020)をIndieGoGoクラウドファンディングで入手したが$779だった。仮にWIN Max 2021が同価格なら買い替えた方がコストパフォーマンスは良いかもしれない(が、CPUが+$100前後するため恐らく$900前後になると思う)。
記事によるとGPDはゲーミング用にはIntel Core i7-1165G7/1185G7、クリエイティブ用にはAMD Ryzen 7 4800Uを推奨しているようだが、確かにベンチマークなどを見るとそういう傾向は掴むことができる。ちなみに、もし筆者がWIN Max 2021を入手するとしたらRyzen 7版と思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます