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私的コラム&雑記(&メモ)

WiiM Amp (1)

2024-08-31 | オーディオ

その(1) その(2) その(3)
続編記事 Wiim Amp (2)に合わせ一部加筆

動機

 10月の一時帰国に合わせ、実家用にWiiM Ampを発注した。
 WiiMはAmazon Music・Spotify等に対応したミュージック ストリーマーを製造・販売しており、WiiM AmpはDクラスパワーアンプを統合したモデルである。

 以前も書いたが、筆者自身はWiiM Pro Plusを使用しているし、アンプ統合製品であれば欧州の著名オーディオショップAudiophonicsがHypex製NCore Dクラスアンプを統合したDAW-S250NCを導入するところだし、あと1~3カ月ほど待てば音質が改善されたWiiM Amp Proが発売されるので、そちらでも良いだろう。
 ただし、今回は「10月に実家に導入する」という制約があるので話は少し違ってくる。音質は良いに越したことはないが (1) 省サイズと物理的・操作性のシンプルさが重要で本体ですべて完結しており、(2) 10月に導入できる必要がある。よって、WiiM Pro Plus(別途アンプが必要)もDAW-S250NC(サイズが大きい)もWiiM Amp Pro(10月に入手できるか不確実)も候補としては不適格、ということでWiiM Ampが最適という結論に至った。
 さらに、Amazon.deの特価販売でEUR 265とかなり安価で購入できたことも大きかった(欧州人の感覚では26500円・円安下の為替レートでは43000円ぐらい。価格コムでは52000円~)。

 筆者の自宅ではなく両親宅にWiiM Ampを導入する理由は、両親にCD等のレガシーなメディア・レガシーなオーディオ装置から現代的な方式に移行してもらいつつモノと占有スペースを削減するためである。
 特に母親はモノを廃棄・整理してシンプルなリビングルームを目指しているが、利便性を損ねるわけにもいかない。WiiMを用いることで、既にCDで所有している楽曲はFLACファイルに変換してUSBメディアで・最近の楽曲はストリーミングで聴くことで、巨大なCDラジカセから小型なWiiMに移行し、嵩張るCD等のレガシーメディアを処分できる。これにより物質的にも管理的にもシンプルになる。

WiiM Amp

 WiiMに関しては以前の記事で紹介した通り。Amazon Music・Spotify等に対応したストリーマーだが、対応するサービスが豊富で本体の価格も安価なのが魅力である。それでいて音質についてはモデルによるが概ね必要十分な水準を達成している。
 WiiM Amp/WiiM Amp Proに類似の製品としてはMarantz M1(Heos・2x 100W @8Ω・EUR 1000)・Denon Home Amp(Heos・2x 100W @8Ω・EUR 800)・Sonos Amp(2x 130W @8Ω・EUR 800)・NAD M10(BluOS・2x 160W @8Ω・EUR 2500)、あとは販売終了済だがHarman/Kardon Citationなどが存在する。対応するフォーマット・ストリーミングサービスやアンプの出力なども異なるため単純に比較できないが、いずれも価格は2倍以上になる。
 ここで「単純に比較できない」といってもWiiM Amp/WiiM Amp Proが音質が劣っているわけではない。例えばWiiM Amp SINAD 89dBに対しNAD M10 SINAD 86dBと上回っているし、Marantz M1・Denon Home Ampに採用されて話題のAxign製コントローラー(※)の特徴はPFFB回路による高SNR・THD+Nだが、WiiM Amp ProにはPFFB回路が搭載されており高SNR・THD+Nを実現している。
※余談だが、Axign製AX5688AX5689はPFFB・アンプ制御・PWM変換だけ・PWM出力するICなので、増幅段は別のDクラスアンプを使用しているはずで、Axign AX5689採用のSabaj A30の場合は増幅段にST Microelectronics STA516Bを搭載している。

 WiiM Amp ProではWiiM Ampで優秀とは言い難かったSNR・THD+Nが劇的に改善されている。DAW-S250NCも含めたスペックは以下のようになっている。


WiiM AmpWiiM Amp ProDAW-S250NC
ASR ReviewWiiM AmpWiiM Amp ProDAW-S250NC
MSRPEUR 369
USD 299 (excl VAT)
EUR 449 ? (estimate)
USD 369 (excl VAT)
EUR 899
LinkPlayLinkPlay A98MLinkPlay A98M ?LinkPlay A98M
DACESS ES9018K2MESS ES9038Q2MESS ES9038Q2M
Supported
digital format
USB-B, DLNA
MP3, AAC, ALAC, APE, FLAC, AIFF, WAV, WMA, OGG, DFF, DST
USB-B, DLNA
MP3, AAC, ALAC, APE, FLAC, AIFF, WAV, WMA, OGG, DFF, DST
DLNA
MP3, AAC, ALAC, APE, FLAC, AIFF, WAV, WMA, OGG, DFF, DST
Digital inputSPDIF Optical:
PCM up-to 24bit 192kHz
SPDIF Optical:
PCM up-to 24bit 192kHz
USB-A:
PCM up-to 32bit 768kHz
DSD DoP up-to DSD256

SPDIF Coaxial/Optical:
PCM up-to 24bit 192kHz DSD DoP up-to DSD64
NetworkWiFi 5
Bluetooth 5.0
1x Ethernet RJ45
WiFi 6E
Bluetooth 5.3
1x Ethernet RJ45
WiFi
Bluetooth 5.0
1x Ethernet RJ45
Supported
network protocols
AirPlay 2
DLNA
Chromecast
AirPlay 2
DLNA
Chromecast
AirPlay 2
DLNA
Chromecast
Inputs1x Stereo RCA
1x SPDIF Optical
1x HDMI ARC
1x USB-A
1x Stereo RCA
1x SPDIF Optical
1x HDMI ARC
1x USB-B
1x SPDIF Optical
1x SPDIF Coaxial
AmplifierTPA3255TPA3255 with PFFBNCore NC252MP
OutputsStereo Speaker
1x Subwoofer output
Stereo Speaker
1x Subwoofer output
Stereo Speaker
1x RCA Pre-Out
Output power2x 120W @4Ω
2x 60W @8Ω
2x 120W @4Ω
2x 60W @8 Ω
2x 250W @4Ω
2x 150W @8Ω
SNR98 dB120 dB121 dB
THD+N0.002% (-92 dB)0.0005% (-105 dB)0.0015%
Control appWiiM HomeWiiM HomeWiiM Home
Compatible voice assistantsAmazon Alexa
Google Assistant
Siri
Amazon Alexa
Google Assistant
Siri
Amazon Alexa
Google Assistant
Siri
Dimensions190 x 190 x 60 mm190 x 190 x 63 mm3000 x 2950 x 60 mm

現行製品ではWiiM AmpをDAW-S250NCが全面的に上回っており、WiiM Amp Proはその間に割って入る形になるが…いかんせんDAW-S250NCが高価なのでWiiM Amp Proは性能の割には割安に思える。

 構成部品だけで見ればWiiM Amp ProとWiiM Ampの違いは大きくない。
 Wi-FiやBluetoothのバージョンが更新されていたり、DACチップが更新されていたりと細かな違いはあるが、それだけで劇的に音が変わる種類のものではない。本命はDクラスパワーアンプで、チップ自体はTexas Instruments TPA3255と同じだが、PFFB = Post-filter Feedback回路が追加されSNRとTHD+Nが劇的に改善されている。
 ちなみに、2x 120W @4Ω・2x 60W @8Ωというスペックは少し不可解である。TPA3255なら2x 260W @4Ω・2x 150W @8Ωが可能だし、このクラスならTPA3255ではなく低出力だが低歪率のTPA3251がある。同じ200-250WクラスでTPA3255採用パワーアンプだとTopping PA5 II(2x 100W @4Ω)やFosi Audio V3 Mono(1x 240W @4Ω)があるのでWiiMが特殊というわけでもないが、Topping・Fosi Audioの場合はさらに高出力な製品Topping PA7 II(2x 200W @4Ω)・Fosi Audio V3 Stereo(2x 300W @4Ω)でも同じくTPA3255が採用されているので、単純に部品の共通化・調達や設計の効率化を狙っている可能性が高いが、WiiMはそういった形のファミリー展開は見られないので、なぜTPA3251ではなくTPA3255なのか不明である。
 ところで、Topping PA5 IIやFosi Audio V3 Monoは同じTPA3255採用パワーアンプで非常に優秀なSNR・THD+Nを達成しているが、その理由の一つがPFFB回路の採用である。

 もっとも、PFFB回路による「劇的に改善」というのはスペック表での机上の話なので、人間の聴感で違いがあるかは判らない。PFFB回路非搭載のWiiM AmpでもSNR・THD+Nは人間の聴力の限界と同等かそれ以上の性能を達成しているし、SNR 92~105 dBで実用上でノイズを聴き取れるほど大音量で再生するとは考え難いからである。
 DAC等の装置あるいはパワーアンプ単体でSNR 100 dB以上・THD+N 0.0001%以下といったようなハイスペックが好まれるのは、複数台の装置を組み合わせたシステム全体で高いSNR・THD+Nを得るためである。これは高度に統合済のWiiM Ampの場合、後段にはスピーカーしかないためSINAD 89 dB・SNR 98 dB・THD+N 0.002%というスペックでも問題になるとは考えられず、あとはスピーカー次第だろう。

室内音響補正

 実は以前の記事を書いてからの更新として、WiiMがiOS/Androidアプリに室内音響補正機能を追加した。

 実のところ、この可能性についてはWiiM公式発表前の前回の記事でも触れている。WiiMの装置は構造的に (1) アナログRCA入力はADCでデジタル信号に変換され、デジタル入力と共にDSPを通ってからDACで出力される構造になっており、(2) DSP機能としてParametric Equalizerが搭載されているので、マニュアル設定での音響補正は以前から可能だった。もっとも、補正値を自分で測定して入力する必要があるから、ユーザー側の難易度からすると容易とは言えなかったが…。

 今回追加されたのは、WiiM Homeアプリに室内音響補正のウィザードが組み込まれ、iOS/Androidデバイスのマイクでの集音・測定からParametric Equalizerの補正値を作成・適用までを一連の流れで実行してくれるという代物である…。問題は、iOS/Androidデバイスのマイクの性能は高くない上にキャリブレーションされておらず、補正値が正しいか怪しい点である。
 そもそもiOS/Androidデバイスのマイクの本分は電話なので人間の声の周波数帯に最適化されている可能性が高い。例えば可聴域全域20 Hz~20 kHzがフラットである(オーディオとして科学的に音が良い)ことよりも人間の話し声100 Hz~1 kHz付近が高音質である方が重要で、むしろ10 kHz以上は電子機器のノイズの可能性が高いためカットした方が電話のマイクとしては音が良いかもしれない。

 では外部のマイクを使えないか?というと、それはそれで問題がある。
 まず、3.5mm音声端子が省略された時点でマイクのアナログ音声入力が行えないが、仮にマイク入力があったとしても特性がフラットとは限らない。ではBluetoothはというとBluetoothはaptX・AAC等のCodecで人間が聴こえ難い帯域をカットされる(恐らくAACなどのファイルを見れば14kHzあたりでLPFが入っているはずである)。
 結論から言えば、唯一の選択肢はUSB接続のマイクが最適ということになり、有名どころではMiniDSP UMIK-1がある。実際、AndroidスマートフォンのUSB端子にMiniDSP UMIK-1を接続してみると、WiiM Homeでの自動室内音響補正で使用することができた。ただし、WiiM Homeにはキャリブレーションファイルを取り込む機能は無いので測定用マイクのキャリブレーション結果は反映されないことになる。

 今回追加された室内音響補正機能はともかくParametric Equalizerは筆者としては是非とも活用したい機能である。
 筆者の自宅の場合は音響補正は(WiiMの簡易機能ではなく)MiniDSP Flex搭載のDirac Liveと専用の測定用マイクでオーディオシステム全体を対象として行うため問題無いが、実家でWiiM Ampで行う場合はREWでの測定・補正値出力とParametric Equalizerによるマニュアル補正だけでも便利である。

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