釋超空のうた (もと電子回路技術者による独断的感想)

文系とは無縁の、独断と偏見による感想と連想と迷想!!

及び釋超空のうたとは無縁の無駄話

雑談:『遺伝』(萩原朔太郎)

2013-08-18 08:08:08 | 釋超空の短歌
詩人の心は私たちの無知を思いしらしめる。
その典型の詩が掲題の詩であると私は思っている。

科学が此の世の事実上の絶対的な宗教ないし教義になって久しい。それどころか其の教義は、ますます私たちの心を占領し強制し盲目化していく。

いったい、此の世の在りようは真実如何なるものであろうか?

科学は其のことに対して私たちを盲目化させている。
これほど強烈なイデオロギーは、かって無かったではないか。

掲題の詩人は明らかに此の教義から此の世界を見ていない。  だから私は此の詩に強く注目する。

作者は一体何を凝視しているのか。

私たちは科学という教義に安住し、また「疑う」ことを忘れている。

此の世界は実は如何なる「土台」も無いのではないか。

宙ぶらりんの私たち。その下には不気味な闇が続いている。 結局、何も知らない私たち。

永遠の沈黙と其の恐怖。

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人家は地面にへたばつて
おほきな蜘蛛のやうに眠ってゐる。
さびしいまつ暗な自然の中で
動物は恐れにふるへ
なにかの夢魔におびやかされ
かなしく青ざめて吠えてゐます。
  のをあある とをあある やわあ

もろこしの葉は風に吹かれて
さわさと闇に鳴つてる。
お聴き! しづかにして
道路の向こうで吠えてゐる
あれは犬の遠吠だよ。
   のをあある とをあある やわあ

「犬は病んゐるの? お母さん。」
「いいえ子供
犬は飢ゑてゐるのです。」
遠くの空の微光の方から
ふるえる物象のかげの方から
犬はかれらの敵を眺めた
遺伝の 本能の ふるいふるい記憶のはてに
あはれな先祖のすがたをかんじた。

犬のこころは恐れに青ざめ
夜陰の道路にながく吠える。
    のをあある とをあある のをあある やわああ

「犬は病んでゐるの? お母さん。」
「いいえ子供
犬は飢ゑてゐるのですよ。」

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