釋超空のうた (もと電子回路技術者による独断的感想)

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雑談:『明暗』 (夏目漱石)

2013-03-28 09:18:29 | その他の雑談
私は夏目漱石の小説は、人並み程度に一通り読んでいる。
盛んに読んだのは二十歳前後だったが、実はその頃は『硝子戸の中』は読んでいなかったと思う。その頃は『明暗』が一番面白いと思った。

ご承知の如く『明暗』は未完の小説だが、私はこの最後の小説が気に入ったものだった。正直に言うと『明暗』以前の小説は私は退屈だった。漱石ぐらいは一応読んでおこうという滑稽な義務感から私は我慢して読んでいたものだった。

元来、私は長編小説は好まない。私には漱石の小説は長編に属するのだ。
しかし『明暗』は未完にも関わらず文庫本2冊分の小説だが、私は稀有にも退屈せず一気に読み通した。何が面白かったのか? 私が大変面白いと思ったのはストーリーなどではなく登場人物の会話のやりとりだった。それは登場人物の心理・性格描写になるのだが、それが面白かった。 

この会話のやりとりの面白さは、映画『丹下作善余話 百万両の壺』の会話のやりとりの面白さに通ずる。 つまり登場人物の会話が、私流に言えば、生きているのだ。
森鴎外の小説( 但し後期のもの )に言えることだが、この『明暗』に登場する女性達は、実に闊達で、まさに生き生きとしているのだ。それに比べて登場する男性たちは概して影が薄い。

いずれにせよ、私は『明暗』の登場人物たちの会話が大変面白かった。
ここで面白いというのは可笑しいという意味では勿論ない。「生き生きとして闊達だ」という意味だ。

『明暗』は未完だが、水原美苗の『続明暗』も私は読んだ。漱石の文体がそのまま引き継がれて、その芸には私は感服した。この『続明暗』も面白かった。
***
此の「明暗」は再読しようと思いつつ、今や何十年も過ぎてしまった。
いずれ (と言っても何時になるか分からない) 又読もうと思っている。
私に残された時間も気力も充分とはいえない。
だから結局再読しないでオサラバするかも知れない。

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