碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

チェンマイジャイアント 2

2016-01-17 10:57:55 | タイ紀行
コーヒー農園のご主人と娘さんらしい人が、タイ人の見学者の人々と記念写真に収まった後、ワシらとあいさつを交わしながら、東屋で話をしてくれた。てっきりコーヒーが飲めるものと思っていたので、期待を込めて、コーヒーを飲みたいのですがここで飲めますかと尋ねるとここでは飲めないという返事であった。絶好のロケーションのなかの、小さな東屋でお点前をいただくようにおいしいコーヒーを飲めるのではないかというぜいたくな期待があったのだけれど、残念ながらそうは問屋が卸さなかった。おいしいコーヒーを飲むなら村のコーヒーショップに行かなければならないということだった。ここはあくまで農園であり観光施設ではないということです。彼らはワシらのことを日本からきた見学者だという風に思ったらしく、そうには違いないが、日本人が来るのはめずらしいと大いに歓迎している様子であった。たまたま通りかかっただけですとは言えず。タイ語のボキャブラリーが分からないこともあり、ご主人の説明もあまり理解できずにいたが、これから行く目的地の話をし、道順を尋ねると、その時初めてワシらが大きな間違いをしていることに気づかされた。いま来たT字路を左折して村へ戻らねばならないと指摘された。農園主のお二人とお互いに写真を撮り合って、美しい桜の木の下での美しい誤解を記録して、挨拶もそこそこにいま来た道を村へ目指して山を下った。村の中に今風な造りの建物のあるコーヒーショップがあった。とりあえずここでコーヒーを飲まなければせっかく来た意味がないような気持ちになっていた。誰もいないお店にしばらく休んでいると、裏の山からおじさんがやってきた。コーヒーを飲みたいというと、なんだかよくわからない返事で去って行ったので、場所を変えようとバイクにまたがると、今度は若いお姉さんがやってきて、コーヒーを飲ましてくれることになった。そのお店の壁に手書きの地図があったので、目的地までいく道順を尋ねると、まだまだ遠いらしい。3005号線に一旦もどってそこから分かれ道まで5kmぐらいあるという。ワシらはかなり手前の道を山へ入ったことがわかった。これを美しかった誤解というかどうか知らないけど、もうお昼を過ぎていたので、そこの売店にあるカップヌードルをたべてすぐに出発した。ゆっくりコーヒーを味わっている場合ではない。チェンマイの街中で飲むコーヒーと味が違うかと問われれば、微妙な差しかわからなかった。食材がとれるところが一番おいしいとは限りらない。食は文化だから、そのノウハウがある場所が一番だと思う。バイクに乗って3005号線に戻り、もう一度目的地目指してタイの田舎の風景の中を走った。

   ここでブリッジ(場面をつなぐ)BGM 小さな木の実 ココをクリック








<急に雰囲気がかわって、この場面転換は今は亡き「つかこうへい」を思い出しました。それで、そのノリで書くことにしました。>

男「そりゃなあ、バイクが古いということは知ってたさ。でもな、こんな急な山道になるとは想像をはるかにこえていたし、ましてや二人乗りじゃ無理なんだよ。解ってくれよ」

女「何言ってるのよ。こんな山奥で私を置いて先に行くとでもいうの。二人でここまで来たのよ。あんただけの力だけでこんな遠いところまで来れたと思ってるの。」
「あの朝、あんたが遠くまで行くんだというから、私顔も洗わずに、すべてを捨ててついてきたのよ、もう二人は離れないって言ったのはあなたよ。私、正直いうと騙されているのかと思ったわでもそれでもいいと思ったのよ、あんたについて行こうと決心したのよ。だから」

男「解ってるさ、おまえがバイクの後ろに乗って走り出した時、泣いていたのを知らないとでも思ってるのか、お前の乳房が揺れていたのを背中で感じてたんだよ。・・」

女「あんたと二人で118号線を突っ走り、行く手に朝日が上がって、私たちを照らした時なぜか無性に泣けてきたのよ」

男「でもな、これは別問題だ。冷静になれよ。二人でバイクに乗ってこの坂を上れないんだよ」    

女「騙されないわ。二人で登れない坂はないわ、バイクの後ろを押すから二人で行くのよ」

       MusicEfect 白鳥の湖

男「もう俺たちには時間がないんだよ!」

女「えっ、なんて言ったのよ」

男「もう時間がないんだよ・・ジャイアントに行きつくことができても俺たちはもうもどれないんだよ・・」

女「やっぱり、そうだったの・・きのう赤いバラをかってくれた時から感じていたわ、おまけにそれをくわえて踊りだすんだもの酔ってもいないのに、きっと何かがあるって思ってた。・・覚えてる、あんたがはじめて私の部屋へ来たときのこと、機動隊に殴られて血を流しながら部屋へ転がり込んできた夜のこと。照れ笑いしながら差し出したのは黄色い水仙の花だったわ。私、あんたがバカじゃないかと思った。でもね、朝にあんたが出て行ったあとその花を見ているとうれしかったわ。それから、二人で銭湯へ行った時のこと、わざわざ赤いタオルを買ってさ、首に巻いて歌ってたっけ、あの歌今でも覚えてる?私ね、今でもあの赤いタオルを持ってるのよ。・・でもね私あんたに隠してることがあったの。実はあの頃私には・・」

男「ちょっと待って、そんな話は聞きたくないね」

女「いいえ、聞いて。私には好きな人がいたの。その人機動隊員だったのよ。・・ごめんね、いままで隠してて、」

男「・・・・」

女「その人が言ってたわ。ある日、学生のデモを並列規制しながら、学生と話をしたんだって、学生らが言うには税金で給料もらってんだから国民のために働けよって。デモなんかに出動するのは税金の無駄だって、それでデモの出動手当だけで学校が立つというんだって。だから彼も言い返したのよ、学生さんもデモで動員手当をもらってるんでしょって。そしたら、学生が怒り出して、俺たちは自分の意志でデモに参加している、金なんか一銭ももらってないって。彼はそのとき初めて、学生の顔を見たと言ってたわ。それから彼はデモ規制が楽しくなったって、細い角材や薄いヘルメットで武装しても、機動隊の武装とくらべればおもちゃで遊ぶ子供見たいもんだと言ってた。でも、たたかれても何度もデモをする情熱が羨ましかったって。内心彼らの情熱が世の中を変える日が来ると思ったそうよ。だからデモがある日は朝からウキウキしてたと言っていたわ。本当は学生の情熱とぶつかることが彼の生きがいにもなっていたのよ。・・そんな彼を誤解してたのよ私それで・・」

男「俺も嘘をついていたよ、君の部屋に初めて行ったとき、機動隊に殴られて頭に傷を受けたと言ってたけど本当は違うんだ。確かにデモの現場にはいたけど。機動隊との攻防で逃げる学生の足元を払って逮捕する私服の刑事がいてね、普段は群衆に紛れて姿を隠すのだけど、この日はスーツ姿に運動靴を履いているから、彼らが刑事だとすぐわかるわけさ、それが、群衆のふりして学生を応援しているように見せかけてけしかけるんだ。すると群衆の誰かが、デモに参加して機動隊に石を投げたりするだろ、そいつを狙って、足をひっかけて逮捕するんだ。捕まえやすいやつを何人か捕まえてその日の仕事は終わりというわけさ。「○○は公務執行妨害で一名逮捕、身柄を確保し署に戻ります」と周りに聞こえるように大きな声でいうんだ。その時俺、猛烈に腹が立って刑事の足を思い切り蹴とばしたんだ。その後のことはよく覚えていないけど、必死で逃げたよ。逃げる途中で転んで、気づいたら頭にけがを負っていたってわけさ。刑事にしてみたら学生が何を主張しようが、民衆が何を感じようが、そんなことはどうでもいい。ささっと命ぜられた仕事を終えてしまいたいぐらいにしか考えていないんじゃないか。彼らもサラリーマンで家に帰ればよきパパでありよき主人であるってわけだけど。電車の止まった線路の上を歩きながら自分が何に対して怒っていたのか考えていたよ。そして気が付いたら君の部屋へ来ていた。それが真相でね。」

女「黄色い水仙の花はどうしたの・・」

男「『そんな昔のことは覚えてないね。』」

女「明日、どこにいるの」

男、女「『そんな遠い先のことはわからない』・・・(笑う)」

男「けれど、今はっきりわかったことがあるんだ。」

女「なに」

男「実はバイクの鍵がないんだ」

女「えっ、ほんと」

男「バイクの鍵穴から抜け落ちたんだ、ボロバイクだから抜けることは気が付いていたんけど、さっきガソリン入をいれた後どこかで抜け落ちたらしいんだ。」

女「バイクの鍵がなかったらどうなるのよ」

男「あせらずに、落ち着いて、よく考えて、ということはエンジンが止まったらアウトだ。とにかくジャイアント行きは中止して、鍵を探そう」

女「せっかくここまで苦労してたどり着いたのに、ジャイアントに会わずに帰るの、もう少しじゃないの」

男「ジャイアントは逃げないさ、俺たちが生まれる前から在るし、俺たちが死んでしまってもまだずうっと生きているさ、その根っこは海の底までとどき、一番上の枝は宇宙にまで伸びているからね。生き物はすべてこの樹のおかげで生きている。ジャイアントが与えてくれる酸素でね。海に生まれた生命はこの樹を伝って陸に上がり、無数の形をしながら、あるものは途絶えあるものは生きながらえて今に至った、俺たちもその樹の一部さ」

女「相変わらずね、その眼が細くなる」

      ME 探し物はなんですか


男「必ず落ちているから、よーく探して」

女「落とした時チャリンとか聞かなかったの、落ちるかもしれないと思っていたのなら、なんでポケットに入れなかったのよ」

男「ガソリンスタンドまではあったのは確かだから、それまでポケットに入れていたけどね」

女「ポケットの奥に入っていたなんてことはないの、いつもろくに探さないであわてるんだから、ああ、こんな山道で鍵なんか探すとは思わなかったわ」

男「もんくを言うんじゃない。いやいや探しても見つからないぞ、真剣に探せよ。必ず見つかるから」

女「どこか心当たりはないの」

男「落ちるとすれば、バイクがガタガタ揺れた場所かもしれない、けどどこにあるかわからないぞ、道路の反対側へはねたかもしれないし、君は道路の左側をよく見て」

女「ガソリンスタンドまで何キロぐらい」

男「1キロぐらいかな」


       二人で上手から下手へ下手から上手へ二回往復する

女「あっ、あった」

男「ほんとかい」

女「嘘よ。そうでも言わなきゃやってられないじゃあない」

男「俺たち、なんかバカバカしいことをやってるよね。でもちょっとたのしい、もし、今俺一人だったら、どうしただろうなって思った。きっとこんなに一生懸命探さないね。山道を二度も往復してさ。」

女「あんた、何でも楽しんじゃうのね、私ちっとも楽しくないわ」

男「よし、やめよう、これだけ探したんだから、鍵はあきらめてガソリンスタンドまで戻ろう」

       場面はガソリンスタンドに代わる

この後に劇的な展開が待っていた  つづく









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1 コメント

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拝見しました (福田)
2016-01-22 19:16:02
足跡だけ残します
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