碧空の下で

人生の第四コーナーをまわって

チェンマイジャイアント 3

2016-01-23 16:24:15 | タイ紀行
ここはガソリンスタンドと言っても街にあるような立派な施設ではない。民家の横にガソリンの給油機が二つ並んで立っているだけの、ガソリンの量り売り所ぐらいの規模です。そこの若い女性に声をかける。

男「こんちわ」

ガソリンの女性「こんちわ、どう、鍵見つかった」

男「いいえ、道路をずうっと探してみたんだけどね、この辺には落ちていなかったかい」

ガ女「あいにくね、家族の人にも聞いたけどなかったわ」

男「弱ったなあ、鍵を夢中で探しているうちに、だんだんガソリンも減ってきたし、どうしたらいいかね。」

ガ女「そうね、このままじゃガソリン減るだけだし、」

そういうと、バイクの様子を見ながら、チョークを引いてバイクのエンジンを止めてしまったのだった。

男「ああっ・・、なんてことをするんだよ、このバカ女、エンジン止めたら終わりだろ、エンジンが動いているうちはまだ方法が考えられッるだろうが!たとえば、バイクの修理工場とか大きなガソリンスタンドとか行ってさ・・・ああ、やってくれたよおっかさん」

ガ女「そんなとこないわよ、このあたりには。チェンマイまでいけばあるけど」

そう言いながら、ガ女がエンジンスイッチを押すと、なんとセルが回った、チョークを戻すと今度はエンジンがかかったではないか、こりゃどうゆうこと、つつっつまり、鍵はなくてもエンジンはかかるってことです。そうか、鍵はなくとも電気回路はつながったままなのだ。おお。そんなら最初にそういえよガ女、いやガソリンスタンドの美人さん。

男「おおエンジンはかかるんだ。希望が出てきたぞ、あとはチェンマイまで行くガソリンがあればいいわけだ」

ガ美女「どうする。レンタルバイクの持ち主に電話してみたら」

男「電話して相談しろってか、そんなことよりガソリンを入れることを考えてよ、チェンマイまで走れれば何とかなるからさ」

ガ美女「どうしてほしいの。ガソリンタンクの給油口は錠を外して座席をまくらないと開けられないし」

男「だからその、鍵を使わないで、ドライバーとか針金とかで座席を開けられないかね」

ガ美女「できないわ」

そこへ、ピックアップに乗った男女3人組の若者が通りかかる。ガ美女と知りあいらしい

ガ美女「ねえちょっと、バイクが動かないんでこまってんだけど見てくれない」

男「こんにちわ」

ガ美女「この人がバイクの鍵を失くしてさこまってるのよ、シートが開かないのよ、なんとかならない」

三人組A女「私バイクの錠を開けたことないしできないわ」

男「あのー、ピックアップの後ろにバイクを乗せるというようなことは」

三人組A女「それは無理ね、うしろに荷物があるから」

三人組A女「Bは錠開けたことある」

三人組B男「ないけど、座席のシートをまくりゃいいんだろ、C男ドライバーもってる」

三人組C男「あるよ、俺も手伝うよ」

三人組B男「サイドパネルを外して横からロックをはずしてみるかな、俺が合図したらシートをひっぱってくれ」

三人組C男「OK」

かくして何度かやるうちに、座席のシートが見事開いたではないか。思わずみんな拍手した。やった起死回生の満塁ホームランだ。タイ的に言えば、ムエタイの最終ラウンドで放ったクロスカウンターがさく裂した瞬間だ。さっそくガソリンを満タンにして、座席のシートがロックされないよう、鍵穴に雑巾を詰めてエンジンスイッチを入れた。するとエンジンは当たり前に唸りをあげた。やれやれこれで帰れるぞと安心したその時、C男がためしに車の鍵をバイクの鍵穴にさしこんだ。左に回したら鍵が動きバイクのスイッチが切れてエンジンが止まった。こんどは右へ回したが、それが回らない。みんなの顔が凍りついた。おい冗談じゃないぜ、完全に回路が切れた状態だ。C男の顔も引きつっていた何回かさしなおして車のキーを右に回すと運よく鍵穴が右に回り通電状態なった、恐る恐るイッチを入れるとセルが回った、エンジンがかかった。最後までひやひやさせられて、ようやく一安心だ。しかし、今までの苦労は何だったんだ。男はそれならその車の鍵で最初からシートも開いたかもしれないと思い、その鍵を売ってくれとC男に言ってみたが、当然拒否された。男と女はみんなにお礼を言い、ささやかなお返しにお金を差し出した。するとみんなそれを受取ろうとはせず、いらないいらないと手を振って逃げるではないか、なんという人たちだ、タイ人の心の優しさをめいっぱい感じた瞬間だった。男としては「はいそうですか」というわけにはいかないので、彼らの車の座席にお礼のお金を置いて、彼らに深々と頭を下げ手を合わせた。頭の中では「俺たちは天使じゃない」という芝居を思い出していた。あれはあくまで芝居であったが、今日ほど現実として、ひとの善意をひしひしと感じたことはなかった。



このブログを読んだ人は、タイでバイクの鍵を失くしてもあわてることはないと知ったと思う。まずは車の鍵でもなんでも入れてみることだ。しかし、なんというか冗談みたいだけどこれが現実のタイなのは間違いない。ボロイバイクにはくれぐれもご用心
















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