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消費生活アドバイザーが食品表示をわかりにくく解説するブログ

消費生活アドバイザーが、食品表示を、妄想や推測、人から聞いた噂などを交えて、わかりにくく解説していきます。

地図すらも表示

2017-05-07 23:54:23 | 表示に関する話題
食品表示においては、消費者が誤認するような表示が禁止されています。
実は、地図も表示と見做される可能性を秘めています。
景品表示法、告示「商品の原産国に関する不当な表示」です。

うーん、これは、その昔、イタリア産とかスイス産が国内産よる素晴らしい!みたいな内容から始まったような感じがするので。
国内産なのに、海外で生産されたと誤認されるような、云々~みたいな内容になっていますね。
今となっては食品だと国産の方が嬉しい消費者が多いでしょうから、若干違和感があるかもですが。

端的に言うと、国内で生産されたものに、例えばスイスの地図だの国旗だのをつけて、さもその国で生産しました、みたいに誤認させるのは不当表示、ということです。
時計とかだとイメージしやすいですかね。

まぁ、告示が出た、ということは、昔頻出した問題だったのでしょうね。
食品で関係ありそうな告示はこの原産国と、「無果汁の清涼飲料水等についての表示」です。
後者については「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」でより詳しく業界内では取締っていますが、告示では乳飲料や粉末飲料、氷菓などもカバーしており、幅広く、ざっくり言えば「無果汁」か低果汁の場合果汁の割合を書くこと、という決まりがあります。

ざっくりではなく、まじめに解説すると「無果汁」とか低果汁の場合に果汁の割合が無い場合、下記のようなことが禁止されます。
「一 当該清涼飲料水等の容器又は包装に記載されている果実の名称を用いた商品名等の表示
二 当該清涼飲料水等の容器又は包装に掲載されている果実の絵、写真又は図案の表示
三 当該清涼飲料水等又はその容器若しくは包装が、果汁、果皮又は果肉と同一又は類似の色、かおり又は味に着色、着香又は味付けがされている場合のその表示」
一、は、つまり、メロンソーダ、とかそういった感じですね。
二、は、メロンの図とかそういったことですね。
三、は、何を言ってるんだ、と一瞬なりますが。
つまり、色とか香りとか味からその果物っぽいなーと思わせる場合は、商品に書かなくても消費者が果汁を使っていると誤解するだろ、という話のようです。
メロンっぽい味の商品を設計した時点で、無果汁なら「無果汁」、低果汁なら果汁の割合を書かないとアウト、ということですね。
もう三だけでいいんじゃないかな、と思いますが。

話がそれましたが。
地図については、告示で出ているのは、国内産のものを海外産と誤認させるような事案ばかりでしたが。
景表法自体が消費者が誤認する表示を禁止する、ということを考えると、逆の例として、海外で生産した商品に日本の地図をつけて、さも日本産であると誤認させるような表示もアウトになりかねない、ということかな、と思います。
景表法については、「程度問題」というのがあるので、日本の地図を載せようが国旗を載せようが、でかでかと「※中国産です」と記載しておけば問題ないとかそういうことはあるかもしれません。
(小さい文字だとやっぱりアウトかも?)

景表法については、告示等できちんと示されていない分については、本当に「総合的に判断する」という部分が大きいので、いざとならないとOKかNGかはわからない部分がありますが。
一応、「地図まで…!」というインパクトはあるかな?という気がしたので。
広告会社とかデザイン会社を悪く言うつもりはないんですが、彼らはそういった法律に対してのプロではないので、メーカーや販売者はきちんと自分たちで見極めてデザインの修正などを指示する責任がありますので。
悪気なく雰囲気を出すために地図の図案のようなものを配置されたことにより、他の色々と相まって誤認を招く、ということもありますので、パッフィングの域を超えないように気をつけないといけないところです。

消費者の方々は事業者の「ずるい」表示を見て、イライラすることも多いかもしれませんが、多方面にわたる法律を色々見て事業者も広告やパッケージをひねり出しています。
すみずみまで良く見てみると楽しいですよ。

栄養計算の正体

2017-05-04 11:58:05 | 表示に関する話題
さて、食品表示法に於いて、栄養成分の表示が義務付けられましたが。
栄養成分値の表示については一部企業から大きな反発がありました。

例えば、旬の食品は栄養が豊富、とか言うじゃないですか。
この季節の魚は脂がのっている、とか。
そういった季節変動が大きい原材料をメインに使っている食品をとりあつかう企業にとっては、「範囲で表示してもいいけど、その範囲が過剰に広いとNG」と言われても、その範囲をどうやって設定するのか途方に暮れる訳です。
また、頑張って範囲表示にしたとして、結局幅広い結果が合理的な範囲である何らかデータを持っていたとして、果たして消費者に利益があるのか?という反発もありました。

栄養成分表示義務化の予感に晒された多くの企業が任意表示を始めていましたが。
事業者も大変だし消費者にそこまでメリットないし、どうなん?という食品も存在した訳です。
まぁ、でも「じゃあ、こういうのは例外として表示しなくていいよ」というのを、あまり広く設けてしまうと、なんやかんや理由をつけて表示しない人が増えてしまうのも事実。
という訳で、水とかみたいに、栄養成分が全部ゼロとか微量みたいな食品や、レシピが短期間で変わるようなものは表示を免除されましたが、季節変動が大きかろうが表示しろ、という結果になりました。
全部ゼロのやつはゼロって表示させたらいいんじゃないの?と個人的には思いますが。
消費者的には「なぜ表示が無いんだろう」って思うでしょうし、常識的に考えてゼロでしょう、って言われても、そうなの?みたいな人もいるかもしれません。

まぁ兎も角、殆どの業者が何らかの形で表示が必要となった時に、じゃあ、法律で決めてある誤差範囲を越えても許しましょう、ということで、
合理的な根拠があれば「推定値」である旨記載すれば、いざ、国がその商品の栄養成分を分析して表示とかなり違う値が出ても、許しましょうとなりました。
その表示、果たして意味あるの?と思う方もいるかもしれません。
が、実際問題として、1回分析しただけの値って、その程度の値、という考え方もあります。
季節が変われば、原材料の魚の個体が変われば、かなり違う値が分析したとき出てくる可能性も高いのです。
なので、一回こっきり分析しておかしいじゃんと結論づけるのもおかしいじゃん、っていう話です。
日々食べる焼き魚は自分で素材を買ってきて作ってるんだから兎も角、加工食品の焼き魚は加工されたものを買っているんだから、きちんと栄養成分を示してほしい、と言われても…
消費者は「加工食品」となると、加工度合いがそれほど高くなかったりしても、加工されたんだから、という、恐れや過剰な期待をもっているように感じます。
加工食品は、時代とともに消費者への情報提供などの義務付けが増えて、負担が大きくなっていますが、価格がなかなかあげられない状態で過ごしています。
「便乗値上げ許すまじ」みたいな声もありますが、時代の流れとともに増えた見えない負担や消費者の謎の期待に応えるために、企業も色々な何かを削られているけど値上げする機会が無い、というのも現状でしょう。

なんか話がそれましたけど。
栄養成分が義務付けられて、推定値と表示しようとした事業者は二つの方法を選ぶことが出来ます。
分析をするのか、栄養計算をするのか。

栄養分析は、実は凄い値段です。
自社で栄養分析するような事業者がいれば、相当金持ちか、何か別途栄養分析の事業を持っている会社だと思います。
大体外部に分析を依頼しますが、凄い高いです。
1検体何万レベルです。
商品の価格が1個数百円だったりするのに対し、何万レベルです。
大手企業なら、とも思いますが、大手企業でも多種の商品を全て分析に出して、となると、結構な費用負担です。

というわけで、多くの企業が計算による表示を行っていると思います。
栄養計算をするために使うのが、7訂栄食品成分表な場合が多いわけですが…。
自分たちが使っている原材料が載っているとは限らないんですよ。
データベースと言うからには壮大な量のデータが載っていそうですが、確かにそこそこ量はありますが、全ての企業が使っている原材料を全て網羅できる程かと言われたら、それほどではありません。
昔は載せていなかったけれど、メジャーになってきた安いエビを載せる、とか拡充してはいますが。
あくまで「ある程度メジャー」なものであり、マイナー原材料については載っていないのです。
食品添加物も載っていません。
よって、7訂食品成分表だけに頼れば、食品添加物由来のナトリウムが増えようが反映されなかったりします。
そこは添加物協会かどこかが、食品添加物の栄養成分のデータを提供していたりするようですが。
国が「公的なデータベースなどを使え、例えば7訂食品成分表とか」と言うほど、7訂食品成分表は事業者にとって充実していないのも残念ながら事実なのです。

実際食品成分表は表示作成を目的に作られている訳でも無いとおもいますので、仕方ないんですけど。
あちこち歪みまくった中で、まぁ事業者も頑張っているんですよ、多分、きっと…
誰が悪いという訳でも無いんでしょうけど。

水素イオン濃度調整剤???

2017-04-24 22:37:53 | 表示に関する話題
添加物の一括名表示の中に
「水素イオン濃度調整剤」
というものがあります。
古くから表示に馴染みがあり過ぎて新しい情報を入れていない人は「何それ」ってなるかもしれません。
が、冷静に考えると、水素イオン濃度…ああ、pH調整剤のことね!ってなると思います。
そうです、こいつはpH調整剤です。

何故かpH調整剤と書いてもいいよ、と言いつつ、現代のオフィシャルワードは「水素イオン濃度調整剤」のようです。
長い。
表示に採用しているものを見た記憶がないですが、高級品とかだと使われているんですかね。
あ、そもそも高級品にpH調整剤を使うことは無いのか???

うーん、何でしょうね。
pHというのが気に入らなかったのでしょうか。
邦文!みたいな感じで、水素イオン濃度調整剤となったのでしょうか。
どうでもいいですけどpHを「ペーハー」と読むのか「ピーエッチ」と読むのか問題がありますけど。
JIS的には随分昔にピーエッチを標準にしていたようですね。
そういう紛らわしさも解消したかったのでしょうか?

用語の統一や変更は、一時期無理くりやると、意外とそのうち定着するんですけど。
水素イオン濃度調整剤はあまり定着しそうにないですね。

一括表示という幻

2017-04-22 15:48:23 | 表示に関する話題
食品表示を行う人の多くが口にする言葉、それは「一括表示」
私もブログで便宜的に「一括表示」と書くことがあります。
今でこそ日本の標準のようになっていますが、食品表示を一括で行うようになったのは、ここ十数年のことです。
またまたTKNさんたら~とか言われますが、本当です。
昔はてんでバラバラに書いていても全く問題なかったです。

「一括表示」というのは、法律では確かに用語として定義されていないはずです。
名称から製造者までの主要な6項目位について「一括で表示すること」と言い出したので、そこから「一括表示」という名前が生まれたのだと思います。
一括で表示することについては、一時期は業界からも相当反発があったと記憶しています。
消費者がわかりやすいように、表示事項をまとめて表示したい、という当局の提案だと思うのですが。
一方で事業者は、消費者に訴求する何かを入れたい、などの事情の他に、物流のためのJANコードはどうしてもここに入れたい、とか、PL対策としてこれだけの文章を入れたい、など、色々な事情があって、一括表示でまとまったスペースを取られるのも困る、という思惑もあったと思います。
中身が見えるようなパッケージなどの場合は、特に一括表示のシールをバーンと張ることで中身が見えにくくなる、という、消費者にとってのデメリットもありました。
そういった、個々の事情を考えずに決めるのはどうか、という意見があっても、国は一度「やる」と言ってしまったことは取り下げません。
但し、やはり実際始まってみるとデメリットも大きいので、少し緩和していく、という流れも出ました。
そして、食品表示法になると「一括で表示する」という文章は消え、代わりに、例示したように表示するのが望ましい(一括表示のような枠付きの表示)という表現になりました。

ちなみにこの一括表示、基本的に名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造者(輸入品なら原産国も)を入れますが、省略できる項目があったり、他に法律で義務付けられていることは一緒に記載していいとか、一括で表示している事項の近くに表示することと決められている事項があったりなどなど、範囲がなかなかにぼんやりしています。
法定の表示を全て一括表示と勘違いしている人もいて、栄養成分の一括表示部分、などと言いだす人もいます。
そもそも厳密に法律で定義がある言葉でない限り、「勘違い」でもなんでもないと言われればそうなんですけど。
基本的に当初の一括表示が「枠などで括る」という前提があったこともあり、一括表示と言えば枠に入っている部分なんだろうなぁとなんとなく思っていたのですが、枠外上部、枠外下部、枠外近隣の表示のどこまでを「一括表示」と考えるかはその人次第なので、結構もう面倒くさいなぁと思う用語ではあります。

添加物のアイデンティティ

2017-04-21 22:59:11 | 表示に関する話題
食品添加物のアイデンティティは「添加物目的であること」です。
以前の記事で清涼菓子が添加物オンリーで成り立っていても、それは「食品」であり「添加物」ではないという文章を書きましたが。
加工食品に含まれる原材料としての添加物も、添加物か否か、という判断をされる時には「添加物として添加されているか」ということが着目されます。
食品添加物の集まりでも製品になれば食品、という以前の記事とは逆に、一般の食品だけど、添加物目的で製品に使えば添加物扱い、という状況が生まれます。
いわゆる「一般飲食添加物」「一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用される品目リスト」に収載されているものがそうです。

一般飲食添加物に多いのは着色料ですね。
野菜ジュースなども、着色目的で食品に添加した場合は「添加物」「着色料」と見做されます。
結果、添加物としての表示が必要となります。
サフランなどもありますが、サフランライスなどは、黄色くするためにサフランを入れたのか、香辛料としてサフランを入れた結果黄色くなったのか…という鶏が先か卵が先か、みたいな気持ちになりますね。
赤飯は赤くするためにささげを加えているなら、ささげは添加物なのか?とかいう議論にもなりかねないものですが。
伝統食品は何となくスルーされているっぽくてそれはそれで面倒です…。
オレンジ果汁などもありますが、じゃあ、ゼリーにオレンジ果汁を入れたから、結果としてオレンジ色に着色されたので着色料か、というと、それは結果論なので、着色料にはなりません。
オレンジ味にしたかった、という目的であれば、それは食品扱いです。

ちょっと話がずれますが、例えば栄養強化目的でビタミンを入れた結果飲み物が黄色くなったとしても、事業者は黄色くしたくなかった…ということがあったりします。
さらに言えば栄養強化目的であれば、ビタミンの表示が不要になります。
謎の黄色い液体が出来上がります。(誰も得しない)
誰も得しないので、事業者はビタミンを入れていることを原材料に表示することが多いですが、そこには「着色料」という文字は付きません。

閑話休題。
添加物の表示について書いた記事の中でも何度か「使用目的」について触れていますが、食品添加物のキーポイントは「目的」だなぁとつくづく思います。

人の食生活を豊かにする目的で開発された食品添加物が、結果として嫌われる羽目になってしまったというのは、何とも皮肉な気もします。