消費生活アドバイザーが食品表示をわかりにくく解説するブログ

消費生活アドバイザーが、食品表示を、妄想や推測、人から聞いた噂などを交えて、わかりにくく解説していきます。

「生クリームは飲み物」ネット通販中止

2021-09-23 20:04:58 | 表示に関する話題
「生クリームは飲み物」というものを通信販売していた会社があったらしいのですが、保健所から指導があって販売中止になったらしいです。
お詫びの文書はこちら

お詫び文書から一部引用すると---
当初「生クリームは飲み物」は「洋生菓子」として開発をしましたが、保健所からのご指摘で「社会通念上、製品の形状からして飲み物ではないか?」「乳製品を使用しているという観点から乳飲料ではないか?」というご指摘をいただきました。
---引用ここまで

実際の製品の写真と思われるものがネット上にありましたが、飲料が入るようなプルタブ缶で、中からどろっとした乳飲料が出てくるような商品だったようです。
そもそも「飲み物」と製品名をつけてしまった時点で、お上に対しては負け戦になっていたのではと思いますね。
「カレーは飲み物っていうけど実際は食べ物だろ!」とかいう反論も承知しますが、カレーは確かに社会通念上食べ物としての実績がありますし実際咀嚼しないと食べられないゴリゴリの食べ物であると思いますが、具材もないどろっとした製品を飲料缶に入れて出してしまった時点でこの製品は飲み物としての体を作ってしまっています。
また、ネットの記事でオンラインショップからの引用として「超濃厚生クリームを飲み物にしました。おいしさをギュッと冷凍しお届けいたします!タピオカ用のストローで口いっぱいに広がる生クリームの濃厚な味!」という文言が載せられていて、これが本当なら店側としても飲料として売っていたとしか思えないんですが…。
いずれにしろ、保健所の言う「製品の形状」以外にも飲料と判断できる要素があるような気がしました。

因みに通販サイトのキャッシュを見ると、一応名称的には冷凍の洋生菓子として売っていたみたいですね。
引用開始---
【名称】洋生菓子
【内容量】105g
【消費期限】製造日を含む1ヶ月
【保存方法】要冷凍(-18℃以下)で保存し、解凍後は速やかにお召し上がりください。
【冷凍前加熱の有無】加熱していません。
【加熱調理の必要性】無し。
★原料が新しくなりました!
生クリームを使用した乳脂肪分14%のクリームを使用することでより深い味わいになりました!
【原料名】乳製品(国内製造)、植物油脂、還元水飴、砂糖、洋酒/乳化剤、カウコーヒー、メタリン酸Na、香料、セルロース、安定剤(増粘多糖類)、(一部に乳成分・大豆を含む)
---引用ここまで

更に保健所から商品名に対しても指摘があったとことで、お詫び文書には以下のような記述があります。
引用開始---
「生クリームは飲み物」という製品名についても、「クリームという言葉を製品に使用するには、昭和二十六年(1956 年)にできた乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称は乳等省令)に準拠したものでないといけない」というご指摘をいただきました。
---
お、おう…。洋生菓子だとしても、生クリームそのものと誤認させるような名称だとやっぱNGなのかなとも思いました。乳等省令だからな…飲料には限らないもんな…。
最近は乳等省令を気にしていないのでは?と思うようなネーミングも増えてきているので、引き続ききちんと取り締まってほしいものです。

この保健所の指摘に対し企業は謝罪文の中で以下のようにコメントしています。
引用開始---
現在、「生クリームは飲み物」は弊社のハワイカウコーヒー新宿御苑本店の店舗内で製造しています。
店頭販売(飲食店の営業許可)では皆様にすぐにお飲みいただくため問題は無いのですが、通信販売で「飲み物」を販売するとなると、法律上、専用の工場レベルの設備・営業許可が必要とのご指摘でした。
---引用ここまで
その後コンセプトとか色んなことを勘案すると、洋生菓子として咀嚼するような製品にするとコンセプトに合わなくなるとか色々な話をしたのち、いったん製造中止としたとの結論が語られています。
うーん、そもそもこれ、洋生菓子だとしても、飲食店の営業許可では通販できないんじゃないかな???って思いました。
食品の製造業とか取るの、そんな簡単じゃないような気がするんですが…。

日刊スポーツの記事によると
引用開始---「飲むヨーグルト」を製造している業者など、約50社に製造工程を依頼したが、粘度が高い生クリームは排水管が詰まるなどの理由から全ての会社に断られた。---引用ここまで
とのことで、自社の構造設備では無理だから外注しようとしたけど断られてしまったようです。
まぁ凄い大量に製造してくれるとかで業者側に大きな利益が出るなら、色々改善して手を貸してくれる業者もあるかもしれないけど、飲料なんてそもそも水物ですぐ売れなくなる商品が多いから、無理してまでやりたがる会社はないでしょうね。

店舗側にしてみると、コンセプトにあわない製品にはしたくない、でも今の仕様のままでは作れない、製品名も変えなきゃいけないと厳しい状態ですね。
騙そうとしてわざとやっているわけじゃないんだし…みたいな擁護の声が出ているのも見かけましたが、こちら衛生上の問題になるので怖いですし、名称についても、他の企業が守っていることを守らないのはやっぱだめです。
インパクトがある商品名だから話題になった、というのもあるでしょうし、だます意図はなかったとしても、消費者がある程度「商品名につられて購入している」以上、結果だましていることになると私は思います。
これが激化していくと、消費者が製品を選ぶときにも支障が出てくるからね。そして規制が強くなると。誰も得しないです。

因みにお詫び文書を見ると、製品名については「生ホイップは飲み物」として店頭販売を再開するようです。
新ロゴを見ると「生クリーム入りホイップを使用」って書いてありますけど、大丈夫?生クリーム(乳等省令上の規格を満たす)本当に入ってる?と若干不安になりますね。
流石に一回やってしまっているので、その辺担保するようにして…いるのかなぁ…???
いつの間にか仕入れてる原料の仕様が変わってたけど気づきませんでした!とかないといいね?
そんな長寿商品にはならないか…。

コロナ禍で飲食店は風当たりが強くて大変だと思いますが、新しいことをやるときはぜひ関連法規を確認して、問題ないよう(特に衛生関連)引き続き頑張ってほしいと思います。
私の好きだった飲食店もいくつか閉店してしまって本当に悲しいのですが、だからといって法律守らなかったお店の売り上げが高くなって、やったもん勝ちってなるのは真面目なお店のことを考えるととても悲しいので…。
私はまだワクチン打ててないですけど、ワクチンパスポートでもなんでも活用して、早く飲食店の商売が再浮上できますようにと願っています。