消費生活アドバイザーが食品表示をわかりにくく解説するブログ

消費生活アドバイザーが、食品表示を、妄想や推測、人から聞いた噂などを交えて、わかりにくく解説していきます。

賞味期限の切れたパン、配ったら…ニュースになりました。

2017-10-25 23:25:04 | 表示に関する話題
台風の影響により、新幹線の車内で夜明かしすることになった乗客に対し、駅の備蓄賞味期限5年パンを配ったところ、一部賞味期限が切れていたということでニュースになっていました。
賞味期限5年に対し、超過は2ケ月、安全係数を考えれば騒ぎ立てるほどのことではないのでは?という意見も見ましたし、
消費期限と賞味期限の区別がついているのかが問題ではないか、という意見も見ましたし、
言い出しっぺの乗客が苦情的に申し立てたのか、それともJRの判断で回収にして大事にしたのか、などなど、様々な意見を見ました。

まず、消費期限や賞味期限が切れた食品を売っても良いのか。という話から始めたいと思います。
おなじみの消費者庁の「Q&A」です。
「(加工-38)表示された期限を過ぎた食品を販売してもよいのですか。
(答)食品の販売が禁止されるのは、当該食品が食品衛生法上の問題がある場合、具体的には食品衛生法第6~10条等に違反している場合ですので、仮に表示された期限を過ぎたとしても、当該食品が衛生上の危害を及ぼすおそれのないものであればこれを販売することが食品衛生法により一律に禁止されているとはいえません。
しかしながら食品衛生を確保するためには、消費期限又は賞味期限のそれぞれの趣旨を踏まえた取扱いが必要です。
まず、消費期限については、この期限を過ぎた食品については飲食に供することを避けるべき性格のものであり、これを販売することは厳に慎むべきものです。
また、賞味期限については、期限を過ぎたからといって直ちに食品衛生上問題が生じるものではありませんが、期限内に販売することが望まれます。」

端的に言うと、
「消費期限切れの食品は食べられない物だから、販売は絶対ダメ」
「消費期限切れの食品は、絶対食べられない訳じゃないけど、販売しないでほしい(強制」
といったところでしょうか。


では実際に、消費期限や賞味期限が切れた商品を売って食中毒が起こったら???
「(加工-49)期限を過ぎた食品を販売して食中毒が発生した場合、消費者に対する民事上の責任は、製造業者、販売業者のどちらにあるのですか。
(答)期限を過ぎた食品を販売して食中毒が発生した場合の消費者に対する製造業者や販売業者の民事上の責任は、それぞれについて、発生原因や過失の有無等表示以外の種々の要素も勘案し、民法や製造物責任法等に照らして最終的には裁判所が判断することとなりますので、一般的かつ択一的に、どちらに責任があるかということはいうことができません。
なお、製造業者については、食品の欠陥による製造物責任等が、販売業者については、民法による債務不履行責任、不法行為責任等が問われることとなり、原因の如何によっては、両方の責任が認められることもあり得ます。実際にどちらが消費者に対して賠償を行うかは、被害を受けた消費者の選択によることとなり、また、製造業者と販売業者のどちらがどの程度最終的に負担するかは、原因に対する寄与の程度や契約関係等により判断されることとなります。」

端的に言うと、ケースバイケース、という事です。

また、このひとつ前のQAでは製造者の肝を冷やす内容が記載されています。
「(加工-48)消費期限又は賞味期限前に販売された食品を購入した消費者が、その期限を過ぎた後に当該食品を喫食して食中毒が起こった場合、消費者に対する営業者の民事上の責任はあるのですか。
(答)適正な消費期限又は賞味期限の表示を行っていた食品で食中毒が起こった場合、その期限の前か後かということは、営業者の民事上の責任を判断する上で、一つの考慮事項になるものと考えられます。
しかしながら、賞味期限の表示そのものが衛生的な要因のみならず、味や香りといったことも勘案して設定される場合もあり、必ずしも、期限を過ぎた後の喫食を避けるような表示をしているとはいえません。
すなわち、食中毒が起こった場合の営業者の消費者に対する民事上の責任は、民法や製造物責任法等に照らし、表示のみならず種々の要素を勘案して、営業者に過失があったか、商品に欠陥があったか等を考慮して最終的には裁判所が判断することとなります。期限後の食品であることをもって、直ちに営業者が免責されることにはならないと考えられます。」

消費者が消費期限切れの食品を食べて食中毒を起こしたら流石に自己責任では?と思ってしまう私ですが、直ちに免責されない、つまり、事情によっては裁判沙汰という事です。
そしてこういうあやふやな態度を取る消費者庁は救済とかしてくれないんですよね、きっと、と思ってしまう私です。
例えば同じ日に作られた製品が、期限内に消費された場合でも食中毒を起こしていた人がいた場合は責任が生じる場合がある、とかそういうことなんだろうとは思いますけど。(商品に欠陥があったか等を考慮して、のあたり)
賞味期限を過ぎたところで食べられないとは言ってないからさぁ、責任とってもらうかもよ?みたいな理論は、金をかけて保存試験を行っている企業の努力を無に帰す発言だから少々配慮に欠けるのではと若干思います。

因みに食品メーカーサイドの考え方としてありがちなのは、コールセンターでの良くある模範解答
客「賞味期限が切れちゃったんだけど、食べても大丈夫かしら?」センター「弊社では期間内のみ品質が保持されることを確認しておりますため、喫食はお勧めできかねます」
客「今日買ってきて、今食べようと思ったら保存温度間違えてました!食べられますか?」センター「弊社では表示温度帯でのみ(以下同文。直ちに健康被害が起こることは無い、が付け加えられる場合もあり」

いくら消費者庁が「賞味期限切れても直ちに食べられない訳じゃないよ」と言ったって、現代社会の加工食品の腐敗・変敗をつぶさに消費者が捉えられるとは限りませんし。
メーカーも、実際これだけ保存がきくであろう、という期間が判明したうえで、安全係数というのをかけ合わせて少し短めに賞味期限等を設定するわけですが。
なぜそんなことをするかと言えば、流通中に過酷な条件下におかれる、等、試験の状態と同じ程度に良い状態を保てる保証はないからです。
例えば「常温保存」としている商品が、灼熱の倉庫内に置かれる可能性はゼロではありません。
温度が上がれば変質が早くなるケースが多いです。
また、「-18度以下で保存」と言う場合に、家庭の冷凍庫は開け閉めにより温度が下がりきっていない状態が発生しがちです。
理論と実際、というところを考えると、問題があったら困るから短めにしているという単純な問題でもないのです。
実際に危険が生じる可能性があるから短めに設定されることもあるのです。
(いや、実際には保存庫の関係で試験が長期出来ない場合もあるかもしれませんけど、特に新商品)


まぁそんな訳で、
消費期限だろうが賞味期限だろうが、切れたものを販売するのはNGみたいなスタンスが見えます。
無償で提供ならばOKかというと、それは無いと思います。
無償で配布しようが健康被害が生じる可能性があるものはフォローしろというのが行政のスタンスです。
販売がNGであれば、無償でもNGとの判断が出る可能性は大きいと思います。
期限切れの商品の無償提供がOKであれば、産業廃棄物となる賞味期限切れの商品を無償で放出することにより費用を抑える、その結果健康被害が起こる、といったケースが生じる可能性も考えられます。
食品ロスも減るし、消費者は無償で商品ゲットだし、事業者は費用を削れるし、と三方良しのように見える「賞味期限切れ食品無償提供」ですが、
行政がGOを出してしまえば、悪用してエスカレートしていく業者が現れるような気が凄くします。

ただ、今回ニュースになったケースについては、悪意がある訳ではない・自主的に回収を行っている・健康被害が起こる可能性も低そう(JRの保管庫がある程度適正な保管条件だろうこと、賞味期限で、かつ切れてからそんなに経っていないと考えて)、というところから、消費者庁的には特に何か問題にするようなことはないのかなぁと思いました。

賞味期限が切れてる、と気づいた時点で、消費者には「黙って食べない」という選択肢も存在しますし、提供された、と言っても賞味期限が確認できない訳ではないですので、騙した、と言うほどではないとは思いますが。
今回は企業がやった行動、ということで、善意悪意を問わず、結果論として健康被害が生じないかどうかも問わず、問題とされてもやむなし、ということかな、と個人的に思います。
隣のおばちゃんがくれたお菓子の賞味期限が切れていた、なら、「あのおばちゃんいつもそうなのよね~」で済みますが。
企業という看板を背負ってしまっている以上、近所のおばちゃんより断然信用はある訳で、「善意で無償だから」では逃れられない責任が生じると思います。
今回のケースも、もし客がSNSで「配られたパンの賞味期限が切れてた」とかアップして、それが拡散した後に回収になったとしたら、ネットの論調がどうなっていたかわからないような気もします。
私も一瞬「パンの期限切れ」と見えた瞬間に「パンだと消費期限だったりしないのか?」とはっとした記憶がありますので。
速やかな謝罪と回収が無ければ、問題の一部を切り取って炎上、という最悪のシナリオが発生した可能性もゼロではないと思います。

今回の件については、食品の法律的な問題ではない部分として、長期保存食品の備蓄は計画的に入れ替えましょう、という問題が潜んでいると思います。
東日本大震災から6年。
あの頃備蓄され始めた長期保存食品が、今後続々期限を迎えるのではないでしょうか。
一旦期限が切れてしまうとJRの二の舞になってしまいますので、早めに何らかの形で放出していかないと怖いなぁと思いました。
災害時に食中毒も起こしたらシャレになりませんし…。

プエラリア・ミリフィカ

2017-10-04 21:11:14 | 直接表示じゃないけれど
プエラリア・ミリフィカというものをご存知でしょうか?
私は知りませんでした。
端的に言うと
「おっぱい大きくなるサプリ」の成分らしいです。
とあるサイトをみると、30万使ってBからEになった人がいるとか?(多分個人の感想です的な)
まぁ、適切な下着店に行くと一日でそれくらいアップすることもあります。

そんな魅惑のサプリ(?)によって健康被害が出ているとのことです。
はいリンク
安心と信頼のgo.jpドメイン、政府です。

この中であっと思ったのが下記の文章です。
「原材料の各特定物質の定量分析(デオキシミロエストロール及びミロエストロールの分析を含む。)を実施すること。なお、定量分析は、原材料ロットごとに実施すること。」
定量分析…大変なんですよね…。
その成分がどれだけ入っているか調べるってやつ…。
お金かかりますね…。
さらにどーん
「原材料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、特定物質の含有量が製品設計に適合していることを、製造記録により確認すること。また、必要に応じて製品の試験を実施すること。」

分析とか普通やっているもんじゃないの?とか思うかもしれませんけど。
やってたらトクホで有効成分足りませんでした~とかいう事件は起こっていないと思いませんか???
因みに上記リンクの記事にある「定量分析が行われている製品」は26.5%(18製品/68製品中)。
個人的には案外あるなぁと思いましたが、消費者感覚失われてますかね?まだいけてますかね???

ドラマや映画だと、ピコーンピコーン「一致」みたいな謎画面で、凄く見やすい感じで色々調査結果が出ますが、あれは空想物語です。
この食品にナトリウムがどれだけ入っているかな~とかならまだ何とかなりようもあります。
しかし天然物由来の何か複雑な構造を持つ成分を、もう元の姿もなくなってしまった状態で、「この植物の由来の成分が入っていることを確認する」だけでも恐らく一苦労で、「その成分だけの含有量を確認する」となると相当メンドイと思います。
お高い機械が必要だったり、お高い機械のオペレーターも必要だったりするでしょう。
もちろん、お高くても「ピコーン」「一致」みたいなものではないでしょう。

まぁ、先のリンクの記事に定量分析に関する文献が載っているあたり温情でしょうか。


しかし健康食品のリスクについて周知徹底する、としながらも、規制を強めない国の考え方はちょっと「解せぬ」という気もします。
自分の身を守れるのは自分だけ、ということでしょうか。

何か、このプエラリアについては、イソフラボンの○倍!みたいな売り文句もありますが。
イソフラボンも昔取り過ぎ危険、という注意喚起があったと思うんですが。
のど元過ぎれば熱さ忘れる的な?(あ、でもあれは熱さを感じないだけで実際喉の先の器官がやけどしてたりするらしいので注意が必要だとか、でも粘膜は回復早いとか)
それとも「なぜ過剰摂取が危険なのか」という理由を理解せぬまま「キケン」と遠ざけたから、類似案件を素通りしてしまうのか…。

因みに、健康食品で「乳がでかくなる」みたいに、体の一部を増強する言葉を使うのは薬機法違反のような気がするんですけど。
そこは誰も突っ込まないんですかね。
まぁ、健康被害の方が重要度が高い情報ではありますけど。
元の広告をやめさせれば売り上げが下がって健康被害も結果減るような気もします…。