正満月が照らすみかんの丘は不思議色に染まっていた。空は月に近いほど暗い。だから逆に地平線にある島も、その上に掛かる雲もくっきりと見える。澄んだ空気の中で冬の星座がひときわ鮮やかだ。思い立ってカメラを三脚に取り付け、竹取庵を望む場所まで出てみた。カメラ感度1600、露出5秒。写真に撮ると分かる。やっぱりこの丘はおとぎの国。不思議に通じるワームホールの入り口だ。
同じような写真を何枚か撮って、また観測デッキに戻った。その途中に居間で入れたしょうが湯が体をほぐしてくれる。ああ、至福。とその時、隣りの尾根で細く甲高い音がした。雄鹿の雌を呼ぶ声だ。それはまるで時代劇に出てくる呼子にも似て鋭く、それでいてどこか切ない。その声に応えて、近くの山で競うように同じような鳴き声がいくつもした。声のする方角から見て雄鹿は少なくとも5頭。
「奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の…」という百人一首を思い出した。時期は少し遅いが、まだ繁殖期が続いているのだろうか。ただ、ここはそれほど山深くない。民家もたくさん有る。それなのにこれほどの鹿。ひょっとするとこの鹿たち、満月の夜にだけ現れるのかもしれない。
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鹿はね、この辺りに普通に居るみたいだよ。昼間歩いていても逢わないけど。