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「タイムバール」少年探偵団の時代

元少年探偵団、現ダメ社長が「記憶と夢」を語ります。

誰もいない贅沢

2010年12月04日 | Weblog

我が探偵団の新基地「浦賀」の部屋(2階)にある二つの窓からは陽光眩い浦賀湾と由緒ある叶(かのう)神社が目前です。寺社仏閣は似たような名前が多いのに「叶」とは日本でここだけ・・・勝海舟縁の場所(神社の奥さんも魅力的)とあって土日には沢山の人が訪れる・・・なんてPRは探偵団らしくありません。エスプレッソを片手に「民衆」を見下ろしながら「可哀想に・・・本当の楽しみを知らないなんて。テレビや案内書やネットに出れば大勢の人が来る。人が大勢いると言うことは自分もその他大勢の一人。非日常間に浸って自分だけの風景を楽しむなんて無理なのさ」・・・。非日常感覚とはハイカラに言えば「内なる世界」への入口・・・「社会脳」に溜まったゴミが吹き飛んで「記憶脳」が活性化して「うっとり」する官能世界への入口なのです。例えば・・・


 

ここは浦賀から剱崎へ向かう海岸の農道を駆け上がった丘の上。360度の視界の彼方には東京湾と相模湾、広大な丘陵地には一面の三浦大根・・・ではありません。手間のかかる三浦大根は殆ど姿を消して、青々と広がるのは抜くのが楽な青首大根・・・「だよね?おじさん」と作業中の農家の人に確認します。「いや~、めっきり需要が減ってね。あそこの一部は三浦大根だけどね。」と教えてくれましたが、本当はそんなことはどうでもいいのです。会話は農道を通るための仁義のようなもので、探偵団の目は視界の端に浮かぶ「怪電波塔」を捉えています。

車も人影もない丘陵に妖しくそびえる電波塔・・・たちまち風景から色彩が消えて、妖しげな形だけが浮かび上がる。そうだ、あれは子供の頃、紙芝居で見た「敷島博士」が秘密信号を送っていた電波塔に違いない・・・現実風景が空想風景に変わる時、記憶脳には酸素が溢れています。この状態を我々は「うっとり」と言います。そう言えばNYのメトロポリタン美術館の特別会員には一般見学者が帰った後に、たった一人で作品と対峙できる「特権」があるとか・・・これも西洋流の「しゃらくさい」贅沢のひとつ。日本では「粋」で対決します。時代は江戸・・・

かの紀伊国屋文左衛門が仲間をご招待・・・さぞ豪華な食事にありつけると思ったら出てきたのは「蕎麦」だけ。「何でえ、紀伊国屋ともあろう奴が・・・」一同興ざめして帰った翌日になって判ったのは「その日」は江戸中の蕎麦屋が全て休みだった・・・「このばかばかしさは堪らないよな」。「でもあんた達には無理よね?」同窓会での会話です。「俺っちにはそんな成金趣味はない。誰もいない場所に、誰もいない時間に出掛けて・・・そこで静謐な官能に浸るのさ。」「それってホームレスとどう違うの?」「・・・」間違っても婦女子に話してはいけません。


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