「名は体を表す」なら「部屋は素性を表す」・・・毎日の営みの場だけに主(あるじ)の知性や感性だけでなく人生観まで滲み出ているからです。腕の良い営業マンなら部屋を見ただけで商談の可能性を読み取ります。お金があるかどうかよりまずは「気」・・・「陰気」か「陽気」かです。陰気な主はお金があっても使わないし、陽気な主はなくても何とか買いたがるからです。尤もいくら元気でも、巨大な熊手や神棚、家具もないのに何台も電話があるような部屋は何か悪さをしている可能性が高いのでパス。逆に老人の孤独死なんて報道で見る部屋は決まってロクな家具もなく何故か大きな紙袋が目立つ陰湿で生気のない部屋・・・カビと厄病神が好む部屋です。勿論、お金がない高齢者という点では自分も同じ条件下に置かれている訳ですが、少年探偵団60年の経歴はダテではありません。やり手の営業マンや厄病神を騙す方法を知っています。
我が探偵団の「別室」は眺望抜群、視界は360度。広さは無限大、しかも気分次第で毎回違う場所に設営可能です。まあ囲むものがないので「部屋」と言うより「基地」ですが、椅子とカメラとラジオと魔法瓶以外には家具も備品もありません。今回は下の写真、近くの岩場が「オフィス観音崎」です。この椅子に座ると・・・見渡す限りの「海と空」、「雲と風」、「潮の匂いと波の音」に包まれます。やがて日が傾くと海は一日で最も妖艶な時間を迎えます。「昼の青」が「夕日の赤」と混じってトワイライトカラーに染まりながら次第に「夜の青」へ・・・対岸の陸地や建物、航行する船の形が次第にぼやけてくるのと入れ替わるように光の明滅が夜を彩る・・・そんな自然と人工のトワイライトショーで脳は透明で濃密な官能に満たされます。お金はかかりません。だからこんなイジワルな質問をします。


「お金を貯めてどうするの?」「老後の不安に備えたいと思います」・・・こうゆう人は我が探偵団とは縁がありません。「お金を貯めてどうするの?」「幸せになりたいです」・・・少し脈があります。「ではその幸せって何?」「・・・」こんな人は贅沢三昧に暮らしたいなんて露骨に言えない弱さがあるのでお金には縁がありません。「お金を貯めてどうするの?」「気持ちのいい場所に居たいです」・・・おおっ!かなり有望です。「その気持ちのいい場所って?」「・・・」判らない人は「うっとり探偵団」に参加すれば道は拓けます。素人目にはぼんやりと海を眺める痴呆老人に見えても、その実体は国家に重くのしかかる高齢者社会での膨大な医療福祉費を使うことなく気持ちのいい場所でポックリ・・・健康と感受性があれば本人はもとより家族も国家も幸せになれる壮大なプロジェクトなのです。